「音楽をもっと自由に楽しく…」。言葉にすると簡単ですが、とても難しい課題に真正面から取り組み、それを実現しているのがTeenage Engineeringです。そんな同社のPocket Operatorシリーズからドラム・マシンの最新モデル「PO-32 tonic」が登場しました。マーケティング・コーディネーターのスミス・グラント氏にPO-32 tonicの魅力について語って頂きました。

Teenage Engineeringってどんなメーカー?

編集部:まずはTeenage Engineeringについて教えてください。

スミス・グラント(以下、スミス):Teenage Engineeringで最も有名なのが2011年に発売した「OP-1」だと思います。OP-1はTeenage Engineering初の製品で、日本でも多くの反響をいただきました。我々はOP-1 を発売した当初から数々の有名アーティストとコラボレートしてきた会社です。例えば、日本ではオタマトーンで有名な明和電機さんが挙げられます。OP-1には明和電機さんが作られたシーケンサーが入っているのですが、これがとても面白いんです。OP-1はもちろん、その他の製品も国内の有名アーティストにたくさん使っていただいています。

編集部:OP-1が発売された当初は、それまでの楽器とはまったく違う新しいものに見えたのですが、どうしてだとお考えですか。

スミス:それはTeenage Engineeringという会社自体がユニークだからかもしれません。例えば、オフィスは地下のガレージにあるのですが、近くにフェラーリが置いてあったり、レーザー・カッターがあったり…など、一般的な楽器メーカーのオフィスとは少し異なると思います。

そこに集うスタッフの経歴も様々です。CEOであるJesper Kouthoofdをはじめ、ファッションやデザイン業界の出身者、EAのDICEスタジオでバトルフィールドやミラーズ・エッジといった有名ゲームのオーディオ・チームを率いていた人物など、皆、ユニークな経歴を持っています。そんな環境で皆が自由にアイデアを練っているんです。

また、Teenage Engineeringが手がけているのは楽器だけに留まりません。Wi-Fiのスピーカーであったり、少し前に話題になったIKEAの段ボール製のカメラもTeenage Engineeringのデザインなんです。

▲遊び心に溢れた、Teenage Engineeringのオフィス

PO-32 tonicについて

編集部:新製品のPO-32 tonicはどのようなアイテムなのでしょうか。

スミス:PO-32は本格的なシンセサイザー・エンジンを搭載したドラム・マシンです。16個のボタンを押すとキックやスネアといった音色が鳴り、2つのつまみでPitchとMorphというパラメーターをコントロールすることができます。もちろん16ステップのシーケンサーも内蔵しており、パターンは最大16まで作成可能です。また、パターンの組み合わせを64個まで記録し、チェインさせて鳴らすこともできます。

基本的な使い方はとてもシンプルです。soundやpatternといったファンクション・ボタンを押しながら数字のボタンを押すことで音色やパターンを切り替えたり、エフェクトやアクセントを追加することができます。これまでにドラム・マシンを触ったことがある人であれば、すぐに使いこなせると思います。

見た目がオモチャっぽいことから、「どうせ音もオモチャみたいなんでしょ?」と言われることがあるのですが、そんなことはまったくありません。先日、クラブでPO-32を鳴らす機会があったのですが、音を聴いた観客は「えっ、これからこんな音が鳴っていたの!?」と驚いていました。そんなことを言われた時には「製品の見た目と音のクオリティーはイコールではないし、そもそも音楽は楽しむものなんだから、見た目にも楽しい方が良いでしょ?」と答えています。

編集部:基板むき出しというのは、新しいですよね。

スミス:実は基板がむき出しになっているのは、製品のコストを落とすという目的もあるんです。これによってサウンドと機能は妥協することなく、手に取りやすい価格帯で収めることができたのです。持ち運ぶときに不安な方のために、シリコン製の専用ケース「CA-X pro case」というアクセサリも用意しています。このケースに入れることで、ボタンも押しやすくなりますし、滑り止めやネック・ストラップも使えるのでオススメですよ。

音色やパターンは本体内に自動的にメモリーされますが、上書きしたくない。今入っているデータを保護したいという場合には、ディスプレイ左側にあるツメを折ってしまえば、データを上書きできなくなります。もし、ツメを折った後で「やっぱり変更したい」というときには、基板上の接点を半田付けすればOKです。

Sonic Charge / Microtonicとの連携

編集部:パソコンとも連携できるのですか。

スミス:PO-32は「Microtonic」というドラムマシン・シンセサイザー・プラグインを発売しているSonic Chargeとのコラボレート製品で、音色やパターンを連携できるのも特徴の1つです。つまり、Microtonic(別売)と組み合わせることで、作り込んだサウンドをPO-32に転送し、外へ持ち出すことができるんです。

USB端子のないPO-32がどのように音色のやりとりをしているのかというと、その答えは本体右上に取り付けられているマイクです。Microtonicを転送モードにするとスピーカーから信号音が出力され、その音をPO-32のマイクで拾うことで、音色やパターンが転送できます。つまり音でやりとりするのですが、既に様々な面白い動きが起こっているんです。

例えば、YouTubeで作品を公開し、最後に使用していたパターンの信号音を入れます。そのサウンドやビートが気に入ったユーザーは、その音を自分のPO-32に取り込んでプレイしたり、ビートをリメイクするんです。こういったクリエイター同士がコラボレートできる点も面白いと思います。もちろんPO-32同士で転送することも可能です。また、出力端子からは音声信号だけでなく、同期信号も出力しているので、他のPOシリーズや外部機器とシンクさせてパフォーマンスすることもできます。

無限の可能性

編集部:シンプルに見えて、かなりディープな使い方もできるんですね。

スミス:そうなんです。見た目以上に本格的なリズム・マシンなんです。また、パソコン上で動くMicrotonicと連携することで、もの凄く面白い使い方ができるんです。Sonic Chargeのホームページにpatternariumというプログラム(https://soniccharge.com/patternarium)があるのですが、このページでは音色とビートの自動生成ができるんです。

そして、そのパターンが「好き」か「嫌い」かのボタンをクリックすると、それに準じた違うパターンを提案してくれます。つまり、ただランダムにパターンを生成するのではなく、自分の好みを反映しつつ、ランダムなパターンを作ることができるということなんです。偶然性というか、自分では思いもよらなかったパターンが生まれることもあるので、かなり面白いですよ。
そのパターンを「コピー」して、Microtonic上に「ペースト」すると、webページで鳴っていた音色とパターンがそのままMicrotonic上で利用できる。と言うことは、そのままPO-32に転送できてしまうんです。

編集部:これは面白いですね! PO-32には完全に同じ音色、パターンが取り込めるんですか?

スミス:Microtonicは8ボイスのリズム・マシンですが、PO-32はマシン・スペック的に4ボイスの制限が掛かっていますので、残念ながら完全に同じという訳にはいきません。ですが、転送の際に自動的にボイスを最適化するようになっているので、パッと聞きは同じように聞こえると思います。もちろんコピーしたパターンをベースにカスタマイズしても良いですし、かなり面白い使い方もできますよ。

編集部:他のPOシリーズのラインナップについて教えて下さい。

スミス:POシリーズは、PO-32を含めて現在7製品が発売されています。

最初に発売した「PO-12 rhythm」は、PO-32同様にリズム・マシンです。本格的なサウンドが出せますが、マイクはないので転送したりはできません。

「PO-20 arcade」は、ファミコンのようなサウンドが特徴のモデルで、ドラム、リード、コードが鳴らせます。私自身がファミコン世代ということもあって、大好きなモデルですし、シリーズの中で1番人気があるモデルです。ですが、PO-32 tonicが発売されたことで、もしかしたら(人気が)抜かれちゃうかな…と思っているところです。

「PO-28 robot」は8bitのシンセ・エンジンを搭載したシンセサイザー。「PO-14 sub」が15種類のサウンドとドラム・マシンを搭載したベース・シンセサイザー。「PO-16 factory」はメロディやリードに特化したモデルです。そして「PO-24 office」はサンプルとシンセ・エンジンによるドラム・サウンドを収録したモデルです。

どの製品もサウンドがまったく違うので、好みによって使い分けたり、組み合わせると面白いと思います。

編集部:最後に、読者の方にひと言お願いします。

スミス:まずは実際に音を聞いて、リズムを打ち込んでみてください。そうすれば、PO-32が決してオモチャではないことが分かって頂けるはずです。気軽にビートメイクを楽しめる一方、複雑なチェーンを組んだりMicrotonicと組み合わせたり、ディープに作り込むこともできるので、ぜひ一度手に取ってみてください。

PO-32 tonicの使用レビューも掲載中! 併せてご覧ください。https://digireco.com/?p=1522


■税抜き価格

1万1,000円

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株式会社メディア・インテグレーションMI事業部
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