IK Multimedia / ARC System 2.5
- 2018/4/7
- 製品レビュー
- IK Multimedia, Vol.202, 製品レビュー
進化を続ける、音場補正ソフトウェアのスタンダード
スタジオ環境を一気に改善
自宅の制作環境で、スタジオのような完璧にコントロールされたモニター環境を構築するのは物理的に不可能。そんな常識を覆してくれるのがIK Multimediaの「ARC System 2.5」です。ARC Systemは、測定マイクと音場測定/解析ソフト、補正プラグインの3つを組み合わせることで、モニター環境が抱える問題を検出。理想的な音場に補正してくれるソリューションとして、2007年にデビュー。自宅のモニター環境に悩むクリエーターの必須アイテムとして愛され続けてきた製品です。
従来であれば高価な測定機材と深い専門知識が必要な音場補正ですが、ARC System 2.5の使い方は非常に簡単。指定された場所に測定マイクを設置し、スピーカーから再生された音をマイクで拾っていくだけです。測定は7〜最大16ポイントまで行い、測定が多くなるほど正確な補正が行えます。
測定が終わったら、DAWソフトの最終段(マスター・トラックの最後のスロットなど)に補正ソフトウェアをインサート。測定したプロファイルを読み込むことで、完璧な音場を作り上げてくれます。
MEMS microphone
ARC System 2.5の基本がわかったところで、少し詳しく見ていきましょう。測定用マイクロフォンには「MEMS microphone」を搭載。聞き慣れない言葉だと思いますが、マイクの機械的な動作や構造要素をマイクロ・チップに集約した最先端のマイクロフォンです。コンデンサー・マイクは、個体差や経年劣化によってどうしても周波数レスポンスが微妙にずれてしまうのですが、MEMSマイクの場合はこういったサウンド変化や温度や湿度による影響も受けにくいというメリットがあり、その周波数レスポンスはわずか±0.5dBに抑えられているということです。
音場測定の場合、ベースとなるマイクの性能が何より重要なので、これは見逃せません。ちなみに旧バージョンのユーザー向けに、MEMSマイクだけの単体販売(実勢価格:9,000円)も行われています。
クリアな音像。位相感もUP
気になる測定結果は、使用前/後を聴き比べてみると差は歴然です。補正後のサウンドはパッと聴くと迫力がなくなったように聴こえますが、これは音場の歪みがなくなったからです。全帯域がダイレクトに、かつ奥行き感も明確に判断できるようになります。ボリュームやEQをほんの少し変化させた時の違いまで聴き取れるので、確実にミックスに自信が持てるようになるでしょう。自宅のモニター環境では、200〜300Hz付近の処理が難しいケースが多いと思いますが、それも一発で改善されます。EQやフィルターで補正しているという感覚もなく、極めて自然なサウンドなので違和感なく作業ができることでしょう。
また、ARC System 2.5を入れることで、センターがキッチリと合うようになるのもポイントです。例えば、左右のスピーカーと壁との距離や置いてある機材の配置などによって生じる定位のブレも補正可能。ボーカルやキック、ベースがど真ん中から聴こえるのは気持ち良いですよ! 補正したサウンドを数分聴いてからOFFにすると、音に靄がかかったように聴こえます。これまで、この音で作業していたのか…と怖くなるほどです。
測定のコツと使いこなし
今回、いろいろな環境で複数回の測定テストを行ってみましたが、やはりポイントになるのは測定作業時のマイク位置です。比較的アバウトでもそれなりの効果を発揮してくれましたが、最良の結果を得るためにも、ここは時間をかけて取り組みたいところです。測定ポジションは製品の説明書に紹介されているので、これを拡大コピーして床に置きながらマイク位置を決めていくとわかりやすいと思います。
また、測定時にはスピーカーのボリュームを普段聴いているレベルにセットし、テスト音が鳴っている最中はできるだけマイクから離れ、音を出さないように気を付けることも重要。万全を期すのであれば、同じ測定を数回行って、その中で最もイイ感じに聴こえるプロファイルを使うと良いでしょう。補正プラグイン上では、EQで微調整したりスモール・スピーカーなどのサウンド特性を再現することも可能です。
得られる効果を考えると、非常にコスト・パフォーマンスの高い製品です。
■販売価格
実勢価格:2万6,500円前後、クロスグレード版:2万円前後
■お問い合わせ先
IK Multimedia
メーカーの製品紹介ページ