音量バランスを整える

曲作りが終わったら、ミックスダウンという作業で曲を完成系に仕上げていきましょう。DAWソフトの中では、ボーカルやギター、ドラム…といった各楽器ごとに別トラックで作ってきました。こうすることで楽器ごとに音量バランスを細かく調整したり、エフェクターでサウンドを追い込んでいくことができるのですが、そのままでは通常の音楽プレイヤーで聴くことができません。マルチ・トラックを、プレイヤーで再生可能なステレオのオーディオ・ファイルにまとめる作業が「ミックスダウン/ミキシング」という作業の目的です。

しかし、ただまとめれば良いというものでもありません。各楽器の音量バランスによって、サウンドの聴こえ方や印象がまったく変わってきます。ボーカルが他の楽器より近い場所で歌っているようにしたいとか、ギターにもう少しディレイを掛けて広がり感を出して…といった具合に、音量バランスやエフェクトを使って理想とするサウンドに近付けていきます。そういう意味では、ミキシングも曲作りの一貫として考えることができるでしょう。

ミキシングの流れに決まりはありませんが、基本的にはボリュームとパンを調整するところから始めるのがオススメです。すべてのパートがしっかりと聴こえることも大切ですが、主役になるパートと、薄く鳴ることで主役を際立たせるパートのメリハリをしっかりと付けることで、聴く人に明確なメッセージを伝えることができるでしょう。

また、ミックス=エフェクト処理というイメージが強いと思いますが、何より重要なのは音量バランスです。エフェクトはその音にスパイスを与える調味料です。基本の方向性が決まらないまま闇雲にエフェクトを掛けてしまうと、音決めに時間が掛かってしまったり、本来は使わなくても良いエフェクトを使うことでかえって混乱してしまったり…。あっちを立てればこっちが立たずの無限ループの原因にもつながります。なんでも無制限にできるDAWソフトだからこそ、基本をしっかりと作っておくことが大切なのです。慣れてくると、曲作りの段階からミキシングや最終的な仕上がりのイメージを想像できるようになるので、それまでは「こういう曲にしたい」という参考曲と自分の曲を聴き比べながら作業するなど、明確なイメージを思い浮かべて作業すると良いでしょう。

インサートとセンド

エフェクトを掛ける場合、そのトラックに直接エフェクトを設定する「インサート」と、信号を一度エフェクト用のバスに送り、バス上でエフェクト処理を行う「センド」という2つの方法を、目的に応じて使い分けることが大切です。

まず、インサートは原音そのものを加工したい場合…例えば、EQやコンプレッサー、ディストーションといったエフェクトで使用します。ギターで言えば足元に配置したコンパクト・エフェクターと同じ状態です。それに対してセンドは、ギター・アンプ背面のセンド/リターン端子からラック・エフェクトを使っている状態です。ギターと同じく、リバーブやディレイといった空間系エフェクトで主に使用されます。

また、センドの特徴は複数のトラックで同じ設定のエフェクトを使用できる点です。パソコンのCPUに余裕がある場合は、各チャンネルに個別に同じエフェクトを使ってもダメということはありませんが、後からパラメーターを変更したくなった場合、各プラグインごとに設定をし直すのは非効率的で、あえて別々に掛けるメリットもほとんどありません。

曲を書き出す

すべての作業が終わったら、曲を書き出して作業は完了です。そのまま書き出してしまうと、市販のCDと比べて音量が小さく、聴き比べるとショボく聴こえてしまうので、マスタリング・エフェクトなどを使って音圧を稼いでおきます。一定グレード以上のDAWソフトであれば、リミッターやマキシマイザーといった簡単に音圧を稼げるエフェクトがバンドルされていると思うので、しっかりとレベルを引き上げておきましょう。これを、やる/やらないでは、嘘みたいに仕上がりに差が出ます。

曲を書き出す時は、そのデータを使う用途に合わせてフォーマットを指定しましょう。インターネット配信やメール添付、スマートフォンに転送して聴くならば、データ・サイズの小さなmp3。オーディオCDにライティングする場合や高音質で保管したい場合には音質優先のWavファイルが定番です。サンプリング周波数やビットレートを指定することもできるので、目的に応じて調整してみてください。


セットアップから基本の使い方まで駆け足でお送りしてきましたが、どうしてもお伝えしきれなかったことが山ほどあります。そういった部分は、連載「ギタリスト視点でのDAW入門」内でフォローしていきます。連載では毎回テーマごとに細かいノウハウやテクニックを余すことなく紹介していきます。

初回は6/17(土)に公開予定です。