フリーウェアも含めると、それこそ星の数ほどあるバーチャル・インストゥルメント。どんなインストゥルメントを選択するかがクリエイターの個性や腕の見せどころと言えますが、そんなバーチャル・インストゥルメントの中で異彩を放っているのが、A|A|S(Applied Acoustics Systems)というデペロッパーです。今回はそんなA|A|Sが放つバーチャル・アナログ・シンセサイザー「Ultra Analog VA-2」を紹介します。

フィジカル・モデリングの追求

VA-2の話をする前に、まずは開発元であるA|A|Sについて、簡単に紹介しておきましょう。A|A|Sは、まだプラグイン・インストゥルメントの黎明期だった、1998年に設立したカナダのデペロッパーです。AASというのはApplied Acoustics Systemsの略称で、物理モデリングの技術を使った製品を作り続けてきたブランドです。

ご存じの通り、現在のソフトウェア・シンセサイザーの多くはPCM方式…つまり、サンプラーの考え方をベースにしたものが主流です。中には、サンプリング波形と物理モデリングを組み合わせた音源も登場していますが、古くから物理モデリングを得意とし、特化した製品を作り続けてきたのがA|A|Sというブランドです。

例えば、ローズやウーリッツァーといった名機をエレクトリック・ピアノのモデリングで再現する「Lounge Lizard EP-4」やアコースティック/エレクトリック・ギター音源の「Strum GS-2」など、普通のメーカーであればサンプリングを活用しそうな楽器も独自のモデリング技術で再現し、高い評価を集めています。

というのも、サンプリング音源は1音を鳴らした瞬間の「リアルさ」には特筆すべきものがありますが、「フレーズで弾いてみると、つながりの悪さが気になる…」なんて経験があると思います。それに対して、物理モデリングは楽器の構造や音が鳴るプロセス、演奏時の挙動など、すべての要素をリアルタイムに演算して音を作り上げているので、サンプリング音源では不可能だった「楽器らしい振る舞い」を再現できる点が魅力です。もちろんベロシティー・レイヤーも無段階なので、とても音楽的な鳴り方をしてくれます。

Ultra Analog VA-2

▲VA-2の基本画面。演奏中に使用するパラメーターが厳選して配置されています

 

そんな物理モデリングの技術を応用して作られたシンセサイザー音源がUltra Analog VA-2(以下、VA-2)です。同ソフトはアナログ・シンセサイザーの発音/合成プロセスをパソコン上でシミュレートする、いわゆるバーチャル・アナログ・シンセサイザー。これ自体は決して珍しいものではありませんが、VA-2の使い勝手の良さと演奏フィールの高さは同カテゴリーにおいて、非常に魅力的です。

まず操作画面が単純明快である、という点が挙げられます。特に最近の製品は使い切れないほどのプリセットが収録されているので、「プリセットを選んでそのまま使う」という人も少なくないと思いますが、VA-2のメインである「PLAY」ページには、この手のシンセサイザーでよく見かけるパラメーター群は皆無。プリセットのブラウジングやユニゾン、グリッド、アルペジエーターといった「演奏」に関するパラメーターが配置されています。

ちなみに、プリセットは600以上を収録。VA-2のプリセットは音色ジャンルを決めるBankとProgramの2レイヤー構成になっており、スピーディーに音色のブラウジングが行えます。余談ですが、プリセットの音色はキーボードの上下カーソル・キーで切り替えられるので、音色選びも簡単です。サンプリング音源とは異なり、音色切り替えのタイムラグもないので、ストレスを感じることはありません。

▲お馴染みのシンセ・パラメーターが並ぶEDITページ。アナログ・シンセの基本に忠実です

 

もし音色自体を調節したくなった場合は「EDIT」ページに切り替えれば、見慣れたシンセ・パラメーター群が現れます。シンセサイザーの構成としては2オシレーター(VCO)+2フィルター(VCF)+2アンプ(VCA)+2LFOというベーシックな構成で、何かしらのシンセサイザーに触れたことがある人であれば、迷わずに使い始めることができるはずです。なお、画面右側は各セクションのフル・パラメーターにアクセスすることができるエリア。左側の固定表示されているパラメーターでザックリと音を作り、微調整が必要なら右側のエリアで細かく…といった使い方ができます。

▲サウンド・メイクに欠かせないエフェクターも充実。最大5系統が同時使用可能です

 

3つ目がエフェクトを調整する「FX」ページです。エフェクトは最大5系統の同時使用が可能で、4バンドのEQとコンプレッサー、リバーブが固定。残り2つのスロットはディレイやディストーション、フェイザー、コーラス…などの中から好きなエフェクトをアサインできる仕組みです。パラメーターはPLAYページに表示されているエフェクト・パラメーターとリンクしています。
このように基本はPLAYページを使い、必要に応じてEDITページやFXページを開く、というのがVA-2の基本的な使い方です。フィルターのカットオフやレゾナンス、ADSRのエンベロープなどはMIDIコントローラーにアサインしておけば、PLAYページから画面を切り替えなくても使うことができます。

アナログ・ライクで個性的

気になるサウンドはシンプルで、オーセンティックな見た目とは裏腹に何とも印象的なサウンドが満載です。製品名に「Ultra Analog」とある通り、往年のアナログ・シンセサイザーのようなサウンドから現代風のものまで、工夫次第でいくらでも音作りが可能で、その他に印象的だったのが「音の透明感」です。どんな音で鳴らしてみても「ちゃんとVA-2らしい」とわかる、明確な個性があるように感じられます。また、いわゆるソフトウェアのVAシンセに比べると音のアタックの出方が緩やかで、それがアナログ・ライクに感じる大きな要因と言えます。1つ1つの音の要素がストレスなく、スッと出てくるような演奏感はハード/ソフトを問わず、他のシンセサイザーではあまり聴いたことがない、VA-2ならではのサウンド・キャラクターです。

最近のソフトウェア・シンセサイザーは独自のパラメーターが膨大で、作れる音の幅は広くても、音作りを始める前に、ある程度はパラメーターの意味や使い方を把握しなくてはいけないケースが少なくないと思いますが、VA-2ではそういった要素が皆無な点も魅力の1つです。オシレーターの波形はSin/Saw/Square/Noiseと極限までシンプルですが、その分、迷わずに使えるので、メリットの方が大きく感じます。複雑なサウンドが欲しければ他の音源を使えば良いなど、目的によって使い分ければOKです。そう割り切って考えられるのもVA-2に明確な個性があり、それが他のシンセ音源とバッティングすることがないからではないでしょうか。

Sound BankとAAS Player

ここで、Sound Bankにも触れておきましょう。Sound BankはA|A|Sの製品で使える拡張プリセット集で、現在、合計17タイトルがリリースされています(タイトルによって使用できるインストゥルメントは異なります)。ここでは、VA-2で使用できる「Reverence」をチェックしてみました。

▲エディット機能を省いたAAS Playerが無償公開中。Sound Bankと組み合わせれば、A|A|Sのサウンドを手軽に楽しむことができます

Reverenceは「これぞアナログ・シンセ!」と言うべき、独特の温かみや粒立ちを持った115種類のサウンド(アルペジエーター、ベース、キーボード、リード、パッド、バッキング、SFXという7種のカテゴリー)で構成されており、どれもVA-2の標準プリセットとは一味違った魅力的なサウンドばかりで、よりわかりやすく、アナログ・ライクな印象を受けました。ライブラリによって手がけているアーティストやサウンドの傾向がまったく異なるので、いろいろと聴いているだけでも楽しめます。

なお、Sound Bankは対応するインストゥルメントで読み込みができるのに加えて、無料のAAS Playerで使うことも可能です。AAS Playerは音色のエディット機能を省いたAU/VSTインストゥルメントで、プリセットを選ぶだけというシンプルな音源。選りすぐりの40音色を収録した無償のSound Bank「SWATCHES」も公開されているので、まずはA|A|Sが誇るモデリング・サウンドと演奏フィールを自分の「耳と指」で確認してみてください。


■税抜き価格

2万4,000円

■お問い合わせ先

メディア・インテグレーション MI事業部
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