リアルなドラムの打ち込みテクニック – その3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

DAWソフトで曲作りを始めたばかりの頃は、とにかく打ち込んだり演奏を録音していくこと自体に楽しさを感じるはずです。しかし、慣れてくるともっとカッコ良くしたい! リアルに打ち込みたい! なんて完成度を高めたくなるのは自然な流れ。そんな時に注目したいのが、ドラム・トラック。

単にリズムを刻むだけでなく曲のジャンルや時代感、ノリに至るまでドラムが担う要素は非常に大きいパートです。ドラム・トラックを磨き上げることで、楽曲のクオリティーの底上げが行えるのです。そこで今月は、カッコ良くてリアルなドラム・トラックを作る、ちょっとしたテクニックを5回に渡って紹介していきます。(文:鈴木悠平)

1回目の記事はコチラ
2回目の記事はコチラ

 

音色を調整する

ドラムの打ち込みテクというと、MIDIデータのエディット方法ばかりが取り上げられることが多いと思いますが、音源自体や音作りもリアルさを追求する上で重要な要素です。音…つまり、ドラム音源の場合はサンプルのリアルさだけでなく、ちょっとパラメーターを調整するだけでドラム・パートの完成度はグッと上がります。

複数のサンプルを使い分ける

本物のドラムは、叩く位置によってまったく違う音の鳴る楽器です。例えば、ハイハットはドラム・キットの中でも特に様々な表現ができるパーツ。構造的には2枚のシンバルを重ねているのですが、その2枚のシンバルの開き具合や叩く位置によって音色のニュアンスはまったく別モノに変わってきます。最近のドラム音源では、そういったサウンドのバリエーションまで収録しているものが多いので、それらを使い分けて打ち込むことでビックリするほど生々しい表現が可能です。

▲昨今のドラム音源はハイハットやスネア、シンバルそれぞれに細かいバリエーションが用意されている

ベロシティ−の調整では同じ音色を使い、裏拍を表拍より弱く打ち込みましたが、表と裏で叩く場所を変えることで、よりリアルな雰囲気を作り上げることができます。スネアも同様で、通常のヒットに加えて、オープン・リムなど、数種類を使い分けてみましょう。

エンベロープで歯切れの良いサウンドを

生ドラムのレコーディングでは響きを調整するため、頻繁にミュートが行われますが、これはドラム音源でも非常に有効なテクニックです。例えば、キックの余韻が長すぎる場合、どんなにベロシティ−やタイミングを調整してもモッタリして聴こえてしまうので、余計な余韻をカットするだけでキレが良くて、スピード感のあるビートを作ることができます。

ドラム音源の場合、ミュートそのものの機能ではありませんが、多くの場合ダンピングやボリューム・エンベロープというパラメーターでミュート同様の効果を作ることができます。場合によっては逆に余韻を延ばしてもOKで、同じキットでも少し調整するだけで、まったく違う印象の音に変化してくれます。コンプやエンベロープ・シェイパーでも似たような効果は作れますが、音源側にこのパラメーターがあるのであれば、そちらで作った方が簡単です。

▲ピッチやエンベロープを調整するだけでも、ドラム・トラックの聴こえ方は大きく変わる

ピッチを意識する

ドラム単体で聴くと大丈夫だけど、他の楽器と合わせて聴くとなんか浮いて聴こえる…。そんな時にはミキシング的な音作りの前にキットのチューニングを変更してみてください。これもドラムのレコーディングでは緻密に調整される作業で、単純に求めるサウンドによって変化させるというだけでなく、キット全体のバランスを整えるイメージです。特にキックとスネア、スネアやタムといった皮モノのピッチ感を調整するだけで、フレーズの繋がりが良くなったような感覚を味わえるはずです。

とはいえ、音源の場合は実際のチューニングを変えているわけではなく、ピッチ・シフターでピッチを上下させているのであり、あまり大きく変化させてしまうと違和感が出てしまうので、注意してください。

関連記事

ページ上部へ戻る