音楽という創作物を扱う上で常に気にしなくてはならないのが著作権。よく耳にする言葉で、また「何となく知っているよ」という人も多いでしょう。しかし、法律や難しい専門用語が飛び交う専門書を見ても、どのような仕組みになっていて、具体的に何をしたらダメなのか…という本当に知りたい部分がわかりにくいのも事実です。そこで音楽著作権を扱っている一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)にお邪魔し、音楽を作る人や演奏をする人が知っておきたい著作権の基礎知識や注意すべき点を伺ってきました。

本記事は、「基礎編(本記事)」「FAQ編」の2部構成になっています。

著作権って何?

「著作権は侵害してはならない」。これは、誰もが知っているルールだと思いますが、具体的にどのような権利なのかをきちんと説明できる人は案外少ないのではないでしょうか。まずは著作権の基本から見ていきましょう。

著作権の根底にあるのは、その作品を作った著作者の保護。音楽に限らず、作品を生み出すのはとても大変な行為です。自分の作品を楽しんでもらうことは、制作者として非常に嬉しいことであり、モチベーションにもつながるものです。しかし、自分の作品を他人が自分の作品のようにふるまったり、それで利益を上げていたら決して良い気分はしないはずです。

また、何かを買う時にお金を払うのは音楽も同じです。目に見えないものやデータであっても、著作者は正当な対価を得る権利があります。また著作物は、その作品を作った人の思想や思いが込められているので、それを勝手に使われないように、人格的な観点からも保護する必要があります。このルールを定めたのが「著作権法」なのです。

著作権は印刷技術が生まれたことで、本が無制限に複製されることを防ぐために考えられるようになりました。そして1886年には著作権保護のための国際条約である「ベルヌ条約」が成立し、それを受け、日本でも1899年に著作権法が制定されました。

利用する側であれば、無料で楽しめた方が嬉しいと考えるのは自然なことかもしれません。しかし、自分の作品が使われる側に立って考えてみるとどうでしょうか。もし著作権が保護されていなかったら、自分の曲を使って他の人が商売をしていたり、自分の曲が他の人の名前で公開されていたり、勝手に改変されてしまうかもしれません。これは決して気持ちの良いものではありませんし、創作などやっていられないはずです。作品を作る側だからこそ、著作権の仕組みを理解し、厳守することが必要ではないでしょうか。

いくつもの権利で構成される

一般に「音楽著作権」というと、市販CDを勝手にコピーしたり、インターネットに無断でアップロードする行為をイメージすると思いますが、これは著作権の持つほんの一部の要素に過ぎません。音楽の著作権の場合、作詞作曲など音楽を作った人(著作者)が持っている「著作権」とCDなどの音源を作って販売するレコード会社や音楽を演奏したミュージシャンが持つ「著作隣接権」の2つに大きく分けることができます。

また、著作者が持つ権利にもいくつかの種類があります。私たちが著作権と言われて、まず思い浮かべるのが「財産権」です。「誰かの作った作品を使いたい場合は、その対価として利用料を払ってね」という権利です。この中にも、著作物をコピーする権利である「複製権」やコンサートやライブなど公の場で演奏する「上演権/演奏権」など、いくつかの権利が含まれています。

見落とされがちなのが「著作者人格権」です。こちらは著作物の経済的な権利ではなく、著作者の人格に関する権利。例えば、作った作品を公表するかを決められる「公表権」や著作者の名前を表記するかしないかを決められる「氏名表示権」、勝手に内容を改変されるのを防ぐ「同一性保持権」などで構成されています。著作権というと、パクリや不正コピーを防ぐための法律とイメージしがちですが、実際には様々な権利が束になって作られているのです。

FAQ編に続きます。