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思い通りのサウンドをリスナーに届ける、直感型マスタリング・ツールの決定版

進化したモジュラー・システム

IK MultimediaのT-RackSは、1999年に最初のバージョンがリリースされて以降、そのサウンド・クオリティーの高さと手軽さで高い人気を誇ってきた定番ソフト。そんなT-RackSが5年振りにメジャー・アップデート! 発売を心待ちにしていた方も多いのではないでしょうか。

最新のT-RackS 5では、かなり大幅な変更と新機能が追加されていますが、まずはインターフェイスとサウンド・エンジンから見ていきましょう。T-RackSは最大16個までのエフェクト(プロセッサ)を自由に組み合わせて音作りができる、モジュラー・システムを採用したソフトですが、最新バージョンではインターフェイスが大幅に改良。画面自体の表示サイズを自由に変更できるので、使用しているディスプレイ環境に合わせて見やすいサイズに調整することができますし、使いたいプロセッサーもブラウザから直接ドラッグ&ドロップして設定が可能。画面下部のシグナル・チェイン上でプロセッサーをクリックすれば、画面上部にエディターが表示されるので、作業効率が飛躍的に向上しています。

また、画面の右側にはメーターも表示可能。T-RackSのメーターは見やすく、使い勝手も良いので愛用している方も多いと思いますが、メーター・モジュールも大幅に進化。今風の見やすいデザインになっただけでなく、VUメーターやM/Sメーター、そしてストリーミング配信で求められるLUFSラウドネス・メーターが追加。このメーターはT-RackS上だけでなく、プラグインとしてDAWソフトに直接インサートして使うこともできます。

DDP書き出しに対応

T-RackSは、スタンドアローン、プラグイン、シングル・プラグインの3つの使い方ができるのですが、スタンドアローン版ではDDPファイルの書き出しに対応し、フル機能のマスタリング・ソフトとして使えるようになったのも大きなニュースです。T-RackS上に直接複数の曲を取り込み、プロセッサーを使ってサウンド・メイク。その後、収録順に曲を並び替え、曲間やフェード設定、トラックIDやISRCコードを入力し、DDPイメージで書き出す。ネット配信が増えたと言っても、作品として音楽CDに残したりライブで販売するというケースは多いはず。これまで専用のマスタリング・ソフトで行っていた一連の作業がT-RackSだけで完結できるのは大きな魅力です。

曲間、フェード設定からDDPエクスポートまで、一連の作業をT-RackS内で完結できます

サウンド・エンジン自体も最大192kHz、32bitの浮動小数点演算に対応する新エンジンを搭載。ディザーも4種類用意されるほか、圧縮音源の再生時にクリッピングを発生させる原因であるインター・サンプル・ピークを抑えるDDMオプションに対応しているのも見逃せません。

T-RackSの魅力の1つが、多彩なプロセッサー。各プロセッサーはT-RackS上だけでなく、単体プラグインとしてDAWソフトのトラックに直接インサートして使うこともできるので、曲作りやミキシングの段階から活用することができます。

最も手軽な「T-RackS 5」はベーシックな9種類。ビンテージ・アウトボードのシミュレート・プロセッサーを含む22モジュールが収録される「T-RackS 5 Deluxe」、プロフェッショナル・グレードのマスタリングまでカバーする38モジュールで構成される「T-RackS 5 MAX」と、収録プロセッサーの数によって、3つのバンドル・パッケージが用意。いずれもここまで紹介してきたユーザー・インターフェイスやDDP書き出し機能などは共通になっているので、純粋に欲しいエフェクトによって選べばOK。モジュールはT-RackS Custom Shopで追加購入やデモ使用もできるので、必要に応じて買い足すことも可能です。

38種類のプロセッサーが使用可能。T-RackS上はもちろん、単体のプラグインとしてDAWソフトに直接インサートできるので、ミキシング用途にも最適です

どのモジュールも魅力的ではあるのですが、マスタリング用途として考えた時に特にオススメなのが「Master EQ 432」と「Stealth Limiter」というモジュール。Master EQ 432は、マスタリング・スタジオでも定番のSontec MES- 432CをモデリングしたEQプラグイン。非常にクリアで色付けなく、透き通るようなサウンドが魅力で、素材のキャラクターを保ったまま、欲しい帯域だけをしっかりとブーストしてくれます。

アナログ・モデリング系のEQは、細かい補正には向きませんが、独特のキャラクターを付加できるので、求めている音にハマると絶大な効果があります。

Stealth Limiterは、音量変化を最小限にガッツリ音圧を稼げるピーク・リミッター。こちらも透明感のあるサウンドが特徴で、インターサンプル・ピークもしっかりと抑え込んでくれます。

ブーストさせても音色変化の少ない製品を手に入れると、音圧に関する問題は一気に解決できます。

4つの新モジュールをチェック

T-RackS 5から新たに4つのモジュールも追加されています。

「Master Match」は、お手本にしたいリファレンスのファイルを3つまで取り込み、ボタン1つでその曲の周波数特性やラウドネスを解析。Matchボタンをクリックするだけで、解析した特性を自分の曲に反映できるという便利なプラグイン。こんな風に仕上げたい…という曲の特性を簡単にコピーできます。EQカーブは反映後に自由にエディットできるので、解析結果を元に質感を微調整すれば理想のサウンドに瞬時に近づけます。

「Dyna-Mu Vari-mu Compressor/Limiter」は、多くのミュージシャンやエンジニアを魅了するManleyのVariable-MU Limiter Compressorをモデリングしたコンプ/リミッター。真空管コンプ特有の押し出し感とオープンなサウンドが魅力で、これをマスターにインサートするだけでサウンドがギュっと引き締まります。実機同様、マスター・トラックだけでなく、ボーカルなど楽曲内でしっかりと聴かせたいパートやステムにインサートするのもオススメです。

「EQual」は、透明性と正確さを追求した10バンドのパラメトリック・イコライザー。画面上にリアルタイムに周波数アナライザーが表示されるので、周波数特性を見ながらピンポイントで処理するのに適しています。味付けの強いアナログ・モデリングも魅力的ですが、デジタルならではの高精度かつ高解像度で、キッチリ仕事をしてくれるEQが1つあると重宝します。マスタリングはもちろん、トラックにインサートする普段使いのEQとしても活用できるでしょう。

「ONE Mastering Processor」は、1モジュールでマスタリングを完結できるオール・イン・ワン・モジュール。EQやコンプ、リミッターに加えてアナログのハーモニック・エキサイターやエンハンサーまで含まれているのですが、パラメーター表記ではなく、プッシュやボディー、エアーなど、どのような効果があるのかが書かれているのも特徴。感覚的に使えるモジュールです。

各モジュールはミックスからマスタリングまでカバーできて、かつハイクオリティー。DAWユーザーなら持っておきたいプラグインです。


■販売価格

1万7,000円〜(税抜)

■お問い合わせ先

フックアップ(beatcloud.jp)

IK Multimediaオンラインスト

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