絶対わかるホーム・スタジオ作り – 前編

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音楽を作る上で最低限知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説していく「絶対わかるシリーズ」。今回はホーム・スタジオ作りに欠かせない基礎知識とアイデアを紹介します。完成度の高い曲を作るために何より大切なのがモニター環境。

音作りやミックス・ダウンの精度を高めるということだけでなく、快適に曲が作れるかどうかにも大きな影響を与える大切な部分です。ぜひ納得できるモニター環境作りに挑戦してみてください。

本記事は「モニター・スピーカー編(本記事)」と「チューニング編(4月9日公開)」の2部構成です。

何より重要なモニター環境

パソコンで曲を作るためには、いろいろな機材を揃えなくてはなりません。そんなこともあってか、ホームスタジオにおいて「モニター・スピーカー」はどうしても後回しにされてしまいがち。しかし、よく考えてみてください。音楽というのは、言うまでもなく「耳で聴く」コンテンツ。今自分が出している(作っている)音は本当に良い音なのか…それを判断するために何より必要なのがモニター環境のはずです。

しっかりとしたモニター環境がなければ、いかに高価なマイクやオーディオ・インターフェイス、音源/プラグインを手に入れても、それらの本当の実力を知ることも生かすことも難しいはずです。

また、「最近は皆イヤフォンで音楽を聴くから、モニターにこだわる意味は薄くなった」なんて声もあると思いますが、本当にそうでしょうか。確かにリスナーの環境がスピーカーからイヤフォンやヘッドフォンに変わったのは事実ですので、リスナーがどのような音で聴いているかを知っておくことは大切です。しかし、だからといって作り手の環境をそこに合わせる必要があるかは別の話。良い音を作るためには、良い音かどうかを感じられるモニター環境が必要不可欠です。何より良い音/良い環境で作った方が、作り手のテンションも上がるはずです。

もちろん自宅に商業スタジオのような本格的なモニター環境を作るのは、予算においても現実的ではありません。しかし、自宅レベルでも最低限こだわって、自分が信頼できるモニター環境を作る。そうでないと、本当に納得のいく作品は作れないはずです。

スピーカーvs ヘッドフォン

大きな音でスピーカーを鳴らせないから普段はヘッドフォンで作業している…。そんな人も多いと思いますが、やはり小音量でもスピーカーを鳴らして欲しいと思います。スピーカーとヘッドフォンではそれぞれの良い部分が異なるので、どちらが優れているか…という優劣の問題ではなく、用途に応じて使い分けるのがベストです。

まずヘッドフォンの強みは、細かい音やちょっとしたノイズもしっかりと聴き取れること。レコーディング時のモニターや細かい編集には欠かせません。また低域までしっかり再生できるので、小口径のスピーカーだけでは判断が難しい低域チェックにも効果的です。

それに対してスピーカーの強みは、自然な定位と立体感のあるサウンドで、ドライバーが耳の上にあるヘッドフォンでは表現の難しい奥行きを、しっかり把握することができます。また長時間の作業でも疲れにくいというのもスピーカーの強みと言えるでしょう。

住宅環境の都合で、常にスピーカーを鳴らすことができないシーンも多いでしょう。その場合はヘッドフォン中心でも、部分部分でスピーカーで確認するようにするだけで、ミックスの仕上がりは劇的に向上することでしょう。

モニター・スピーカーの基礎知識

昨今のモニター・スピーカーは、アンプを内蔵した「アクティブ・モニター」がほとんどです。オーディオ・インターフェイスやミキサーに接続するだけで音を鳴らすことができます。また、ヘッドフォンなどと違い、低域と高域を別のスピーカー・ユニットで再生させるのが主流です。高域を再生するユニットを「ツイーター」、低域を再生するユニットを「ウーファー」と呼び、それぞれのユニットを別のアンプで鳴らすスピーカーは「バイアンプ仕様」と呼ばれています。また、低域を補う用途で、バスレフ・ポートという穴が開けられています。

▲ツイーターとウーファーで構成された一般的な2Wayスピーカーの例。ツイーターとウーファーが切り替わるポイントのことを「クロスオーバー周波数」と呼びます

スピーカー選びのポイント

次に、モニター・スピーカーの選び方について見てみましょう。モニター・スピーカーとして販売されているモデルは、いずれも「色付けを最小限に抑え、原音をしっかりと聴ける」という基本を満たしていると考えてOKです。その上で、モデルごとの特色やサウンド・キャラクターの好みで選んでいくのが良いでしょう。

自宅で使うことを考えた場合、特に気になるのがサイズや音量だと思います。まずサイズですが、物理的にスピーカー口径と低域の再生能力は比例します。つまり口径の小さなスピーカーより大きなスピーカーの方が、自然で無理のない低域表現が可能というのが原則。同じ音量で再生させるとしても「大口径スピーカーで小音量を鳴らすのと、小口径をしっかり鳴らすのはどちらが良いか…」なんて議論になる背景には、こういった理由もあります。ただし、最近では小口径のスピーカーでも設計を工夫することで驚くほどパワフルな低域再生を可能にしたモデルも増えており、そういったモデルを選べば小口径でも十分メイン・スピーカーとして活用できるでしょう。

サウンドに関しては、先述の通りモニター・スピーカーとして販売されているモデルであれば必要最低限の性能は満たしているで、「フラット」という言葉を意識し過ぎなくても良いと思います。好きなサウンドで制作するのが一番なので、あまり小難しいことを考えずに自分が好きだと思えるモデルを選べばOKです。

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