コード・ネームは音を重ねる設計図

ここまで読んで頂ければ、何となくコードのことが分かって頂けたのではないかと思います。ちょっと見方を変えれば、コードは何も難しいことはないんです。同時に、何となく音楽理論に興味も出てきたのではないでしょうか?

そもそも、コードというのは和音を一目でわかるようにした記号。和音の設計図と言っても良いかもしれません。ですから、コード・ネームは和音の構成要素がすべて詰まっているんです。

コード・ネームは、図4のようにブロックで考えるとわかりやすいです。

▲図4 コード・ネームは5つのセクションで構成されています。仕組みがわかれば、コード名を見流だけで構成音がパッとわかるようになっています

ルートのブロックは、そのコードの基準となるルート音が入り、C〜Bまで12種類の候補が考えられます。

次に、第3音のブロック。ルートから数えて2つ目の音が、どのような音なのかを知ることができます。ここに入る候補は「空白(長3度)」か「m(短3度)」の2つ。そのコードが、メジャー・コードなのかマイナー・コードなのかを表す、音の響きに大きな影響を与える部分です。

そして7度のブロックは第7音の音を示すセクション。「M7(長7度)」や「7(短7度)」が入ります。基本的なコードは、この3つのブロックに、それぞれどんな要素の音が入るのかで作られています。

ここからは、コードの響きをさらに複雑にする要素。5度のブロックは、第5音の音を表しています。ここに入る候補は「空白(完全5度)」、「♭5(減5度)」、「aug(増5度)」などがあります。9度以上のブロックには、いわゆるテンション・ノートが入ります。

ダイアトニック・コード

コードの基本がわかってきたところで、ここからは実戦編。曲の中でどのようにコードを付けたり、組み合わせて行くのか、という視点で見ていきましょう。

ドレミファソラシ…という各音の並びのことを音階(スケール)と呼びます。その調で使える音程…と言っても良いかもしれませんね。スケールはメロディーやギター・ソロを作るときの核になる要素ですが、Cメジャー・スケール(ドレミファソラシ)で作ったメロディーには、Cメジャー・スケール内の音だけで作られたコードの中から選ぶのが基本になります。言葉で説明すると難しいですが、譜面で見ると簡単。譜例14のように、ドレミ〜の各音をルート音にした3和音(もしくは4和音)を作ればいいだけです。

▲譜例14 スケール上にできあがるコードを、ダイアトニック・コードと呼びます。すべてスケールの音で構成されているので、コードを付けるのも簡単

このように、スケール内の音だけで構成された7種類のコードを「ダイアトニック・コード」と呼んでいます。Cメジャーの曲の場合、この7つのコードを適当に組み合わせるだけで、何となく曲っぽく聴こえてしまいます。これは、構成音がすべて同じスケール内の音だけで構成されているから。

メジャー・スケールと言いつつ、ほとんどがマイナー・コードなのはそのためです。逆に言えばコード進行から曲を作る場合、このダイアトニック・コードを組み合わせて作ると、そこに自然に乗るメロディーはCメジャーということになります。マイナー・コードの場合も基本的に同じ。基本となるスケールに含まれている音を重ねていけばOKです。

もちろん、あえて他のコードを使うこともありますが、まずはダイアトニック・コードの中からメロディーに合うコードを探すのが簡単です。

コードの働きは3つしかない?

今回はベーシックなコードしか扱っていませんが、コードには非常にたくさんの種類があり、それぞれ響きが異なります。メロディーにコードを付けるときには、それぞれのコードが持っている響きを考えつつ、出したい曲の雰囲気に合わせてコードをチョイスしていくことになるのですが、知っているコードを総当たりで組み合わせて行くのは非効率的ですよね。そこで考えて欲しいのがコードが持っている役割です。膨大なコードがありますが、大きく分ければ3つの枠割りに分類して考えることができます。

それが「トニック」、「ドミナント」、「サブドミナント」などと呼ばれるもの。何となく聞き覚えがある単語だと思いますが、言葉は分からなくても、音を聴けば感覚として納得して頂けるはずです。まず、何も考えずにC→G7→Cと演奏してみてください。楽器は何でも大丈夫です。たった2つのコードですが、これにメロディーを乗せられないこともない。でも、何か物足りない。曲というよりも、起立→礼→戻る …みたいな印象を持った方が多いのではないでしょうか。

では次に、C→F→G7→Cとしたらどうでしょう。Fが増えただけで、一気に曲っぽく感じられるようになったはずです。このC、F、G7という3つが、まさにコードの持つ3つの役割を担うコードで、「主要3和音」と呼ばれています。3つの役割を詳しく見てみましょう。

安定感を感じるトニック

3つの役割の中でも、最も重要なのがトニック。というのも、そのキーの核であるルートを決めるという役割を持っているからです。難しく言うと「主和音」なんて呼ばれますが、その曲の調を決めるコードとイメージしておけば大丈夫。キーがCメジャーならC。キーがGならG。そのままですね。

曲の中でトニック・コードが出てきたときに感じるのは、安心感。響きが安定しているので、スッキリ始まる。またはしっかりと終わった感を与えることができます。逆に言えば、トニック以外のコードで終わってしまった場合、何とも言えないモヤモヤ感が残ってしまいます。すべてのコードに進む事ができます。

不安定さを与えるドミナント

トニックが安定感を与えるコードであるのに対し、反対に不安定感を与えるのがドミナント・コードです。不安定さ与えることで、より安定感が増す。トニックの効果を最大限に引き出す役割と言っても良いでしょう。Cメジャーの場合は、G7がドミナント・コードに当たります。

もちろんG7を単体で聴いても不安定さは感じません。重要なのは、Cメジャーのスケールの中でG7が入ると不安定に感じ、トニックであるCに戻るキッカケを作るということです。

やや不安定なサブドミナント

トニック・コードとドミナント・コードをスムーズにつなぐ、接着剤のような役割を持つのがサブドミナント・コードです。Cメジャーの場合はFがこれにあたります。中間的な響きを持っているので、ドミナントにもトニックにも違和感なく進むことができます。中途半端なコードですが、この音があることによって、曲の展開が発展し、彩りが加わるのでとても大切な働きです。

この3つの役割を、3和音のダイアトニック・コードに当てはめると譜例15のようになります。

トニック=C、Em、Am

サブドミナント=Dm、F

ドミナント=G、Bm(♭5)

各コードの役割をわかりやすく表すためにトニックはT、サブドミナントはSD、ドミナントをDと略します。また、キーが変われば当然ダイアトニック・コードは変わりますが、各音の相対的な響きや役割が変わることはありません。よって、キーに関係なく理解するために、ローマ数字を当てて考えるのが一般的です。これをディグリー・ネームと言います。こうすることで、キーに関係なく「I=トニック」「V=ドミナント」と考えることができるようになっています。

▲譜例15 ダイアトニック・コードの各音は、トニック、サブドミナント、ドミナントのいずれかに分類することができます

コードの転回と代理コード

譜例15を見ていて、何か疑問に思うことはありませんか? Iがトニックなのはわかる。でも、どうしてIIImやIVまでトニックになるのでしょうか。その答えは簡単。構成音が似ているからなんです。

それを知るためには、まずコードの転回を考える必要があります。Cコードの定義は、ドミソの3音で構成されているというもの。音を重ねる順番まで制限されている訳ではありません。このように、コードの構成音を入れ替えることを転回と呼びます。

例えば4音で構成されたCM7場合、転回のバリエーションは譜例16のように4パターンが考えられます。どのように転回させるかで多少響きは変わるものの、全体の雰囲気まで変わることはなく、当然コード・ネームも同じ。ギターでローコードで弾くのか、バレー・コードで弾くのかといった違いです。

▲譜例16 コードの構成音は、例えオクターブが変わってもコードの役割自体が変わることはありません

例えば、ドミソを1回転回させてミソドにすればEm(ミソシ)と。さらにもう1回転回させてソドミにすればAm(ラドミ)と、それぞれ構成音が近くなります。一部の例外を除き、構成音の内で2音以上が同じならばコードの役割も似てくるので、そのコードの代わりとして使うことができます。このようなコードを「代理コード」と呼び、譜例15のような並びになるのです。VIIm(♭5)をドミナントの代理コードとしていますが、実際はあまり使われることがないので、無視してしまっても良いかもしれません。

コード進行のキホン

肝心なのはこれを曲作りにどのように活かせるか、ということ。コードは、トニック、ドミナント、サブドミナントの3つの働きがありましたが、基本となるコード進行は3パターンしかなく、あとはこれの応用なんです。ちなみに、この進行の型のことをカデンツと呼びます。

T → D→ T(I – V – I)

トニック→ ドミナント → トニックという「お辞儀」の組み合わせ。ここまで何回も出てきていますが、ドミナントで不安定さを与えた上でトニックで落ち着く。最も終わった感を感じられる進行で、曲の区切りでよく使われます。これで曲になるの? と思うかもしれませんが、代理コードを使うことで立派にコード進行として成立するんです。この型はドミナント終止と呼びます。

T → SD→ T(I – IV – I)

ドミナントの代わりに、サブドミナント→トニックに解決する方法。ドミナント終止よりも、柔らかくふわっとした進行になります。力強さはありませんが、その分進行に自由が利くというメリットも。この型はサブドミナント終止と呼びます。

T → SD → D → T(I – IV – V – I)

3つの主要和音を組み合わせたのがこのタイプ。このタイプを変形させたり代理コードを組み合わせることで、たくさんのバリエーションを生み出すことができます。

カデンツを基本に、代理コードを組み合わせて行くことで同じメロディーにまったく違うコード進行を付けて、ガラリと雰囲気を変化させることができます。

譜例17を見てください。I(T)→IV(SD)→V7(D)→I(T)という超シンプルな進行を、代理コードを使ってI(T)→VIm(T)→IIm(SD)→V7(D)→I(T)に変化させてみました。音を聴き比べれば、同じ雰囲気を残しつつも、印象がまったく変わったことに気付くと思います。

▲譜例17 代理コードを使うことで、同じメロディーのまま曲の雰囲気をガラリと変更することができます

<転回した状態>

 

1小節目はIと、Iの代理コードであるVImを連結して使っています。このように、コード・チェンジのタイミングを変化させてもOK。そして2小節目では、IVを代理コードのIImに変化させることで、3小節目のG7との流れがより印象的に聴こえるようになります。どうしてこうなるか…と言うと、半音5つ上(または半音7つ下)に移動することで、「強進行」という最もスムーズにコードが響く状態を作ることができるからです。このようなIIm7-V7-Iの進行は「ツー・ファイブ・ワン」と呼ばれて、ジャンルを問わずに多用されています。

マイナーのダイアトニック・コード

ここまではすべてCメジャーの場合のダイアトニック・コードを見てきましたが、当然マイナーのダイアトニック・コードも存在します。基本的にはメジャーもマイナーも、スケール上の音で和音を構成している点は変わりませんが、マイナー・スケールには「ナチュラル・マイナー・スケール」、「ハーモニック・マイナー・スケール」、「メロディック・マイナー・スケール」という3種類があり、譜例18のように、それぞれダイアトニック・コードが存在しているのです…。かなり複雑ですよね。

▲譜例18 各マイナー・スケール上のダイアトニック・コード

ですので、この段階では深く考えるのをやめてしまいましょう。Aのナチュラル・マイナー・スケールを見ると、Cメジャー・スケールと始まる音が違うだけということに気がつきませんか? 言い換えれば、Cメジャーのダイアトニック・コードの6番目(Am)から並び替えたものがAナチュラル・マイナー・スケールということ。このような関係を「平行調」と呼びます。構成音は同じで、ディグリー・ネームの一部に♭が付くんだな…程度に思っておきましょう。

キーと移調

最後にキーについて紹介しておきます。コードを考えるときに、♯や♭が付いていない方がわかりやすくなるため、すべてCメジャーで紹介してきましたが、実際に曲を作るときにはCメジャーである場合の方が少ないはずです。コードを考えるときにディグリー・ネームを使うのもまさにこれが理由でしたが、基本的にキーが変わっても音の並び順が変わることはないので、単純にキーに合わせて音程を上下に移動すればOKです。

キーが変わるということは、♯や♭が付く位置が変わるということ。これをすべて覚えると大変です。そこで便利なのが図5のサークル・オブ・フィフス。何となく見た記憶がある人も多いのではないでしょうか? 時計回りに5度の関係にある音を配置しただけのシンプルなものなのですが、いろいろな見方ができます。

▲図5 サークル・オブ・フィフス(5度圏)は、調号やドミナント、裏コードを一瞬で見つけることができる便利な図です

まずは♯や♭が付く数。右回りに見ていくと♯が、左回りに見れば♭が増えていきます。キーによって、どこに調号が付くかパッとわかる=そのキーで使える音がわかるということなので、凄く便利。ちなみに#が付く順はファが最初で、以降は5度上に。♭の場合はシから始まり、以降は4度上に追加されていきます。

反時計回りの音は5度下(4度上)の音になっていますので、ドミナント・モーション(強進行)の音をすぐ確認することができます。左方向に3つの並びを見れば、ツー・ファイブの音がすぐわかるということです。そして内側の部分では平行調にあたるマイナー・キーを知ることができます。

さらに対角線上にある音は、ドミナントコードを代用できる裏コードを知ることもできます。例えば、Cキーの場合のドミナントはG7。この図5でGの対面にあるD♭を使ったD♭7がG7の裏コードになる、という仕組み。ツー・ファイブの進行に組み込むと、ルートが半音ずつ下がってオシャレな感じが出せます。その他にもわかることがあるのですが、知っていると便利なのでぜひ覚えてしまいましょう。

 

「絶対わかるコード理論 – 第4章.定番のコード進行を参考にしよう!」に続きます。