この連載では、ギタリスト的な視点からDAWをはじめるためのアレコレや、制作に使えるTipsを紹介しています。2回目となる今回は、前回のオーディオ・インターフェイスに関係する部分でもある「レイテンシー」について紹介します。

レイテンシーは、パソコンでギターを弾く上でもっとも重要な部分といっても過言ではありません。ギタリスト視点を歌いつつ、パソコン的な内容はどうかな…とも思いましたが、DAWを続ける上で避けては通れないのも事実。レイテンシーはどうして発生するのか。そして、どのように対処すれば良いのかを考えて行きましょう。

レイテンシーの仕組み

レイテンシーとは、音の遅れのこと。ギターの場合は、実際のピッキングよりスピーカーやヘッドホンから出てくる音が遅れる…というケースが一番分かりやすいと思います。設定によってはショート・ディレイ!? というレベルに遅れることもあり、当然マトモに弾くことはできません。この状態では、まったく使い物にならないと言っても過言ではありません。

では、どうして音が遅れてしまうのか! 理由はいくつもあるのですが、中でももっとも分かりやすいのが音の処理待ち時間です。

パソコンにギターを繋いだときの音(データ)の流れを簡単に表現すると、こんな感じになります。

オーディオ・インターフェイスで、アナログとデジタルの変換が行われている訳ですが(ちなみに、この変換にも微量のレイテンシーが生じます)、パソコンはリアルタイムにデータを処理している訳ではないということがポイント!

少し視点を変えてみましょう。パソコンで音を扱う上で、もっともマズイことは何でしょうか。

答えは「音切れ」です。これはライブをする上でも一緒。演奏中にもしドラマーが演奏を止めてしまったら… 考えただけでも恐ろしいですよね。

DAWの場合も同じで、音が止まってしまうことは絶対に避けたい。しかし、パソコンのCPUはOSを始めとした様々な情報を処理する必要がありますから、全能力をオーディオだけに集中する訳にはいきません。

そこで負担を減らし、同時に音切れのリスクを減らすために考えられたのが「バッファ」です。これはデータを一時的に保存するメモリの一種で、ある程度まとめてデータを処理し、処理したデータをバッファに保存しておきます。

あとは、このバッファが空になる前に後のデータを処理していく。こういった作業が、常にパソコン内で行われているのです。

バッファサイズの考え方

ここでポイントとなるのが、バッファが一杯になって初めて音が鳴るということ。よくバケツ・リレーに例えられますが、バケツ・リレーは持っているバケツ一杯に水が入っていないとダメですよね。逆に言えば、バケツの大きさによって、水(データ)が溜まるまでに掛かる時間も変化するということです。

そのバケツの大きさを決めるのが、オーディオ・インターフェイスの設定にある「バッファサイズ」という項目です。

数値を大きくする = データが溜まるまでに時間が掛かる → レイテンシーが大きくなる

数値を小さくする = データが溜まるまでの時間が早くなる → レイテンシーが小さくなる

ということです。

音の遅れ具合を見てみよう!

では、実際に数値によってどの位の違いが出るのかを見てみましょう。

 

まずは、バッファサイズを設定できる最大値(この場合は1024Sample)に設定した場合は、このようになりました。

「結果のレイテンシ」という項目を見ると、44.4ミリ秒という数値が書かれています。ミリ秒は1/1000秒ですので、0.04秒の遅れが発生していることが分かります。これは最早ショート・ディレイです。カッティングはもちろん、コード弾きも不可能なレベルと言えるでしょう。

 

次に、設定できる最小値(この場合は32Sample)の場合を見てみましょう。

2.1ミリ秒。つまり0.0021秒まで下げることができました。体感上も遅れは感じません。この差は歴然!

ちなみに、「ラウンドトリップ」というのは入力と出力を合計した総合の遅れのこと。今回は触れませんが、入力と出力それぞれにレイテンシーが発生するということが分かりますよね…。

下げすぎるとパフォーマンスが低下する

この数値を見れば、誰もが最小設定にしたくなるはず。しかし、そう上手くいかないのがDAWの難しいところです。

バッファサイズを下げるということは、それだけCPUが処理を行う頻度が増えるということ。つまり、パソコンに大きな負荷が掛かってしまうのです。

許容量を超えると、再生音にブツブツとノイズが乗ったり、再生が止まってしまうといった問題が起こっていきます。これは、使えるエフェクターやシンセサイザーの数が減ることと同じです。

どの位に設定すればいいか

では、どの位の数値に設定すれば良いのでしょうか。

残念ながら、これに明確な答えを出すことはできません。というのも、同じバッファサイズでもCPUに掛かる負荷はオーディオ・インターフェイス(厳密には、ドライバ)によって異なりますし、使っているパソコンの性能や使用中のプラグイン等、様々な要因によってことなってしまうからです。

ただ1つ言えるのは、作業内容に応じて設定を変えるのがベストということ。レコーディング等でレイテンシーを下げたいときはバッファサイズも小さめに設定する必要がありますが、言い換えればマウスで打ち込みをしている場合やミキシング作業では、レイテンシーを下げるメリットはありません。逆に必要以上にパソコンに負荷が掛かってしまうので、足を引っ張ってしまうことの方が多いでしょう。

 

ちなみに、サンプルレートを上げてデータサイズが大きくなれば、同じバッファサイズの設定でもレイテンシーは変わってきます。例えば、先ほどと同じ1024Sampleのまま、サンプリングレートを倍の96kHzにすると…

レイテンシーも半分まで落ちてきます。これはサンプルレートが倍になって、扱うデータサイズがおよそ2倍になったため、同じバケツが一杯になる時間が半分になった…ということです。

まとめ

ギターを弾く上で、一番大きなハードルであるレイテンシーは、簡単に調整することができます。

遅れの感じ方は人によって差はありますが、概ね10msec以上になると厳しくなってくると思います。バッファサイズをいくつに設定するかよりも、どの位の遅れが出ているのかを確認しながら設定してみてください。