ZOOM / H1n
- 2018/1/15
- 製品レビュー
- ZOOM, リニアPCMレコーダー, 特集記事
メロディーやリフをふと思いついたときや、リハーサルやライブのチェックまで、音楽をやっていると「記録」したいシーンはたくさんあるはずです。そんな時に便利なのがハンディ・レコーダー。ミュージシャンをはじめ映像クリエイターや一般ユーザーまで、幅広い層から支持を集めるZOOM Hシリーズの最新モデル「H1n」を紹介します。
シリーズ最小モデル
電源を入れれば、難しいことを考えなくても良い音で録ることができる…。これがハンディ・レコーダーの魅力です。ZOOMのHシリーズは、ハンディ・レコーダーの定番として長年に渡って市場を牽引してきた人気シリーズ。ポケットに収まるコンパクト・モデルから、多入出力を備えたプロ仕様の本格モデルまで、使用する用途に合わせて選べるラインアップの豊富さも魅力です。
そんなHシリーズの最新モデルとして登場したのが「H1n」。シリーズの中で最も小さいサイズで人気を集めたH1の後継モデルです。
基本的なサイズ感や手に持った感触は前モデルであるH1とほぼ同様なのですが、大きく変わったのがボタン配置。H1では前面パネルには録音ボタンのみで、その他のレベル設定やトランスポート、機能ボタンはサイドや背面にまとめられていましたが、H1nではそのほとんどが前面パネルに集約されています。
操作の好みはあると思いますが、液晶を見ながら主要ボタンにアクセスできるので誤操作も防げますし、より直感的に操作できるでしょう。なお、電源スイッチをスライドさせて「HOLD」位置に設定すればボタン操作にロックがかかるので、持ち運びや録音中も安心です。
ちなみに録音メディアはmicroSDカードで、最大32GBのカードが使用可能。単4乾電池2本で約10時間の連続録音が可能ですし、USB経由での動作もOK。専用のACアダプター(ZOOM / AD-17)が推奨ですが、モバイル・バッテリーでも動作させることができましたので、長時間のライブ収録も安心して使えそうです。
立体感のあるサウンド
せっかくハンディ・レコーダーを使うのですから、良い音で録りたいと思うのは当然でしょう。H1nは、サウンドに最も大きな影響を与えるマイク部分もこだわって設計されています。2本のマイクは、中心で重なるようにマウントされたX/Yレイアウトを採用。
X/Yはステレオの収録では定番の手法で、クリアな音像とワイドなステレオ感をバランス良く得ることができます。どのような位置の音源に対しても位相ずれが起こらないので、リハーサル・スタジオやライブ・ハウス、ホールのような場所の収録でも使いやすいのが特徴です。マイクの角度は、用途を問わずにバランスの良いサウンドが得られる90°にセットされており、録りたい音に向けるだけでイイ感じのサウンドを録ることができます。
スマートフォンでも簡単に音を録ることができるようになりましたが、ハンディ・レコーダーを使う一番のメリットは、やはり音質。誰が聴いてもわかるだけの違いがあります。スマートフォンの内蔵マイクの場合、そもそもモノラルですし、音楽や楽器演奏を録るために設計されているものではないので、音圧にも耐えられずすぐ音が歪んでしまい、音楽としてまともに聴けるクオリティーにはなりません。
H1nのマイクは、最大音圧120dB SPLですから、爆音バンドのリハーサルでも音が割れることもなく、ステレオ・マッチングされたマイクでステレオ・イメージや奥行き感までしっかりと収録することができます。バッテリー残量などを気にする必要もありませんし、やはり音楽をやっている人であれば、専用機であるハンディ・レコーダーを使うべきだと思います。
専用ボタンで簡単操作
デジタル機材が苦手な方や初めてレコーダーに触れる人でも簡単に扱えるのがZOOM / Hシリーズの特徴ですが、H1nではそのユーザー・インターフェイスがさらに進化。先ほど紹介したボタン配置にも関係してくるのですが、主要な機能はすべて前面パネルのボタンから直接アクセスができるようになっています。
例えば、レコーディング時に最も重要になる入力レベルは、マイクの下に付けられた大きめのインプット・ボリュームで調整します。ディスプレイにレベル・メーターが、録音ボタンの左側にはクリップ・インジケーターが用意されていますので、視覚的に簡単に設定できます。録音レベルが決まったら、録りたい音にマイクを向けて「録音」ボタンを押す。これだけで高音質レコーディングが行えます。
また、ここで注目して欲しいのがディスプレイの下に配置された「AUDIO」、「LO CUT」、「LIMITER」、「AUTO LEVEL」の4つのボタン。このボタンが非常に便利なのです。まずAUDIOボタンは録音フォーマットを切り替えるためのボタン。ボタンを押す度に、WAV(44.1 kHz/16-bit、48 kHz/16-bit、48 kHz/24-bit、96 kHz/24-bit)、MP3(48 kbps、128 kbps、192 kbps、256 kbps、 320 kbps)が切り替わっていくというスタイルになっています。
LO CUTはオフ/80Hz/120Hz/160Hzの4段階。LIMITERではリミッター機能のON/OFF。AUTO LEVELは、自動入力レベル調整機能のON/OFFを、それぞれ切り替えることができるのです。
こういった機能は、ハンディ・レコーダーで特によく設定する機能。通常であれば、メニュー画面から設定することが多いですが、それ前面パネルから直接変更できる…というよりも、通常使う範囲においてはメニュー構造自体がなく、すべては本体から直接操作することができるのです。
また、画面表示が日本語であることにも注目! システム設定画面で「English」と「日本語」が切り替えられるようになっています。ハンディ・レコーダーで日本語表示ができるモデルはまだまだ少ないですから、これもポイントです。
録音補助機能も充実
録音補助機能も充実しています。例えば、入力レベルが設定したレベル以上になると自動的に録音を開始する「オート録音」や、録音ボタンを押す2秒前にさかのぼって録音できる「プリ録音」機能。この2つは同時に併用することもできますので、リハーサルやライブ時に、演奏と同時に録音をスタートしたり、演奏が始まる2秒前から録音する…。なんて使い方ができます。
自分の演奏を録音する時は、設定した時間が経過すると録音を開始する「セルフタイマー」が便利。10秒まで3段階が設定できます。この機能をONにすると、プリ録音は使用できなくなるので気をつけてください。
ハンディ・レコーダーというと、演奏を記録したりチェックしたい時に使うイメージが強いと思いますが、「オーバー・ダビング機能」も搭載されています。再生ボタンを押しながら録音ボタンを押すと、事前に録音されたファイルを聴きながら新しいテイクを録音することができるので、ギターの演奏を聴きながらボーカルを録ることが可能。ちょっとした曲作りに便利です。
ファイルの任意の場所にマーカーを設定したり、再生時にはリピート設定や再生速度の調節(0.5〜2倍速まで5段階)、サウンド・エフェクトとして音声を聴き取りやすくしたり、ボーカルをカットするといった簡単な編集も行えます。こういった機能も、すべて本体ボタンから直接設定することができるのです。
メディア作品作りにも
近年では、デジタル一眼レフなどで映像作品を作る際の音声収録にも使われているHシリーズ。H1nのライン・アウトをカメラの外部マイク端子に接続すれば、H1nのマイクを使った高品位なビデオを撮影することができます。その際に録音レベル調整に便利なテスト・トーンの再生や、音声と動画の位置合わせに便利なサウンド・マーカー出力など映像クリエイター向けの機能も充実しています。
そのほか、パソコンやiOSデバイスとUSB接続すればカードリーダーやオーディオ・インターフェイスとして利用できたりと、盛りだくさん。音楽をやっているならば、ぜひカバンに潜ませておきたい。そんなハンディ・レコーダーです。
■主な仕様
●記録メディア:microSD/microSDHC 規格対応カード(Class 4 以上、最大 32 GB)●記録フォーマット:WAV(44.1 kHz/16-bit、48 kHz/16-bit、48 kHz/24-bit、96 kHz/24-bit)、MP3(48 kbps、128 kbps、192 kbps、256 kbps、 320 kbps)●入力:内蔵マイク(90°XY ステレオ方式 最大入力音圧:120 dB SPL)、MIC/LINE IN(ステレオミニジャック)出力:ライン/ヘッドフォン兼用ステレオミニジャック●内蔵スピーカー:500mW 8Ωモノラル・スピーカー●電源:単4乾電池x2(アルカリ乾電池、ニッケル水素蓄電池、リチウム乾電池)●連続録音中の電池持続時間の目安:約10時間(アルカリ乾電池、内蔵マイク使用時)●外形寸法(W x D x H):50.0 x 137.5 x 32mm●質量(本体のみ):60g
■実勢価格
1万2,500円前後(税別)
■お問い合わせ先
ZOOM
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