リアルなドラムの打ち込みテクニック – その2

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DAWソフトで曲作りを始めたばかりの頃は、とにかく打ち込んだり演奏を録音していくこと自体に楽しさを感じるはずです。しかし、慣れてくるともっとカッコ良くしたい! リアルに打ち込みたい! なんて完成度を高めたくなるのは自然な流れ。そんな時に注目したいのが、ドラム・トラック。

単にリズムを刻むだけでなく曲のジャンルや時代感、ノリに至るまでドラムが担う要素は非常に大きいパートです。ドラム・トラックを磨き上げることで、楽曲のクオリティーの底上げが行えるのです。そこで今月は、カッコ良くてリアルなドラム・トラックを作る、ちょっとしたテクニックを5回に渡って紹介していきます。(文:鈴木悠平)

前回の記事はコチラ

タイミングを調整する

前回に続いて、2つ目の要素「タイミング」について考えてみましょう。うまいドラマーはメトロノームのように正確なタイミングで演奏します。とは言っても常にジャスト・タイムで演奏するのは不可能なのは言うまでもありません。また、微妙なタイミングのズレが「ノリ」を生み出すものです。一流のスタジオ・ミュージシャンは曲によって微妙にタイミングを変えて演奏する、という職人技を持っています。タイミングを変化させるとノリが生まれるのは感覚的にわかると思いますが、同様に闇雲にズラしただけでは逆効果になってしまう諸刃の剣。その見極めが非常に難しいのですが、いくつかのポイントを見ていきましょう。

次の音とのタイミングを意識する

タイミングをズラす時にまず意識したいのが、ジャストで鳴らす場所とタイミングをズラす場所を明確にするということです。例えば、1拍目の音はドラム以外のパートも同じタイミングで鳴ることが多いので、ドラムだけズレていたらカッコ悪いですよね。キメのフレーズがある場合も同様で、タイミングを揃えるところは、ジャスト・タイムでしっかり揃えてあげる。これが大切です。

実際にタイミングをズラしていくのは裏拍で、パートはキック・ドラムから試してみるのがオススメです。ドラムを演奏している様子を思い浮かべてみてください。手(上半身)で演奏するハイハットやスネアよりも、足(下半身)で踏み込むキック・ドラムの方がタイミングを取りにくいと思いませんか。裏拍にあるキックを、ほんの少しだけ遅らせてみてください。これだけでノリが変わったように聴こえませんか。

そもそも、どうしてタイミングを変化させるとノリが変わって聴こえるかといえば、音と音のタイミングが変わるからです。タイミングが速くなれば同じテンポでもスピード感や勢いが付き、反対に遅くなれば緊張感を演出することができます。このバランスでノリが生まれているので、1拍目と次の音が鳴るまでのタイミングを意識することが大切です。

ヒューマナイズを活用しよう!

タイミングをズラすといっても、数ティック〜数十ティックと非常に微妙なレベル。ピアノロールなどで1音1音編集していくのは大変です。そこでオススメなのが、ヒューマナイズやランダマイズ(DAWソフトによって呼び方が違います)機能。その名の通り、音のタイミングやベロシティ−に人間が叩いたかのようなランダム性を与えることができるので、微妙な揺れを簡単に作り出すことができます。どのくらいの範囲でズラすのかを指定できると思うので、結果を聴きながら微調整してみてください。パッと聴いてもズレているのがわからない程度に抑えておいた方が良いでしょう。

スイングを利用する

ノリを出す上で欠かせないのがスイングです。DAWソフトには、指定したタイミングに補正してくれるクオンタイズ機能が備わっていますが、クオンタイズの中に「スイング」というパラメーターがあるのをご存じでしょうか。この機能を利用すれば、簡単にグルーヴィーなリズムを生み出すことができます。

▲スイング値を上げていくと、裏拍が3連符のタイミングに近づき“ハネた”状態に(矢印の部分)。グルーヴ感のあるパターンを簡単に作り出すことができる

スイングとは、簡単に言うと裏拍のノートを微妙なタイミングに揃えるための機能です。この「微妙なタイミングに」というのがミソで、具体的には3連符のタイミング…いわゆるハネのリズムを作り出すことができます。つまり、裏拍にある音が、クオンタイズで指定したグリッドの3連のタイミングに近づいていくというパラメーター。下段画面は16分音符でスイングをかけた例です。裏拍にある音のタイミングが遅れていることがわかります。

スイングはかかり具合を調整することができるので、どのくらい強くかけるかによってノリをコントロールすることができます。あまり強くかけすぎるとパターン自体が変わってしまうので、音を聴きながら丁度良い位置を探してみてください。

また、ほとんどのDAWソフトには、他のビートからノリを抜き出すことができる「グルーヴ・クオンタイズ機能」が備わっています。この機能を利用すれば、カッコ良いと感じたサンプリングCDや曲の一部からタイミングを抜き出し、自分で打ち込んだMIDIデータに適用させる…といった使い方ができます。抜き出したグルーヴ情報はドラム以外のパートに適用させることもできるので、グルーヴィーな楽曲を作りたい時には、かなり便利です。

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