絶対わかるストリングス音源 – ストリングス・アレンジ編 –

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音楽を作る上で最低限知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説していく「絶対わかるシリーズ」。今回のテーマは華やかなサウンドで楽曲を彩る「ストリングス」です。ポップスやロック、EDMまであらゆるジャンルで多用されるお馴染みのパートですが、どんな風に入れたらかっこ良いのか、アレンジやフレーズの組み立てに悩みを持っている方も少なくないのではないでしょうか。ストリングス・パートをかっこ良く聴かせるための基礎知識と、歌モノにも使えるオススメのストリングス音源6モデルを徹底紹介していきます。

本記事は「基礎知識編」と「アレンジ編(本記事)」の2部構成です。

ハーモニーとボイシング

ここからは、実際にストリングスのラインを作る時の基本的な考え方を見ていきます。なおクラシックではなく、ポップスやロック系楽曲を想定しています。

基本的には、曲のコード進行に準じてフレーズを作っていくことになると思いますが、ポイントはコードの構成音をどのパートに割り当てていくか…ということです。シンプルな例としてCのコードで考えてみましょう。

まずは、何も考えずにルート音からチェロ、ビオラ、2ndバイオリン、1stバイオリンと配置してみます。これを聴いてみると、力強さやまとまりを感じると思います。

 

次に、下譜のようにコードの構成音を1オクターブを超える域に再配置してみます。

今度は、広がりのあるスッキリとした印象で、何となくこちらの方がストリングスっぽい響きに感じるのではないかと思います。このように、同じコードでも配置を少し変えるだけで、まったく違う印象を与えることができます。構成音をどのように積み重ねるかを「ボイシング」と呼び、前者のように1オクターブ内に音を積み重ねるものを「クローズド・ボイシング(密集)」。後者のように1オクターブを超える音域に重ねるものを「オープン・ボイシング(開離)」と呼びます。

ピアノロールで見ると、下図のようになります(ルート音をチェロに合わせ、1オクターブ下げています)。

なおコードを転回したり、どのように積むかは曲の雰囲気に合わせて調整していきます。

横のつながりを意識する

コードは音の積み…つまり縦のラインに重点を置いて考えるケースが多いと思いますが、曲の流れを意識する場合は、横方向のラインにも気を配ってみてください。例えば1-6-2-5のシンプルなコード進行に沿って、音を配置するとします。単純に、各コードを配置するとこうなります。

コードの構成音をシンプルに配置した状態

ここで、コードの各構成音を時間軸で見てみると、C(ドミソ)とAm(ラドミ)となり、ドとミの2音は共通していることがわかります。このような場合は、共通音を活かした転回にすることで、よりスムーズな印象を与えることができます。

コードの共通音を意識して配置した状態

実際に音で聴き比べてみるとわかるのですが、前者はコード感の強い「動」の。後者は流れが自然な「静」といったところでしょうか。どちらが良い…というものではありませんので、シーンに応じて使い分けるのがオススメです。音数の多いポップス/ロック系楽曲の場合は、気を付けないとすぐ音が飽和してしまうので、こういった工夫が特に有効でしょう。

なお、こういったハーモニーの考え方は、何もストリングスに限った話ではなく、鍵盤楽器やギターなど和音楽器に共通して言えることなので、楽器単体ではなく、アレンジ全体で響きを作るようにしてみてください。

パートの役割を考える

ポップス系の楽曲に限って言えば、クラシックのように禁則(タブー)はあまり意識しなくても良いので、自分がかっこ良いと感じるフレーズを組み立てていけばOK。とはいえ、どうやったら良いかわからない…なんて人のために、簡単にソレっぽく聴こえるポイントをいくつか紹介します。

まずは、曲の中で各パートに何をさせたいのかをイメージするところから始めましょう。例えば、多くの場合、低域はベースが支えているのでチェロはルートを中心に、所々で軽い動きを付ける程度で十分なはずです。動かしすぎると、低域が濁って聴こえてしまうこともあります。

高域は、曲の主役たるボーカル(メロディー)と1stバイオリンの関係を意識してみてください。特にセクションの始めやロング・ノートの部分では、メロディーとベースに被らないようにするのが無難です。メロディーを補強するために使うならば、ユニゾンさせてしまうのも手ですが、中途半端にユニゾンさせると逆効果になってしまう可能性もあるので注意が必要です。

動きのあるラインを作りたい場合には、メロディーに対して、副旋律(カウンター・メロディー)になるようなフレーズを作っていきましょう。メロディーに対して3度、6度を中心に、メロディーに対して並行しないように構成するのがオススメです。

2ndバイオリンに関しては、基本的に1stバイオリンの1オクターブ下を演奏させることからスタートしてみてください。バイオリンのラインを強調することができます。もちろん、キメや駆け上がりの部分でハモらせるのはアリ。

ビオラに関しては、メロディーやバイオリンのラインに対してハモリを作っていくのが基本になると思います。バイオリンとは別のタイミングで動かすことで、立体感のあるハーモニーを作ることができます。

駆け上がり/下がりを活用する

フレーズのきっかけを簡単に作れるのも、ストリングス・パートの魅力。中でも駆け上がり/駆け下がりは、ストリングスが映える定番のフレーズと言っても良いでしょう。

基本的には、トップノートに向かってスケールの音を配置していくだけで良いのですが、よりかっこ良く聴かせるポイントは奇数音符を使うこと。3、5、7、9連符あたりを使うことで、フレーズをより効果的に聴かせることができます。

駆け上がり/下がりは連符がオススメ!

この時の各パートの動きですが、1stバイオリンに対して2ndバイオリンはユニゾン、オクターブ下、6度下…などいくつかのバリエーションが考えられます。ビオラやチェロまで駆け上がってしまうと、ユニゾン感が強くなってしまうと思うので、あえてロング・ノートで鳴らしておくのも手です。また、駆け上がりのタイミングでハープのグリッサンドなどを入れる…というのもアレンジの常套手段です。

 

これもストリングスに限った話ではありませんが、メリハリを付けることで楽曲に彩りを与えることができます。ここで言う「メリハリ」というのは、フレーズだけでなく奏法や音量などすべての要素です。例えば、メロディーに対してフックになるようなラインには、スピッカートを使ったり、所々で連符を入れたり、あえてコード・チェンジのタイミングを変える…など様々な方法が考えられます。聴かせどころを生かすには、それ以外の場所を工夫するのが一番簡単です。

ストリングスは、弓の強さで発音中にも自由に音量調整ができる楽器です。ロング・ノートを使う場合は、エクスプレッションをうまく使って、1音の中でダイナミクスを付けるのも良いでしょう。

どのようなダイナミクスを付けるかはケースバイケースですが、ロング・ノートの場合は発音後に一度音量を下げ、次第に上げていくようなアプローチも有効です。ダイナミクスを一番聴かせたいところで最大の効果を得るためには、やはりここでもメリハリが肝心です。

リアルなサウンドにこだわるなら、ダイナミクス・コントロールも必要不可欠です

ストリングスのアレンジは非常に奧が深いので、いろいろな楽曲を参考にしながら、じっくり取り組んでみてください。

 

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