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ミュージシャンだけでなく、映像クリエイターやインターネット・メディアまで「音」に関わっている人にとって、今や欠かせない存在となったハンディー・レコーダー。その中でもズームの「H4n」は世界的なスタンダードであり、ハンディー・レコーダーの指標と言えます。「H4n Pro」は、そんなH4nの後継モデルです。早速、その特徴と魅力を見ていきましょう。

さらに磨き上げられたサウンド

ズームのハンディー・レコーダーが世界中で高い評価を得ている大きな理由の1つに「高品質なサウンド・レコーディングを気軽に行える」という点が挙げられます。これはレコーダーとして最も重視したいポイントであり、H4n Proでは前モデルよりもサウンド・クオリティーの向上が図られています。

音質のキモである内蔵マイクには使い勝手の良い「XYステレオ・タイプ」を採用。2つのマイク・カプセルを同一軸上に重なるように配置することで、音像がハッキリとした聴きやすいサウンドを録ることができます。また、マイク・カプセルを回転させると、ステレオの指向角度を標準の90°とワイドな120°という2つのタイプから切り替えが可能。録りたい楽器や収音する現場の雰囲気に応じて切り替えることで、よりイメージに近いサウンドを録音することができます。

▲カプセルを回転させると、指向角度を選択可能。マイク・プリアンプも強化され、より微細でクリアなレコーディングを実現

 

例えば、ソロの楽器をはじめ、バンドのリハーサルといった狭い空間や比較的少人数でのアンサンブルの場合は90°が適しており、ライブハウスやホールなどの大きな会場での演奏を録る場合は指向角度を120°に設定することで、よりワイドなステレオ感と臨場感を再現することが可能です。

さらに、マイク・プリアンプもグレード・アップ。上位モデルである「H5」や「H6」と同等のものが使われており、EIN -120dBu以下という優れた低ノイズ特性を実現しています。入力音のゲインを上げてもノイズを最小限に抑えることができるので、特に繊細な音を録りたい場合に大きなアドバンテージとなります。

豊富な入出力端子を搭載

豊富な入出力端子を備えているのもH4n Proの大きな魅力です。本体の底面にはマイクはもちろん、ミキサーなどのライン機器やエレキ・ギター/エレキ・ベースなどを接続可能なXLR/TRSコンボ・ジャックを2系統搭載。ファンタム電源(48V/24V)の供給にも対応しており、内蔵のステレオ・マイクと組み合わせることで多彩なニーズに応えてくれます。さらに、内蔵マイクの背面にはステレオ・ミニ・ジャック仕様のマイク入力端子も搭載。ここには、2.5Vのプラグイン・パワーで動作するエレクトレット・コンデンサー・マイクを接続することができます。

出力部はラインとヘッドフォン兼用のステレオ/ミニ出力端子を備えているほか、本体にはスピーカーも内蔵されているので、録音後にすぐプレビュー再生を行うことができます。

ボタン類もシンプルにまとめられており、メニュー・ボタンや録音レベルの調整ボタンなどのよく使うものは右側面に、再生ボリュームやライン/ヘッドフォン端子、電源スイッチなどの出力に関するボタンは左側面に配置されています。本体のサイズもコンパクトなので、まさに「ハンディー」という名の通り、手軽に扱える絶妙なサイズと操作性を実現しています。

▲XLR/TRSコンボ・ジャックを搭載。XLR端子にはケーブルの抜けを防止するロック機構も備わっています

STEREOモードで使う

H4n Proがユニークなのは「STEREOモード」「4CHモード」「MTRモード」という3つの動作モードを使い分けることができる点です。

▲用途に応じて、3つのモードを使い分けることができます

 

STEREOモードは内蔵マイクや外部入力からの音をステレオで録音する、一般的なハンディー・レコーダーとしてH4n Proを使うモードです。バンドのリハーサルを記録したり、ソロ楽器のレコーディングや思いついたメロディーやリフなどの曲のアイデアを録り溜めていく用途にピッタリなモードと言えます。

録音ソースの選択は本体のボタンで内蔵マイクか、外部入力を指定するだけです。もちろんローカットやコンプレッサー、リミッターといったズームのハンディー・レコーダーではお馴染みのエフェクトも使用できます。録音フォーマットはWAV、またはMP3に対応。WAVの場合は最大24bit/96kHzまで設定可能で、ファイルへ自動的にタイムスタンプが入る「Broadcast WAVフォーマット」準拠なので、録音と同時にビデオカメラで撮影していた映像と同期させる場合も簡単です。なお、MP3で録音できるのは、このモードのみとなっています。

ハンディー・レコーダーとして使う場合に気になるのが、バッテリーの駆動時間ではないでしょうか。何十時間も連続して録音する機会は多くないと思いますが、「カバンに入れっぱなしで、いざ使おうと思ったら、バッテリーの残量が…!」というのは起こりがちと言えます。H4n Proは、通常でも単3乾電池2本で6時間(アルカリ乾電池を使用時)という十分な連続録音が可能ですが、長時間使いたい場合や電池残量が心もとない場合に便利なのが「スタミナ・モード」機能です。

これは乾電池ボックス内の「スタミナ・スイッチ」をONにすると、使える機能が制限されて、連続録音時間を10時間(アルカリ乾電池を使用時)まで延ばすことができる機能です。このスタミナ・モード機能はSTEREOモードでのみ使用可能で、録音フォーマットは16bit/44.1kHzのWAVファイルに固定されてしまいますが、長時間、録音したままにしたい現場では重宝することは間違いありません。

また、「録音ボタンを押すタイミングが遅れてしまった!」という場合に録音開始の2秒(4CHモード/96kHzサンプリング設定時は1秒)前に遡って録音ファイルを作成できる「プリ・レコード」機能や事前に設定しておいた入力レベルを超えた瞬間に自動で録音を開始し、規定レベル以下で録音を停止させることができる「オート・レコード」機能など、録音に便利な機能も搭載されています。

H4n Proには楽器の練習に便利な機能も備わっており、チューナーやメトロノームはもちろん、50%〜150%の範囲で設定可能な再生スピードの調整機能も搭載。レコーディングだけでなく、楽器演奏の練習ツールとしても活用することができます。

▲再生スピードの調整機能をはじめ、チューナーやメトロノームまで、楽器の練習に便利な機能が満載です

4CHモードで使う

内蔵ステレオ・マイクと2系統の外部入力を合わせた、合計4チャンネルを同時録音できるのが「4CHモード」です。録音フォーマットはWAVのみで、一部の機能に制限はかかりますが、ハンディー・レコーダーでマルチ録音ができるアドバンテージには大きなものがあります。「制限」と言っても、扱えるファイルの違いによるものが中心なので、普通に使う場合に不便さを感じることはありません。4チャンネルがあれば、楽器の収録も内蔵マイク+お気に入りのコンデンサー・マイクやライン(D.I.)の音をミックスしたり、ライブを収録する場合も内蔵マイクのエアーとPAからのライン信号を別々のチャンネルで録るなど、自由度が飛躍的に増します。

4つのチャンネル(内蔵マイク+外部入力の2つのステレオ・ファイル)は録音後に本体内の「ミキサー」機能で再生ボリュームやパンを調整することができるほか、SDカードには別々のオーディオ・ファイルとして録音されているので、パソコンにコピーし、DAWソフトで細かく作り込むことも可能です。なお、H4n ProにはDAWソフト「Cubase LE8」と波形編集ソフト「WaveLab LE9」が無償でバンドルされているので、特別なソフトを持っていなくても、H4n Proを手に入れるだけで、一通りの編集環境まで揃うことになります。

MTRモードで使う

3つ目のモードが、2トラックの同時録音や4トラックの同時再生が行えて、ちょっとした曲作りにピッタリの「MTRモード」です。「ミックスダウン」機能も備えているので、ドラム→ベース→ギター→ボーカルという風に1パートずつを重ねていくような使い方もOK。パンチ・イン/パンチ・アウトもできるので、曲のアイデアを練ったり、デモ音源を制作することが可能です。

MTRモードでは「PRE AMP」と「EFX」という2つのエフェクトを使用することができ、どちらも非常に優秀です。EFXモジュールにはコンプレッサーや空間系、モジュレーション、ピッチ・シフトなど、音作りに必要なものが網羅されています。

特筆すべきなのはPRE AMPセクションです。これはギターやベースのアンプ・シミュレーターで、搭載されているアンプ・モデルは同社の人気モデル「G5n」(ギター用)や「B3」(ベース用)相当という特別な仕様を誇っています。ギター用の12タイプ、ベース用の6タイプはどれも定番のアンプ・モデルで、3種類のマイク・プリアンプ系エフェクトも搭載。もちろんパラメーターをカスタマイズして、オリジナルのサウンドを作り上げることができます。また、これらのエフェクトの組み合わせをパッチとして保存し、呼び出しもできるなど、「高品位なギター/ベース・エフェクターがハンディー・レコーダーに入っている!」と言っても過言ではありません。

▲人気のG5nやB3直系のギター/ベース・アンプ・モデルを搭載しています

 

ユニークなのが「KARAOKE」機能です。取り込んだ音楽ファイルをバックに、ギターやボーカルを重ねて録音することができ、曲のセンター成分の要素をカットして、ボーカルやリード・ギターを目立たなくさせる「センター・キャンセル」やカラオケで必須の「キー」の変更も自由に行えます。

H4n Proは本体のUSB端子でパソコンと接続することで、本体内のSDカードに入っているデータを直接パソコンとやりとりしたり、2イン2アウトのUSBオーディオ・インターフェイスとしても使用できます。音楽制作に使うのはもちろん、内蔵マイクを活用して、ポッドキャストやインターネット配信も行えるなど、H4n Proは様々なシーンで重宝することでしょう。

ここまで紹介したように、H4n Proは単なるハンディー・レコーダーの枠には収まらない、便利な音楽制作ツールです。ぜひ活用してみてください。


■主な仕様

●同時録音トラック:2(ステレオモード)、4(4CHモード)、2(MTRモード)●同時再生トラック:2(ステレオモード)、4(4CHモード)、4(MTRモード)●エフェクト・モジュール:2、ステレオモード/4CHモード:LO CUT、COMP/LIMITER、MTRモード:PRE AMPモジュール、EFXモジュール●エフェクト・タイプ:53●チューナー:クロマチック、ギター、ベース、オープンA/D/E/G、DADGAD●記録メディア:SDカード(16MB〜2GB)、 SDHCカード(4〜32GB)●録音フォーマット:WAV(最大24bit/96kHz)、MP3(最大320kbps、VBR)●外部入力:XLR(バランス入力)/標準フォーン(アンバランス入力)・コンボ・ジャック、EXT MIC(ミニ・ステレオ・フォーン・ジャック)●出力端子:ライン/フォーン●電源:DC 5V 1A ACアダプター使用(ZOOM AD-14)、単3乾電池2本●最大連続録音時間:12時間(スタミナ・モード)●外形寸法(W x H x D):73 × 157.2 × 37mm●重量:294g

■税抜き価格

オープン(市場想定価格:2万4,000円前後)

■お問い合わせ先

ズーム
メーカーの製品紹介ページ

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