リアルなドラムの打ち込みテクニック – その5
- 2017/6/24
- レポート
- ドラム音源, リアルなドラムの打ち込みテクニック, 打ち込み
DAWソフトで曲作りを始めたばかりの頃は、とにかく打ち込んだり演奏を録音していくこと自体に楽しさを感じるはずです。しかし、慣れてくるともっとカッコ良くしたい! リアルに打ち込みたい! なんて完成度を高めたくなるのは自然な流れ。そんな時に注目したいのが、ドラム・トラック。
単にリズムを刻むだけでなく曲のジャンルや時代感、ノリに至るまでドラムが担う要素は非常に大きいパートです。ドラム・トラックを磨き上げることで、楽曲のクオリティーの底上げが行えるのです。そこで今月は、カッコ良くてリアルなドラム・トラックを作る、ちょっとしたテクニックを5回に渡って紹介していきます。(文:鈴木悠平)
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ドラム音源を使うメリット
ドラム音源を使う最大のメリットは、何と言っても専用音源ならではの圧倒的なクオリティーを秘めたサウンドでしょう。DAWソフトに最初から付いてくるドラム音源や汎用マルチ音源のドラム音色も悪くありませんが、やはり専用に作られている分、質、バリエーション共に専用音源の方が上と考えて間違いありません。
リアルなドラムを再現しようと思うと、生のドラムのいろいろな奏法や強さなど、膨大なサウンドをサンプリング(録音)する必要があります。例えば、ハイハットでも叩く強さで音色が変わるのはもちろん、叩く位置によってもサウンドには大きな差が生まれます。それを忠実に再現しようと思うと、どうしても膨大な量の音色ライブラリーが必要になってきます。どこまで細かく収録しているかは製品によって差はありますが、1つのドラム・キットに数百MB〜数GBものサンプルを使うようなケースも珍しくありません。
▲好きなキットを組み合わせて、オリジナルのキットを組み上げることができる。グラフィックもリアルで視覚的にも楽しめること間違いなし!
また、キットを自由に差し替えできることも面白い点です。本物のドラム・セット同様、スネアを好みのこのメーカーに差し替えて…という使い方もできます。製品によっては、サンプリングの元になったドラムのモデルやメーカー名が公開されていたり、キットを変えると画面上のデザインも変わったりとドラマーならずとも、視覚的に楽しめるのも魅力です。
本物を超える自由度!?
昨今のドラム音源は、スタジオで生ドラムを録音しているのとまったく同じ感覚で音作りが行えるのが一般的です。キックやスネアにそれぞれダイレクト・マイクを立てたり、オーバーヘッド・マイクやルーム・マイクでアンビエントや空気感を足す…といったレコーディングの手法が、そのままDAW上に再現することができます。
しかも、有名なレコーディング・スタジオで、一流スタジオで使われている高価な録音機器でプロのエンジニアが収録したサウンドですので、下手に自分たちでリハスタを借りて録るよりも良い音で録れるケースも…。
▲本物のレコーディングでは不可能な、かぶりの量を調整したりと自由度の高い音作りが行えるのもドラム音源ならでは
また、ドラムの録音時に避けることができないのが、ある楽器を狙って立てたマイクに、狙い以外のキットの音が入ってしまう「かぶり」の問題です。本物のレコーディングでは物理的に避けることができませんが、ドラム音源の場合は各マイクのかぶりの量を個別に調整できる場合もあります。音作りの面では本物のドラム・レコーディング以上の自由度があると言っても過言ではありません。
すぐに使えるプリセット
多くのドラム音源は音源内にミキサー機能を持っており、各マイクの音量バランスを整えたり、エフェクトを使って音を加工するといった、一連のサウンド・メイクを音源内で完結することができます。そして、キットの選定からミキサーでの音作りまでをまとめてプリセットしてくれているのもドラム音源の魅力。
プリセットを読み込めば、そのままCDで聴くようなサウンドがセットアップされるという手軽さは、何事にも変えられないメリットではないでしょうか。最近の製品は、どれもプリセットを切り替えながら微調整を行うだけで、十分満足できるクオリティーです。
もちろんキットの選定からチューニングなどを細かくカスタマイズしていくこともでき、ドラム音源上のミキサーをDAWソフトのミキサーにパラ・アウトしてお気に入りのプラグイン・エフェクトでさらに追い込んでいくという使い方もできるので、ドラムにうるさいユーザーも納得いくはずです。
打ち込み要らず?
そして、何よりも音源だけでなく、膨大な数のドラム・パターンが収録されているというのが購入を考える1番の理由でしょう。数百、数千というパターンが収録されているので、欲しいパターンが見つかるはずです。打ち込みの手間が省け、適当なパターンを鳴らしながら適当に楽器を弾いていくうちに曲のイメージができた!なんてケースも十分考えられます。このパターンはMIDIデータで、ドラム音源からDAWソフトのトラック上にそのままドラッグ&ドロップで取り込むことができます。
▲膨大なドラム・パターンを収録し、ドラッグ&ドロップだけでDAWソフトに取り込める音源も多い
頭のタイミングでシンバルを追加したい!とか、キメを入れたい! ここにスネアがもう1発欲しい!なんてフレーズをカスタマイズしたい場合にも、MIDIデータとしてピアノロールなどで簡単にエディットが可能です。もちろんここまでのページで紹介したようなベロシティ−やタイミングを微調整しなくてはいけないシーンも往々にしてありますが、その場合もゼロから自分で打ち込むよりもはるかにスピーディーに行えるのは説明するまでもないでしょう。
終わりに
DAWソフトを買ったら次に買うべきはドラム音源!と言っても言い過ぎではないほどに便利でクオリティーUPに欠かせないアイテム。DAWで曲作りをしているなら、ぜひとも手に入れていただきたいと思います。
また、製品によってサウンドの傾向や得意とするジャンルが違ったりするので、曲調に合わせてドラム音源も使い分けるようにすると、曲作りがもっと楽しくなるはずです。