音楽という創作物を扱う上で常に気にしなくてはならないのが著作権。よく耳にする言葉で、また「何となく知っているよ」という人も多いでしょう。しかし、法律や難しい専門用語が飛び交う専門書を見ても、どのような仕組みになっていて、具体的に何をしたらダメなのか…という本当に知りたい部分がわかりにくいのも事実です。そこで音楽著作権を扱っている一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)にお邪魔し、音楽を作る人や演奏をする人が知っておきたい著作権の基礎知識や注意すべき点を伺ってきました。

本記事は、「基礎編」「FAQ(本記事)」の2部構成になっています。


後半は、より具体的な内容に迫ってみましょう。JASRACの堀木氏に、著作権について質問してきました。

著作権の考え方や注意事項について、今回お話を伺った 一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)広報部の堀木氏

Q1.音楽CDには、どのような権利が含まれているのでしょうか

堀木:音楽自体に関わるものでは、作詞作曲、編曲の方の権利。これがいわゆる音楽著作権ですね。そこに、CD化にするに当たってCDを作った方やレコード会社、作られた音楽を演奏したアーティスト(実演家)の権利が原盤印税として含まれています。

一般的なCDアルバムに含まれてる内訳の例。必ずしも、すべての作品がこの通りというわけではありませんが、著作権使用料や印税と言われる部分は全体の4分の1程度しかありません(本誌調)

Q2.JASRACとは何をしている団体なのでしょうか

堀木:JASRAC(日本音楽著作権協会)は、1939年に設立された非営利の一般社団法人で、音楽の著作権をお預かりしている団体です。著作者ご本人、マネージメントやプロモーションを行っている音楽出版者などを通じて、著作権を預かっています。この場合の著作権というのは、著作権の中の「財産権」に当たる部分です。人格権に関しては、一身専属の権利…つまり著作者以外に譲渡することができない権利ですので、JASRACはお預かりすることができません。

そもそも、どうしてJASRACのような団体が必要になるかというと、「作られた作品を世の中の皆様により広く簡単に使って頂くため」です。

例えば、ライブで好きなアーティストの曲を演奏したり、録音してCDにしたい場合があったとします。楽曲は著作権法で保護されていますので、音楽を利用される方は、作曲や作詞をされた権利者の方に直接お問い合わせし、許可を取る必要があります。利用者は使いたい曲の数だけ個別に許可を取らなくてはいけませんし、権利者の側の立場でも、過去に自分の作った作品のマネージメントという、本業の創作活動と関係ない手続きに時間と労力を取られてしまい、双方にとって不便な状況であると言えるでしょう。

そこで、利用者の方と権利者の方の間を取りもっているのがJASRACです。一定の使用料率や所定の申込フォームで手続きいただけるので、JASRACの管理曲であれば手続きを大幅に簡略化することができます。

Q3.よく「私的利用の範囲」という言葉を耳にしますが、どこまでが私的利用なのでしょうか

堀木:字の通り「個人で使うもの」というのが基本です。私的利用の範囲に認められるのは「経済的利益を損失しないこと」が前提です。つまり、それをやったところで売上に影響しないであろうという範囲と考えても良いでしょう。

例えばCDを買ってきて、車でも聴きたいからコピーしたとします。家用と車用に同じCDを2枚買うというのは現実的ではありませんよね。なのでこれは私的利用の範囲だと言えます。

しかし「良い曲だから隣に住んでいる人にも聴かせてあげよう!」とコピーしてしまうと、本来2枚売れるはずのCDが1枚しか売れなくなってしまいます。いかに親しい間柄で、親切心でコピーしたとしても、これは私的利用の範囲外に当たります。

ですが「私的利用の範囲がどこまで認められるのか」は法律の解釈によって微妙に違ってくるので、「ここからここまで」と明確に断言するのが難しいのも事実です。

Q4.著作権を侵害してしまった場合の罰則を教えてください

堀木:刑事罰としては、10年以内の懲役、もしくは1,000万円以内の罰金になります。民事の場合は損害の実態に応じた損害賠償請求という形になるかと思います。

Q5.著作権が消滅した曲は自由に使って良いのですか

堀木:はい。保護期間を過ぎた著作物については、自由にコピーしたり公の場で演奏することが可能です。なお、日本国内の法律では、作った方が亡くなられてから50年間は著作権で保護されると規定されています。50年というのは、亡くなった日から数えて50年ではなく、翌年の1月1日から数えて50年間とカウントするのでご注意ください。

また、著作権が切れたと言ってもすべて自由にしていい。自分の曲のように扱っても良い…ということではない点は覚えておく必要があるでしょう。著作財産権が消滅したとしても、日本の法律上、著作者が亡くなった後でも生前に「こんなアレンジはして欲しくなかった」など著作者の人格権の侵害に当たる使用には制限がかかります。

この場合、権利を引き継いだ方が訴えを起こすことができますので、人格権については十分配慮する必要があります。

Q6.海外の民謡を使いたい場合はどうなりますか

堀木:昔から歌い継がれている曲の著作権に関しては、既に消滅していると考えていただいて問題ないかと思います。

 ただし、これは原曲に限ります。中には編曲家の方が作ったアレンジ版もあり、この場合はアレンジを行った編曲家の方に権利が発生しますので、そのアレンジで演奏などをする場合は許諾を取る必要が出てきます。

その曲がアレンジ版かどうかは「アレンジ版」などの表記があるかを確認することもできますが、私どもが公開している「J-WID」という楽曲データベースを調べていただく方法もあります。曲名や作曲者で検索していただくと、原曲の権利状況と、アレンジ版がある場合はその情報まで検索することができるようになっています。

︎JASRACが管理する膨大な作品の権利状況を調べることができる、作品データベース検索システム「J-WID(ジェー・ウィッド)」。JASRACのホームページから誰でも利用することができます。 http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/

Q7.曲を作る際に、著作権の侵害になるガイドラインはあるのでしょうか

堀木:これは非常に難しい質問ですね。どこまでがオリジナルで、どこからが侵害になるのかは、元々の曲を作った方の捉え方による部分が大きいと言えますし、著作権法にも「権利を侵してはいけない」と書かれているだけで、具体的に何が良くて悪いかという境界線が示されているわけではありません。

1つの考え方として、その曲の独自性…つまりあるメロディーを聴いたときに多くの方が「あの曲だよね」と認識されるかどうかがポイントになるのではないでしょうか。

もちろん創作物は世の中に溢れていますので、自分としては完全にオリジナルだと思っていても、果たして本当に過去に作られていないか、すべてを確認することは現実的に不可能です。ですが、発表される前にできるだけ確認していただいたり、作曲時から著作権の存在を意識することが大切になってくるでしょう。

またオマージュはどうなんだ、という議論もあると思いますが、こちらも明確な基準はありません。業界慣行としては、トラブルが起きないように、事前に権利者に一声掛けて許可を得ておくケースが多いと言えます。

万が一トラブルが起こった場合、今までどうしてきたかというと司法判断を仰ぐか、当事者間で話し合いで解決するかの2つでしょうか。作品の類似性は非常に繊細な問題ですから、司法でも一審と二審で違った結果が出ることも珍しくありません。

Q8.歌詞やタイトルはどのように考えれば良いのでしょうか

堀木:これもメロディーと同じで明確にボーダーラインを提示することができませんが、曲のタイトルや新聞記事の見出しなど、単語1つまで著作権を認めてしまうと、何もできなくなってしまいます。それを防ぐため、ごく短い単語やワードに関しては著作権の保護外になっています。

基本的には単語1つで問題になるようなことはないと言えますが、Q7と同じくその曲の独自性に関わるかによっては問題になる可能性もあるので配慮する必要はあるでしょう。

Q9.ライブハウスでコピー曲を演奏することに問題はありませんか

堀木:「公の場で演奏する」演奏権は、著作者が持っている権利ですので、著作権が存続している曲を演奏する場合には権利者から許諾を得ることが必要です。もしその曲がJASRACのような著作権管理団体に預けられている曲に関しては、管理団体に申請して頂き、そこで許諾をお出しする形になります。

ここでポイントになるのは「入場料を取るかどうか」という点です。チケット代が0円の場合は問題ないかといえば、そうではありません。ライブハウスの場合、入場するのにドリンク代がかかるケースが多いと思います。その場合、来場者の方が完全に無料で入れるエリアではないと解釈されます。

ライブハウスでは、演奏者ではなく経営者の方が音楽の利用者としてJASRACから著作権の許諾を得ています。多くのライブハウスは、JASRACの管理するレパートリーなら自由に演奏できる包括契約を選択されています。そのため、当日の急な曲目変更などにも対応できます。

コピー曲を演奏されたい場合は、出演されるライブハウスさんに契約されているかを確認していただくのが良いでしょう。

Q10.ストリートでコピー曲を演奏する場合は、どうなるのでしょうか

堀木:いわゆるストリート演奏は演奏権が及ばないため、許諾を得るのは不要と考えられます。

演奏権が及ばない要件として「演奏が営利目的でないこと」。個人で演奏される場合は営利性なしとみなすことができるでしょう。そして2つ目に「出演される方に報酬が発生しないこと」。演奏者が本人であれば、自分に報酬ということはないと思いますので、これも問題ありません。そして3つ目が「入場料がかからないこと」です。この3つの要件すべてに該当するのであれば、コピー曲でも申請いただく必要はありません。

ストリートでは、度々「投げ銭」が行われますが、これが報酬や入場料に当たるのではないか、と不安に思われる方もいるでしょう。ですがストリートの場合は「それを払わなければ見れない」というものではありませんよね。明らかな商業目的のストリート演奏は例外として、個人でストリートで演奏されていて、投げ銭があった場合も入場料とみなしてはいません。

チャリティーについて、よく問い合わせがあります。ケースによって事情が変わってきますので、催物の開催が決まり次第、JASRACへお問い合わせください。開催の条件によっては、使用料が減額となる場合があります。

Q11.既存曲を演奏したりアレンジしてネットで配信。これはどうですか

堀木:まず、インターネットで音楽を配信するという点についてお話をさせていただきます。最近ですと、動画配信サイト…代表的なところではYouTubeやニコニコ動画といったサービスを運営されている会社とJASRACの間で包括契約をしているので、そのサイトに置いてはアップロードされる方が個別に申請をする必要はありません。

実際にどのようなサイトが契約しているかは、JASRAC のホームページで公開しています、ご覧ください。ご注意いただきたいのが楽曲をアレンジする場合やCDや有料配信サービスで購入された音源を使用する場合です。楽曲をアレンジするには著作者人格権や翻案権、他者制作の音源を利用する場合は著作隣接権の許諾が別途必要となります。どれもJASRACが管理している権利の範囲外ということになりますので、それぞれの権利者から直接許諾をとっていただく必要があります。つまり、個人が非営利の目的で、楽譜どおりに自らが演奏、制作した音源の投稿は問題ないということです。

動画投稿サイトに関しては、「YouTube」など皆さんがよく耳にされるサービスの契約は増えています。ご注意いただきたいのはblogサービスも同じです。例えば、Twitterは契約がありませんので、歌詞を書き込んでしまうと著作権の侵害行為に当たります。Twitter社の方でも、使用ユーザーに対して著作物にあたるものは書き込まないでくれ、というアナウンスを出している状況です。使っている方も多いと思いますので、ご注意ください。

Q12.動画配信サイトに「演奏動画」をアップすることは問題になりますか

堀木:音楽をアップロードすること自体は、先ほどお話した通り問題ありません。ただし市販の音源をそのまま利用してアップロードする場合には、著作隣接権の「レコード製作者の権利」の侵害に当たりますので、別途権利者のレコード会社の許可を得る必要があります。

 自分の演奏を重ねたり、音程を変えるなどの編集を加えてアップロードされる方もいらっしゃるようですが、本来はレコード会社に許可を得なくてはいけないものを、勝手にアップロードしていますし、元々の音源を改変してしまっているという点でも後々問題となる可能性があります。そのような利用をする場合は、必ず事前にレコード会社へお問い合わせください。

Q13.カバー音源を作りたい時に、どのような手続きが必要になりますか

堀木:アレンジをする場合には、オリジナル曲の権利者の方に連絡し、アレンジをしても良いという許諾を得てください。その上で、その曲がJASRACの管理楽曲の場合には録音に関するお手続きをしていただく必要があります。

繰り返しになりますが「アレンジをする」という人格権に当たる部分に関してはJASRACで管理できない部分ですので、アレンジの許諾をいただけないと私どもも手続きを進めることができません。

Q14.楽曲の使用料は決まっているのでしょうか

堀木:楽曲の使用料はどのような用途で使われるのかによって種類が分かれます。具体的な利用料に関しては、JASRACのホームページで公開しておりますので、そちらをご確認いただくのが確実ですね。使用料計算シミュレーションで試算ができるようになっています。

Q15.自分でCDを作る場合、JASRACに登録した方がいいでしょうか

堀木:著作権は自分でも管理できるので、JASRACに権利を預けることは必須ではありません。とはいえ、今後活動する中で人気が出てくると音楽を使いたい方に個別に許諾を出すのは大変です。本来は音楽に専念したいところを事務作業に時間を取られてしまうということですから。その場合は、私どもに権利をお預けいただければよろしいかと思います。

利用方法ごとに、複製権だけ管理して欲しい。とかネット配信に関係する部分だけ預けたい。といったように、パーツパーツで権利を預けることもできます。

例えば、自主制作盤をプレスしているバンドであれば、CDはライブなどで手売りでどんどん売りたいと思うことでしょう。このときに複製の権利まで預けてしまうと、自分の曲のCDを作るときに毎回JASRACに使用料を払わなくてはいけなくなってしまい、逆に不便になってしまいます。

他の人に使われることが多く、著作権の使用料をしっかりと管理して欲しいという項目だけ預けていただくのが良いかと思います。

Q16.楽曲を管理してもらう時には、どの位の利用料がかかるのでしょうか

堀木:JASRACの会員になっていただき、信託契約申込金(個人の場合は2万7,000円/税込)をお支払いいただくことで、これまで作った作品から今後作られる作品まで、すべてを管理させていただきます。つまり、楽曲ごとに登録料は必要ありません。また、管理楽曲が使われた場合の使用料に関しては、権利者にお支払する際に管理手数料を控除し分配いたします。

Q17.盗作された場合は、どのように対処すればよいのでしょうか

堀木私たちは作品の著作権の財産権のみをお預かりしているので、残念ながらJASRACとしてお手伝いできることはありません。例えば、動画配信サイトなどで、自分の曲が違う名前で公開されていたような場合、公開を止めて欲しいということであれば、動画配信サービスの管理者に削除依頼を出すことになるでしょう。管理会社側で審査が行われ、要件を満たしていると判断されれば公開を止めることができるでしょう。それ以上の対処となると、個人で法的に争っていくしかありません。その場合は、まず該当楽曲の作者を特定し、自分の方が早い時期に同じ曲を創作していたという証明をする必要があります。

演奏権や録音権、インターネットでの配信など、様々な権利、利用形態の組み合わせでお預けいただけます。詳しい手続きについてはJASRACの会務部で承っています。