ユニークなルックスとパフォーマンスで大きな話題になったZOOMのARQ。取り外し可能でカラフルなリング・コントローラーを使った、唯一無二のビート・メイクが行える新感覚のパフォーマンス・ツールです。そんなARQから、新モデル「ARQ AR-48」が登場!ARQならではのワークフローはそのままに、手に入れやすい価格を実現。詳しく見ていきましょう。
新感覚パフォーマンス・ツール
一度目にしたら忘れないであろうユニークなビジュアルのAR-48。一方で、パッと見ただけでは何ができる機材なのかわかりにくいと思いますが、簡単に言うとシンセサイザーとループ型シーケンサーを備えたリング型のパフォーマンス・ツール。これ1台でビート・メイクとパフォーマンスを行うことができます。自宅での音楽制作やビート・メイクはもちろん、7色に光るリング・コントローラーは、ライブハウスやクラブでのパフォーマンスにピッタリ。コントローラーには加速度センサーが内蔵されているので、回転させたり揺するといったアクションでエフェクトをコントロールすることも可能。音と光、そして動きと視覚と聴覚をフル活用した、唯一無二のパフォーマンスが行えます。
AR-48は、音源や打ち込みを行うベース・ステーション(本体)とドラム・パッドなどの機能を持つリング・コントローラーの2パーツから構成されており、リング・コントローラーは着脱式。標準パッケージではUSBケーブルを使って接続しますが、オプションのBluetoothアダプタ「BTA-1」を使えば、ワイヤレス接続も可能です。
470種類以上の即戦力サウンド
AR-48のベース・ステーションは、用途ごとに4つのエリアに分かれています。左上に配置されているのが「サウンド・エリア」。その名の通り音色を選択したりエディットするためのセクションです。AR-48には、ドラム音色、パーカッションなど400種類を超えるPCM波形と、70種類以上のシンセサイザー用オシレーター波形を収録しています。これを16のパッドに割り当てて鳴らす(つまり16ボイス)ことができます。
ディスプレイには、選択中のパッドに割り当てられている音色やパラメーターが表示される仕組みです。ディスプレイ下の3つのダイヤルを使うことで、音色選択やエディットを行うことができます。驚いたのは、各ボイスごとに音色のフル・エディットができるということ。シンセでお馴染みのフィルターやADSRのエンベロープはもちろん、各種モジュレーションまで用意されているので、かなり細かい作り込みも可能です。エディット画面では、パッドの発光色や光り方も変更できるようになっています。
収録されている音色は、どれもクセがなくて使いやすいです。往年のサウンドだけでなく今風の作り込まれたハデなサウンドも網羅されているので、エディットしなくても十分に楽しめるでしょう。
また、内蔵音色だけでなく、オリジナルのサンプルを使うこともできます。外部サンプルの利用法は2つ。1つ目はSDカード上に保存されているWAV形式(最高24bit44.1kHz)のオーディオ・ファイルを取り込む方法。再生方法はパッドを叩いた時だけ再生する「ワンショット」、パッドを叩く度に再生/停止が切り替わる「トグル」、パッドを叩いている間だけ再生される「ゲート」の3タイプが選べます。
もう1つが「オーディオ・キャプチャー」を使う方法です。AR-48の音をリサンプリングしたり、ベース・ステーションのAUDIO INPUTに接続された外部機器の音声を本体に取り込むことができます。サンプリングした後で、波形を見ながら欲しい範囲をトリミングすることもできます。
いずれの場合も、1ファイルあたり最長6分(モノラルの場合は12分)という長尺が扱え、オシレーターの1つとして利用が可能です。愛用のドラム・サンプルを取り込んだり、自分の声や楽器の音を加工して使うなど自由自在です。
ノンストップなビート・メイク
右上はビートを組み立てるための「シーケンス・エリア」です。AR-48のシーケンサーには、16種類のインストゥルメントを1〜4小節の範囲で組み上げていく「パターン」と、パターンを組み合わせて演奏/パフォーマンスするための「ソング」という2つのモードが用意されています。
パターンの打ち込み方法はリアルタイム入力とステップ入力の2種類で、どちらも非常に簡単に使うことができます。リング・コントローラー部のパッドで演奏をそのまま記録するリアルタイム入力は、本体右下の「ロケート・エリア」の録音ボタンを押すだけでスタート。クリックに合わせてパッドを叩くことで、フレーズを打ち込むことができます。シンセやベースのように音階のある楽器の場合も、パッドを「SCALE」レイアウトに切り替えることで音階入力が可能です。
ステップ入力は、ベース・ステーションの外周に取り付けられた32個の「STEPキー」を使って打ち込みます。STEPキー1つが16分音符に相当しており、入力したいインストゥルメントが割り当てられたパッドを押しながら、STEPキーを点灯させると、そのタイミングで音が入力されるという仕組みです。もう一度ボタンを押して消灯させればOFFになります。
どちらの打ち込み方法も、ノンストップ…つまり「音楽を止めることなく行える」というのが魅力です。ビートを再生しながらステップ入力ができるのはもちろん、リアルタイム入力のスタート/ストップでもシーケンスを止める必要がないので、パフォーマンスの一環としてビート・メイクを取り入れる…という使い方も面白いでしょう。一般的なビート・マシンではステップが横に並ぶことがほとんどですが、円形のAR-48の方が圧倒的に時間軸を捉えやすいという印象を受けました。
また、シーケンス内にはインストゥルメントやエフェクトのパラメーターも「モーション・シーケンス」として記録ができるので、フィルターの開閉やフレーズの一部分だけエフェクトをかける…といった動きのあるパターンも簡単に作れます。
ソング・モードでは、作成したパターンをリング・コントローラーの16のパッドにアサイン。パッドでリアルタイムにパターンを変化させたり、再生順をシーケンサー上に記録して曲を構築していくことができます。
リング・コントローラー
ここで、リング・コントローラーも見ておきましょう。コントローラーには、LEDが埋め込まれた16個のドラムパッド(ベロシティーおよびアフタータッチ対応)、シーケンスの再生やインストゥルメントのソロ/ミュート、アルペジエーターやエフェクトのボタンが用意されています。単にリモート・コントローラーとして使えるだけでなく、このコントローラー自体が「楽器」として演奏できるような工夫が散りばめられているというのがポイントです。
何と言っても面白いのが、コントローラー内に内蔵された3軸の加速度センサーです。それぞれにインストゥルメントやエフェクトのパラメーターやアルペジエーターの速度をアサインすると、リング・コントローラーを振ったり傾けたり回転させる…といった動きに応じて音楽をコントロールすることができます。パッドを叩いたりつまみを回すのとは、ひと味違った、視覚的にも楽しめるパフォーマンスを行うことができるのです。
手に持って使う際、そのままでは意図せずパットを押してしまうという問題がありますが、それを防いでくれるのが「グリップ・エリア」という機能です。ボタンを押して、持つエリアを握るだけで、自動的にその範囲のパッドを無効化してくれます。
なお、リング・コントローラー自体をUSB-MIDIコントローラーとしてパソコンやiOSデバイスと連携することもできます。パッドやボタンにNote、CC、Program Changeなど自由にアサインできるので、DAWソフトやシンセ・アプリと組み合わせて使うのも良いでしょう。
AR-48を使って感じたのは、ビートメイクやパフォーマンスを徹底的に考え抜いた機能とインターフェイスになっていること。とにかくスマートで直感的に使えるようにデザインされているので、触っていくうちに「もっとこうしたい、ああしたい」という没入感に浸れます。価格的にもかなり手頃になりましたし、ビートメイカーだけでなくバンドマンの皆さんにもぜひ試して頂きたい製品です。
■主な仕様
●サウンド・エンジン:400種類以上のPCM波形と70種類のシンセ波形●同時発音数:最大16ボイス●マスター・エフェクト:16種類●タッチパッド:16(ベロシティカーブ4タイプ)●センサ:PAD用感圧センサ、3 軸加速度センサ●記録メディア:SDカード●入力:ステレオ・ミニ・ジャック●出力:標準フォーン・ジャック●外形寸法(D x W x H):259 x 257.6 x 63mm(ベース・ステーション)、280.2 x 278.8 x 29.7mm(リング・コントローラー)●重量:1,123g(ベース・ステーション)、416g(リング・コントローラー)
■販売価格
オープン(実勢価格:3万2,000円/税抜)
■お問い合わせ先
ズーム
メーカーの製品紹介ページ