Lauten Audio / SERIES BLACK
- 2017/5/20
- 製品レビュー
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ボーカルや楽器のレコーディングにおいて、録り音に最も影響を与えるのがマイクロフォンです。「どんなマイクを使うのかによって、その時点で仕上がりのクオリティーが決まってしまう」と言っても過言ではありません。今回、紹介するLauten AudioのSERIES BLACKマイクロフォンはプロフェッショナル・クオリティーのサウンドを驚きの価格で実現した、新しい製品群です。
すべてはマイクで決まる
今や1万円以内でコンデンサー・マイクを手に入れることができる時代なので、セルフ・レコーディングでコンデンサー・マイクを使っている人は少なくないと思います。確かにダイナミック・マイクと比べると、クリアで綺麗なサウンドが収録できると思いますが、「市販のCDのような存在感のあるサウンドにならない…」といった悩みを持っている人もいるのではないでしょうか。もちろんミキシングなどの音作りに関する技術の差もありますが、実は録り音の段階から差が付いているのです。
ボーカルや楽器の録り音をランク・アップさせようとする場合、まず最初にこだわるべき点は間違いなく「マイク」です。マイクは空気の振動である音を電気信号に変換するのが主な働き…つまり、音の入口にあたる部分であり、その後にどんなアウトボードやインターフェイス/コンバーターを通したとしても、一番最初に通ったマイクのクオリティーやサウンド・キャラクターが反映されることになります。
しっかりとしたマイクで収録しておかないと、その後に接続する機器の性能をフルに引き出すことはできないのです。特に楽曲の主役であるボーカルは「使うマイクによって、最終的な仕上がりのクオリティーが決まってしまう」とも言えます。
音楽的なサウンドを追求
マイクの世界では、いわゆる何十年も前に設計された「ビンテージ・マイク」が持てはやされる傾向にあります。そういったマイクは確かに素晴らしく、魅力的なサウンドを聴かせてくれますが、もちろん稀少で、とても高価であり、メンテナンスの手間も考えると、とても個人で購入できるようなものではありません。そんなこともあってか、市場ではビンテージ・マイクのサウンドをコピーしたモデルも数多く販売されています。
今回、紹介するLauten Audioが生まれたのは、ちょうど安価なコンデンサー・マイクが次々と発売されていた時代のこと。Brian Loudenslager氏を中心にグラミー賞エンジニア/プロデューサーのMike Terry氏と理論物理学者のCharles Chen Ph.D氏の3人によってスタートしました。彼らが求めているのはビンテージ・マイクを模倣するのではなく、インスピレーションをかき立てる、オリジナリティーに溢れたマイク。そのサウンドは瞬く間に本国アメリカを中心に評価され、著名アーティストやエンジニアにも愛用されています。
これまでプロフェッショナル向けのハイエンド・モデルを扱ってきたLauten Audioが満を持してスタートさせたのが、この「SERIES BLACK」です。本シリーズではホーム・レコーディングなどの個人ユースでも手に入れやすい価格ながら、ハイエンド・モデルに迫るポテンシャルを実現。今後、定番モデルになること間違いなしの、注目の新しいラインアップです。
スモール・ダイアフラムLA-120
▲スモール・ダイアフラムのLA-120には高級感溢れる木製の専用ケースが付属します
まず最初に紹介するのが、スモール・ダイアフラムのFETコンデンサー・マイク「SERIES BLACK LA-120」です。マイクは空気の振動を「ダイアフラム」と呼ばれる振動板で拾うことで電気信号を作り出しますが、小さなサイズのダイアフラムはキレが良く、高域の特性に優れるといった点から楽器の収録に最適。
アコースティック・ギターやバイオリンなどの弦楽器をはじめ、ドラムのシンバルやハイハットなどの金物に使われています。LA-120はアメリカ製で低ノイズ仕様の「JFETアンプ」を採用しているほか、50/150Hzの切り替えが可能なローカット・フィルターと10/15kHzの切り替えが可能なハイカット・フィルターを搭載。楽器用のマイクに求められる機能が網羅されています。
LA-120には、他にも驚くポイントがいくつもあります。まず、この価格でステレオ・ペアが揃うということ。アコースティック・ギターなどを録るのであれば1本でも足りるかもしれませんが、2本あればステレオ・レコーディングが行えるほか、フレット・ボードとボディーの2ヶ所にマイクを立ててミックスするなど、いろいろなアレンジが可能です。
▲LA-120はカプセル交換で、単一指向性と無指向性を使い分けることができます
2つ目のポイントは、カプセル交換によってカーディオイド/オムニ(無指向性)が切り替えられる点です。もちろん楽器の収録には単一指向性のマイクを使用するケースが多いと思いますが、アンビエンスやコーラスの収録に無指向性のマイクを使うのも良いほか、楽器の収録でも近接効果がないので、ちょっと違ったサウンドが欲しい場合に試してみると面白いでしょう。
3つ目のポイントは、高級感たっぷりの木製ケースが付いてくる点です。付属品一式を収納可能で、構造もしっかりとしており、とても満足感があります。
肝心のサウンドは「本当に、この価格で良いの?」と思ってしまうクオリティーです。アコースティック・ギターを録ってみると、ハリのあるサウンドはアコギのおいしい部分を忠実に捉えており、情報量も十分です。ハイまでしっかりと出つつも耳触りな部分がないので、気持ち良く聴けるサウンドなほか、録音後の音作りも思い通りに行えます。
また、ドラムのシンバル類にも好印象です。音源から距離があっても遠鳴り感やボケが少ないので、オーバーヘッドに立てるマイクとしても使い勝手が良いでしょう。マイク自体が非常に素直であり、鳴っているままをしっかりと収録してくれるので、使いやすい1本です。いわゆる「定番マイク」1本分の値段でステレオ・ペアが揃うので、楽器の収録が目的であれば、非常にオススメと言えます。
万能コンデンサー・マイクLA-220
次に紹介するのはラージ・ダイアフラム・FETコンデンサー・マイクのLA-220です。「FETコンデンサー・マイク」というのはマイク内部のアンプがFETということ。こう書くと特別そうに見えますが、現在、一般的にコンデンサー・マイクと呼んでいるものは、すべてFETコンデンサー・マイクです。
定価で2万5,000円(税抜)と入門モデル的な位置づけの製品であり、パッケージはシンプルで、付属品もショック・マウントのみ。そのショック・マウントもコスト重視の印象を受けるものの、マイク本体や肝心のサウンドは低価格帯のマイクとは一線を画しています。メーカーによると「この価格帯のマイクでは通常、採用しないような高品位なパーツを使用している」とのこと。マイクの内部を確認したわけではありませんが、音を聴く限りは十分に信頼できると思いました。なお、本体には120Hzのローカットと12kHzのハイカット・フィルターが搭載されています。
近年は低価格帯のマイクのクオリティーも上がってきていますが、やはり情報量が少なかったり、少しサウンドにクセがあるなど、物足りなさを感じるのが実際のところです。パッと聴いた感じはクリアで、音抜けが良い印象なのですが、オケに入れてみると他の楽器に埋もれてしまったり、反対に浮いてしまうことがあるなど、細かい調整が求められます。それに対して、LA-220は中低域がしっかりとした、無理のないサウンドという印象です。派手さはありませんが、どこかビンテージ感を彷彿させる、落ち着きのある上質なサウンドは多くの方が「使いやすい」と感じるのではないでしょうか。男性/女性ボーカルの違いやボーカリストの声質を問わない、使いやすいマイクと言えます。
もちろんボーカル以外の楽器に使用することも可能で、そういう意味では、ここで紹介する3本の中で最も万能なマイクです。マイキングによるサウンドの変化もわかりやすいので、初めてコンデンサー・マイクを手にする方にもオススメできます。
魅惑の真空管マイクLA-320
3本目はラージ・ダイアフラム・真空管コンデンサー・マイクのLA-320です。先のLA-220にはFET回路が用いられていましたが、真空管を使ったものが真空管コンデンサー・マイクです。いわゆる「名機」と呼ばれるビンテージ・マイクの多くが真空管マイクで、主流がFETに変わった現在でもハイエンド・モデルを中心に採用されており、「そんな真空管マイクが、この値段で手に入る…」というだけでワクワクする人もいるのではないでしょうか。Lauten Audioは真空管マイクで評価の高いブランドなので、同社が最も得意とする真空管マイクの最新モデルという意味でも期待が高まります。
まずは付属品から見ていきましょう。アルミ製のハード・ケースに本体とショック・マウント、電源ユニットと接続ケーブルの一通りがセットされています。コンデンサー・マイクは直接、マイク・プリアンプとXLRケーブルで接続し、プリアンプ側からファンタム電源を送って使用しますが、真空管マイクの場合は専用の電源ユニットで電源を供給するため、ファンタム電源は不要です。なお、ギター・アンプなどと同じで、真空管が温まり、安定するまでのウォーム・アップの時間が必要なので、使用する際は注意してください。
▲ラージ・ダイアフラムのLA-220とLA-320はボーカルにも最適です。どちらのモデルにもローカットとハイカット・スイッチが搭載されています
このように通常のコンデンサー・マイクに比べると多少、気を使う部分がありますが、それだけの価値があるのが真空管マイクです。真空管というと「温かみのあるサウンド」というイメージがあると思いますが、まさにLA-320はイメージ通りのウォームで、リッチなサウンドです。安価な真空管マイクのようなジリジリ感やレンジの狭さは一切なく、伸びやかなサウンドはボーカルにピッタリ。
ボーカリストの表情がそのまま音に変換されるようなイメージで、音の粒が大きく、立体的である点が特徴です。存在感と説得力のあるサウンドはどんなエフェクトでも作れない、真空管マイクならではのサウンドと言っても良いでしょう。真空管の至上主義や懐古主義ではなく、純粋に魅力的なサウンドです。真空管マイクとしては取り扱いも楽なタイプなので、既にFETコンデンサー・マイクを持っていて、真空管マイクに興味があるという人は、ぜひ試してみてください。
「出費は抑えたいけれど、失敗もしたくない」「ちゃんと信頼できるマイクが欲しい!」。そんな要望に応えてくれるのが、Lauten Audio SERIES BLACKの質実剛健なマイクロフォンです。
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メディア・インテグレーション MI 事業部
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