バンド・レコーディングに挑戦する上で、一番大きな課題になるのがレコーダーとモニター環境ではないでしょうか。そんなバンドマンの悩みを一気に解決してくれるのが、ZOOMのLiveTrak L-12(以下、L-12)です。実際のバンド・レコーディングの中で、L-12の魅力や使いこなしのポイントに迫ってみましょう。

LiveTrak L-12

レコーディング機器の進化によって、リハーサル・スタジオなどを使った「セルフ・レコーディング」でも、ちょっとした工夫で商業スタジオに負けない作品作りができるようになりました。しかし実際に挑戦しようと思うと、必要な機材一式を揃えるには相当な予算が必要です。また、それらを使いこなすための知識や機材の持ち運びの問題など、超えなければならないハードルがいくつもあるのが実情です。

そんな諸問題を一気に解決してくれるのがZOOMのL-12です。12トラックの「デジタル・ミキサー」であり「MTR」であり、5系統の「キュー・システム」であり、14イン4アウトの「USBオーディオ・インターフェイス」でもある…という、これだけあればバンド・レコーディングが完璧にこなせる、オールインワン・ソリューションなのです。

ハードウェアのレコーダーを使う一番のメリットは、やはり「わかりやすさ」です。電源を入れてケーブルをつなげば、小難しいことを考えなくてもすぐに録音できて、持ち運びも楽。この気軽さはパソコンのDAWシステムにはない、ハードウェアならではの魅力です。

12トラック(+ステレオ・マスター)のレコーダーと、5系統のモニター・ミキサーとしての機能を備えたLiveTrak L-12は、バンド・レコーディング/ライブ・ミキサーの決定版! 全ミュージシャン必見の機材です

最大12チャンネルのレコーダー

今回は、L-12を使ってギター&ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4ピース・バンドの一発録りを行いました。

 まずはチャンネル構成を考えていきます。バンド・レコーディングの場合はマイク録りが基本なので、8チャンネル分のマイク入力をどのように扱うかがポイントになります。今回は「ライブ感を重視してボーカルまで一発録りを行う」ということで、以下のような構成になりました。各楽器へのマイクの立て方などは、今月号の特集記事をご参照ください。

 ch1.ボーカル

 ch2.ギター1(ボーカル)

 ch3.ギター2

 ch4.ベース(ZOOM/B3からライン録り)

 ch5.キック・ドラム

 ch6.スネア・ドラム

 ch7.オーバーヘッドL

 ch8.オーバーヘッドR

各楽器にマイクを立て、L-12に接続したらGAINで録音レベルを設定していきます。ここで感じたのが、マイク・プリアンプのサウンドの素直さと、各チャンネルに用意されているPADスイッチの便利さ。PADスイッチのお陰で、ドラムのような大音量の楽器でも、クリップを気にする必要がありません。地味な部分かもしれませんが、ここはかなり重要です。

あとは各チャンネルのRECボタンを赤く点灯させ、レコーダー・セクションの「REC」ボタンを押せば録音開始。このシンプルさはハードウェアならではと言えるでしょう。

チャンネル・ストリップ

各チャンネルには「チャンネル・ストリップ」として、1ノブ・スタイルのコンプレッサーと3バンドのEQ、センド・エフェクトを使用することができます。コンプやEQは効きも良く、EQはミッドが可変周波数タイプなので細かい補正もバッチリ行えます。

なお、レコーダーにはプリ・フェーダーの信号が送られるのも使いやすいポイントです。つまり、チャンネル・ストリップ上でかけたエフェクト類やチャンネル・フェーダーは、録音結果には影響しないということです。録音時には演奏しやすいサウンドや音量バランスでモニターしておき、細かい音作りは録音後に行うことができるのです。

各チャンネルには、3バンドのEQを使用可能。さらにセンド・エフェクトには、リバーブやディレイといった16種類の定番エフェクトが用意されています

5系統のモニター・ミックス

レコーディングで最も重要なのがモニター環境です。どうしてもマイクの位置や音作りに意識が向いてしまいがちですが(もちろん、それも大切です)、プレイヤーが良い演奏をするためには、演奏しやすいモニター環境が必要不可欠です。そのため、レコーディング・スタジオではキュー・ボックスという専用の機器を使い、プレイヤーが個別にモニター・ミックスを作れるようになっています。このモニター・システムの有無が、セルフ・レコーディングとレコーディング・スタジオの最も大きな違いと言っても良いでしょう。

本来なら専用機材を用意し、複雑なルーティングが必要となるモニター・システムですが、L-12では同等の機能を驚くほど簡単に使うことができます。本体右上の「MONITOR OUT」セクションで、5系統のヘッドフォンそれぞれにメイン・ミックス(MASTER)とモニター・ミックス(A〜E)のどちらを聴きたいのかを、スイッチで切り替えます。

あとは「FADER MODE」セクションでバランスを変更したいモニター・ミックスを選択し、フェーダーを使ってボリュームを調整するだけ。言葉で説明すると小難しくなってしまいますが、要するにL-12の中には6台のミキサーが入っていて、プレイヤーごとに設定できるのです。これによって、ボーカリストは自分の声を大きめに聴きたい…。ドラマーはベースを大きく聴きたい…といったパートごとに理想的なモニター・ミックスを簡単に作り上げることができます。

なお、モニター・ミックスやチャンネル・ストリップの設定状態は「シーン」として最大9種類まで保存しておくこともできます。

メインに加え、A〜Eの5系統まで個別にモニター・ミックスを作ることができます
5系統のヘッドフォン端子には、メイン・バスかA〜Eのモニター・バスのどちらを割り当てるかをスイッチで簡単に切り替えることができます

現場に求められる機能

メトロノーム機能はテンポや音色、パターンやプリ・カウントをカスタマイズできるのはもちろん、各モニター・ミックスに個別の音量を設定できるのがポイントです。メトロノームをしっかりと聴きたいドラマーは大きめに、逆にメトロノームよりも演奏を聴きたいボーカリストは小さめで…というような設定も自由自在。先述のモニター機能と合わせて、本当にレコーディングの現場で求められるポイントをしっかりと押さえているという印象です。

その他にもオーバー・ダビングやパンチ・イン/アウト機能や、音が入力されると自動的にレコーディングを開始するオート・レコード機能、録音開始から2秒前までさかのぼって演奏を記録できるプリ・レコード機能など、ライブ・レコーディングで便利な機能も搭載します。

▲メトロノーム機能も搭載し、クリックを聴きながらのレコーディングも可能。ディスプレイの上部には、トークバックとして使えるスレート・マイクが内蔵されています

DAWとの連携

レコーダーに記録したデータは、各チャンネルごとにオーディオ・ファイル化されるので、DAWシステムへのインポートも簡単。録音はL-12で行い、編集やミックス・ダウンは自宅のDAW環境で…という、ハードとソフトのメリットを生かした制作環境を構築できます。

また、L-12自体を14イン4アウトのUSBオーディオ・インターフェイスとしての使用も可能。この場合ch10〜14にDAWソフトの音をルーティングすることができます。さらにはクラス・コンプライアント・モードに対応し、iOSデバイスでも使用可能(要・Apple Lightning – USBカメラアダプタ)と、あらゆるシーンで活躍してくれること間違いなし。最高のバンド・レコーディング環境を提供してくれます。

録音データは、各トラックごとのオーディオ・ファイルとして保存されるので、そのままDAWソフトに取り込んで編集/ミックスすることもできます

【主な仕様】●入力チャンネル:モノラル(MIC/LINE)x 8、ステレオ(LINE)x 2●出力チャンネル:MASTER OUT:1、MONITOR OUT:5●チャンネル・ストリップ:COMP、LOW CUT(75Hz、12db/OCT)、EQ(HIGH、MID、LOW)●センド・エフェクト:16タイプ ●最大同時録音トラック数:14トラック ●最大同時再生トラック数:12トラック ●オーディオ・インターフェイス:14イン4アウト ●外形寸法:445 mm (W) x 282 mm (D) x 70.5 mm (H)●重量:2.53kg


■販売価格

価格:オープン(実勢価格:6万7,500円前後/税込)

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ズーム
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