Modartt / Pianoteq 6 PRO

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

サンプリング音源が全盛の中、フィジカル・モデリングを使ったピアノ音源でお馴染みのModartt Pianoteqシリーズ。その圧倒的な表現力に魅了されている方も多いと思います。そんなPianoteqが3年振りにメジャー・アップデート。Pianoteq 6 PROで進化したポイントや、フィジカル・モデリングならではの魅力の秘密に迫ってみましょう。

フィジカル・モデリングの魅力

Pianoteqを語る上で欠かせないのが、フィジカル(物理)モデリング。ピアノ音源に限らず、生楽器音源を中心にサンプリング音源が広く使われています。モデリング音源とサンプリング音源の違いから見ていきましょう。

ご存じの通り、サンプリング音源は実際の楽器にマイクを立て、様々な強さと音程でレコーディング。オーディオ・ファイルをプログラミングしてサウンドを構築していく手法です。それに対してモデリング音源は、楽器の音が鳴るプロセスを仮想的に再現するという手法。ピアノであれば、「鍵盤を弾くとハンマーが動いて弦を叩き、その音がボディーで共鳴して音として聞こえる」という構造自体をシミュレートしています。いわば、パソコンの中にピアノを作って鳴らしているのです。

ユーザーとしては、構造の違い云々より、鳴らした時にどちらが気持ち良いか、かっこ良いかが重要だと思います。ここからはインプレッションを交えながらPianoteq 6 PRO(以下、Pianoteq 6)の各部を見ていきます。

“楽器のふるまい”や”演奏感”まで徹底的に再現した、ModarttのPianoteq 6。最新バージョンでは、モデリング精度がさらに磨き上げられ、至高のサウンドを味わうことができます

音源ではなく「楽器」である

Pianoteq 6最大の特徴であり魅力的なのは、サウンドがとにかく自然で弾いていて気持ち良いという点。もちろんサンプリング音源も優秀ですが、タッチによる音色変化や音を重ねたときの響きは、やはりモデリング音源に軍配が上がります。サンプリング音源の場合は、いくつかのベロシティーで収録した波形をレイヤーしたりクロスフェードでつなげるのが一般的なのに対し、モデリング音源であるPianoteq 6にはベロシティー・レイヤーという考え方自体がありません。ベロシティー1で鳴らせば1の。127で鳴らせば127の強さと音色が飛び出してきますから、言うなれば128段階のベロシティー・レイヤーが組まれた状態です。特に弱いタッチで弾いた時の甘い響きは絶品です。

使用するキーボードによってベロシティーを最適化できます

Pianoteq 6の表現力を最大限に活かすためにも、事前にベロシティー・カーブを設定しておくのがオススメです。画面の指示に従って鍵盤を叩いていくだけで、使用しているキーボードに最適なカーブを作ってくれるのですが、これを使うことで一般的なシンセ鍵盤でも十分ピアノらしい演奏が可能です。

また、サンプリング音源と弾き比べていて強く感じたのが、和音を弾いたときの響きの良さ。Pianoteq 6の方が綺麗に響き、オケにスッと馴染んでくれるのには驚きでした。

サンプリング音源でも十分リアル。そう思っていましたが、実際に聴き比べてみると差は歴然。音を重ねたりフレーズにしたときの気持ち良さは圧倒的にPianoteq。ピアノが弾ける/弾けない関係なく、鍵盤を押さえるだけで、耳と指先で違いを感じられるはずです。

Steinway公認の新モデル

Pianoteq 6は、購入するときに3つ(アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノ、クロマティック・パーカッション)の音色(フレーバー)を選ぶことができるのですが、今回はアコースティック・ピアノをチョイスしました。アコースティック・ピアノのフレーバーには「Steinway D」と「K2 grand pianos」という2つのピアノ・モデルが収録されているのですが、Steinwayのモデルは、なんと本家Steinway & Sons 公認!

プリセットも充実していますので、好みの音がきっと見つかります

そのリアルさは、音を出した瞬間に思わず唸ってしまったほど。Steinwayをサンプリングした音源も珍しくありませんが、モデリングならでは音のつながりの良さと相まって、音源を弾いていることを忘れてしまうほど。低域から高域までスムーズで、タッチの強さによって多彩な表情を見せてくれるSteinwayサウンドは、フィジカル・モデリングと相性が良いのかもしれません。音の芯がはっきりとしており、クラシックなピアノ・ソロからポップスやロックのバッキングまで幅広くカバーできるので使い勝手も良いでしょう。歴代Pianoteqで収録されてきたピアノ・モデルとはまったく違うサウンド・キャラクターです。

一方の「K2 Grand」は、Steinwayとはキャラクターが異なり、鳴りが豊かで一体感のあるサウンド。以前のバージョンにあったK1 Grandの正当進化というイメージなのですが、ナチュラルさは別モノのレベルで進化しています。

両モデルに共通して言えるのは、過去のモデルに比べて強いベロシティーで弾いたときの質感が格段に良くなったという点。これまでのPianoteqとは別モノの音源になった印象さえ受けます。

エレピのサウンドも絶品!

なお、他のピアノやオルガン、クロマティック・パーカッションなどのインストゥルメントは、アドオンとして追加購入も可能。音源からいつでもデモ音色が試奏できるのですが、こちらのクオリティーもかなり高いです。

ピアノの音を作れる

モデリング音源ならではの魅力が、”楽器レベル”での音色作りができる点。カットオフやADSRのようなシンセのパラメーターではなく、弦の共鳴やハンマー・ノイズ、さらには倍音の出方まで調整すれば、自分だけのピアノを作り上げることができます。

パラメーターの役割ごとに画面が分かれており、チューニングに関することは「TUNING」、倍音の出方やハンマーの固さなど、基本の音色に影響する「VOICING」、余韻や共鳴を調整する「DESIGN」の大きく3つのセクションで音を作っていきます。音を鳴らしながら適当にいじっていくだけで何となく仕組みがわかってきますので、無理にパラメーター名や意味を理解しなくても良いかもしれません。DAWではEQで好みのサウンドに近づけていくことが多いと思いますが、倍音をいじった方が簡単で効果的にサウンド・メイクが行えます。

また、面白いのがピアノの保管状態を変更できる「condition」というパラメーター。これを上げていくと画面の色がくすんでいき、次第にチューニングもずれていき、劇伴にもピッタリの味のあるピアノ・サウンドが再現できます。

経年劣化によるサウンド変化をシミュレートできるコンディション機能。画面上のインターフェイスも黄ばんでいきます

5本のマイクを自由に組み合わせる

また、最大で5本のマイクを自由に組み合わせ/配置できるのも最高です。サンプリング音源でも、各ポジションの音をMIXできる製品はありますが、マイクのアイコンをマウスでドラッグするだけで「どこにどんなマイクを立てるか」まで決められるのはモデリングならでは。しかも、音色変化もリアル。角度まで変更できますから、定番のAB、XYはもちろん無指向性マイクと双指向性マイクを組み合わせてMSで録ったり…と自由自在。しかも、各マイクごとにマルチ・アウトも可能なので、DAWソフト側で異なるエフェクト処理を施したり…と音作りは無限です。

5本までのマイクを自由に配置、ミックス可能。ピアノの生録さながらの音作りが行えます

極めつけは、各鍵盤ごとに個別にパラメーター調整ができるノート・エディター機能。選択できるパラメーターは、ボリュームやチューニングといった基本からハンマーの固さ、共鳴、インピーダンスなど30以上。専門用語が並ぶのでとっつきにくい印象があったのですが、いざ触ってみると最高。例えば、この音程だけ倍音が濁って聴こえる…なんて場合も、そこだけピンポイントでサウンドを補正可能。完璧にイメージ通りのサウンドを生み出すことができるのです。

ノート単位でパラメーターを追い込むことまで可能です

プリセットの音で十分じゃん! と思って弾き始めたはずが、気づくとマニアックなパラメーターをいじっていた、なんてことも…(執筆時に体験済み)。凝り性の人は気をつけてください。

用途で選べる3グレード

Pianoteq 6シリーズ3つのグレードが用意されています。今回はフラッグシップの「Pianoteq 6 PRO」を紹介しましたが、192kHz対応やノート単位の編集機能を省いた「Pianoteq 6 Standard」、さらにピアノ・モデルやマイクの編集機能を省き、もっともシンプルな「Pianoteq 6 Stage」と用途に応じて最適なモデルを選べるようになっています。

Piateq 6 StageでもPROとまったく同じピアノ・モデルが演奏できますが、触っていると絶対にエディットしたくなると思いますので、ピアノをよく使う方ならPianoteqの神髄を楽しめるStandard以上がオススメ。とことん音色を追求したいなら、PROのノート単位の編集は欠かせないと感じました。

モデリング・ピアノ、恐るべしです。

各種エフェクトも網羅されています


■主な動作環境

●OS:Mac OS X 10.7-10.12、Windows 7-10●CPU:Intel Core iシリーズ以上●RAM空き容量:1GB以上●ハードディスク空き容量:40MB以上●対応フォーマット:AU、VST (2.4/3) 各32/64bit、AAX64bit Native、スタンドアローン

■販売価格

Pianoteq 6 Stage 価格:1万6,200円(税込)
Pianoteq 6 Standard 価格:3万9,960円(税込)
Pianoteq 6 PRO 価格:6万2,640円(税込)

■お問い合わせ先

メディア・インテグレーション
メーカーの製品紹介ページ

関連記事

ページ上部へ戻る