ZOOM / LiveTrak L-12
- 2017/9/11
- 製品レビュー
- ZOOM, オーディオ・インターフェイス, 特集記事
本格的なミキサー機能、MTRとしても使えるレコーダー機能、モニター・システム、さらにオーディオ・インターフェイス機能までを統合。「そうそう、こんな製品を待っていたんだよ!」なんて声が聞こえてきそうな、まさにバンドマンの理想を具現化したかのような製品です。LiveTrak L-12があればどんなことができるのか。各部と共に具体的な活用法を紹介していきます。
デジタル・ミキサー機能
まずは、ベーシックなデジタル・ミキサーとしての機能から見ていきましょう。LiveTrak L-12(以下、L-12)は、モノラル8チャンネル+ステレオ2チャンネルの計12チャンネル構成。モノラル・チャンネルにはマイク・プリアンプを搭載したXLR/TRSコンボ・ジャックが採用されており、Ch1、2はHi-Z入力にも対応しています。搭載されるマイク・プリアンプは音にこだわっているようで、十分なゲイン幅で「クリアでピュアなナチュラル・サウンド」という表現がピッタリ。音質が好評のTAC/UACシリーズやFシリーズと同じ印象を受けました。
モノラル・チャンネルには1ノブ・タイプのコンプレッサーも搭載。つまみを回していくだけで、直感的にサウンドを作ることができます。また、全チャンネルに3バンドのEQとLow Cutスイッチを搭載。調整したいチャンネルの「SELボタン」を押し、「CHANNEL STRIP」エリアのつまみでパラメーターを変更する方式ですが、ポイントはMIDの周波数が可変できる点です。MIDは楽器で1番重要な要素が含まれている帯域なので、音色に応じて任意の周波数ポイントを設定できるのは魅力。通常、このサイズのミキサーでは省略されることが多いですが、これがあると無いのでは大違いです。
また、SEND EFXも内蔵。エフェクト・タイプはリバーブやディレイを中心に16タイプを搭載。2つのつまみで音作りもできるので、オマケ的なものではなく、しっかりとサウンドを追い込むことができるようになっています。
ミキサーの設定は「シーン・メモリー」として最大9種類まで保存可能。シーンにはフェーダー位置やチャンネル・ストリップ情報から後述のモニター・ミックスまで一通りを保存できるので、ライブ・コンソールとして使う場合にはバンド単位の設定を保存したりと便利に使うことができます。
MTRとして使う
L-12が凄いのはここから。単にデジタル・ミキサーとして優れているだけでなく、最大14トラックのマルチトラック・レコーダーとして使うことができます。MTRとして同社のRシリーズを愛用している方も多いと思いますが、使い勝手もRシリーズ同様にシンプル。各チャンネルの「REC/PLAY」ボタンを押して赤く点灯させたら「録音ボタン」を押すだけです。
最近ではDAWシステムで音楽制作をしている方が大半だと思いますが、リハスタに持ち込んでドラムやバンドを録ったり、ライブ・レコーディングのように自宅以外でのレコーディングではパソコンが不要というのは大きなメリットです。 また、LCDディスプレイの上部にはレコーディング時にコメントを入れたりトークバックとしても使えるスレート・マイクを内蔵しているのも便利なポイントです。
L-12で録った音はSDカードに各チャンネルごとに別ファイルで記録されるので、家に持ち帰ってパソコンにコピー。DAWソフトに取り込んで細かく編集&ミキシングして仕上げていく…といったハードとソフトのメリットを活かしたスマートな制作が行えるようになっています。
ちなみにUSB経由でデータを直接パソコンにコピーしたりUSBメモリーにコピーしてバックアップすることもできます。
便利な5系統のモニター機能
L-12にはいろいろな機能が搭載されていますが、中でも注目したいのが「モニター」機能。レコーディングでもライブでも、最も困るのはモニター。各プレイヤーが演奏時に聴く音をどのように作るか…という問題です。モニターのしやすさ=演奏のしやすさなので、良い演奏をするためには、そのプレイヤーが気持ち良く演奏できるモニター作りが必要不可欠。セルフ・レコーディングとレコーディング・スタジオの違いは、モニター環境にあるといっても過言ではありません。
L-12には、なんと個別にモニター・ミックスが作れるヘッドフォン・アウトが5系統も搭載。5人のプレイヤーに同時に異なるミックス・バランスのモニターを作ることができるのです。一般的なオーディオ・インターフェイスでは、ヘッドフォン・アウトは多くても2系統なので、同じことをDAW環境でやろうと思うと、必要な機材も増え、接続や設定が一気に複雑化しますが、L-12なら驚くほど簡単に使うことができます。
まずMONITOR OUTエリアで、各プレイヤーがMASTERとモニター・ミックスのどちらを聴きたいのかボタンで切り替えます。ボタンを引き出した状態ではメイン出力と同じバランスで、押し込むと個別のミックスを割り当てることができます。後は、A〜Eにそれぞれミックス・バランスを作成していきます。フェーダーの右(シーン機能の左)の「FADER MODE」エリアにあるA〜Eボタンで調整したいモニター・バスを選択。フェーダーを使ってボリュームを調整していきましょう。
ライブのオケ出しにも最適
打ち込みや事前レコーディングしてきた演奏を重ねる…いわゆる「同期」を使ってライブを行っているバンドも多いと思いますが、同期を使う場合にも1番苦労するのがモニター環境。ドラマーがMTRやDAWソフトを使ってメトロノームを聴きながらプレイする…というケースが多いと思いますが、5系統のモニター・ミックスが可能なL-12を使えば、メンバー全員がイヤフォンでメトロノームを聴きながら演奏することも可能です。かなりハイパワーなので、爆音環境でもバッチリ聴くことができます。
しかも、凄いのが各モニター・ミックスごとにメトロノームを個別設定できるということ。PAに送るMAIN OUTはメトロノームのボリュームを0に。あとはメンバーの好みでオケとメトロノームのボリューム・バランスも指定することができるのです。もちろん、事前にオーディオ・ファイルとしてクリックをトラックに録音しておいてもOK。内蔵メトロノームは音色なども変更できたりと、かなり柔軟に使えます。パソコンと違いトラブル・フリーですし、同期を使ったライブの課題を一気に解決してくれる機材が遂に登場! オケ出し用機材としても大ヒットすること間違いないでしょう。
オーディオ・インターフェイス機能
最後にオーディオ・インターフェイス機能です。最高24ビット48kHzで14チャンネルの入力、4チャンネルの出力が可能なUSBオーディオ・インターフェイスとして動作。クラス・コンプライアント・モードに切り替えれば、iOSデバイスでも使用(Apple Lightning – USBカメラ・アダプタが必要です)することができます。
入力は12チャンネルなのに、どうして14インなのかと言うと各入力チャンネルに加えてマスター・フェーダー後の2チャンネルも送ることができるから。なお、DAWソフトからの出力は9/10、11/12チャンネルの「USB AUDIO RETURN」に入力されます。ミキサー・スタイルのオーディオ・インターフェイスは、モデルによって設定が複雑な場合もありますが、L-12は非常にシンプルに使うことができます。
L-12をオーディオ・インターフェイスとして使うことで、高品位なマイク・プリアンプが8系統も使えるだけでなく、モニター・ミックスを自在に設定できるのが強み。オーディオ・インターフェイスとして使う場合にもミキサー機能はそのまま活用できるので、L-12でモニターすることでレイテンシーのない快適なレコーディングが行えます。また、パソコンへはコンプレッサーを通った後の信号が送られる仕組みなので、内蔵コンプで音作りするのも良いでしょう。
このようにスタジオ、ライブハウス、自宅で「あったら便利」な機能がすべて詰まったLiveTrak L-12。特に自宅以外でレコーディングすることの多い方にとって、最高のレコーディング・ソリューションとなってくれることでしょう。
■主な仕様
●入力チャンネル:モノラル(MIC/LINE)x 8、ステレオ(LINE)x 2●出力チャンネル:MASTER OUT x 1、MONITOR OUT x 5●バス:MASTER x 1、MONITOR x 5、SEND EFX x 1●チャンネル・ストリップ:COMP、LOW CUT、3バンドEQ●センド・エフェクト:16タイプ●最大同時録音トラック数:14トラック(12チャンネル+ステレオマスター)※96kHz時は12トラック●最大同時再生トラック数:12●オーディオ・インターフェイス:14イン4アウト●電源:ACアダプタ(DC12V/2A)●外形寸法(W x D x H):445 x 282 x 70.5mm●重量(本体のみ):2.53kg
■販売価格
オープン(実勢価格:6万8,000円前後)
■お問い合わせ先
ズーム
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