Positive Grid / BIAS Head – 後編 –
- 2017/7/8
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アプリやパソコン用のアンプ・モデリング・プラグインとして絶大な人気を誇る、Positive GridのBIAS AMP。群を抜くサウンド・クオリティーとカスタマイズ性の高さから、自宅での練習やレコーディングに活用している方も多いと思います。そんなBIAS AMPがついにリアルなアンプになりました。今回はBIAS Headを使うと何が行えて、どのように活用できるのかを詳しく見ていきましょう。
レコーディングとライブをつなぐ
既にアプリやパソコン用のプラグインとして販売されているBIAS AMPはリアルなアンプの挙動はもちろん、真空管やプリアンプ、トランスといったアンプを構成する各パーツを自分好みにカスタマイズし、自分だけのサウンドを追求できる唯一無二のギター・システムです。このBIAS Headは単にソフトウェアをハードウェア化したというだけでなく、既存のアプリやプラグインと連携させることで真価を発揮する、世界で初めてとなるクロス・プラットフォーム・ギター・アンプとなっています。
BIAS HeadはパソコンとUSB接続、もしくは内蔵のBluetoothでiOSデバイスとワイヤレス接続することで、パソコンやiOSデバイス上の「BIAS AMP」から完全なコントロールが可能になります。なお、BIAS HeadにはMac/PCで使える「BIAS AMP Professional Desktop」がバンドルされているので、すぐに連携することができます。
BIAS Headを接続すると、BIAS AMPは自動的に「BIAS HEAD REMOTE MODE」に切り替わり、エディターとして操作することができます。この場合、あくまでもソフトはエディターとして動作し、実際の音声処理はBIAS Head本体上で行われる仕組みなので、オーディオ・インターフェイスなどは不要です。しかも、ただBIAS Headのパラメーターを調節できるというだけでなく、BIAS AMPで作ったサウンドをそのままBIAS Headに転送可能な点も大きなポイントです。
最近では、リアンプなどの利便性やソフトウェアのサウンド・クオリティーが格段に向上したこともあり、プラグインを使ってレコーディングするケースが増えていますが、そこで困るのが「スタジオやライブハウスでは再現できない」という点です。ギタリストとしては「レコーディングで使った、その楽曲に合わせて作り込んだサウンドをライブでも再現したい」と考えるのが普通でしょう。しかし、本番のステージにパソコンを持ち込むのにはリスキーなものがあるので、「ライブはライブ」と割り切って、適当なアンプをレンタルして弾いている、というケースが多いと思います。
そんな悩みもBIAS Headがあれば、一発で解決します。レコーディングで使ったBIAS AMP Desktopの設定をすべてBIAS Headにそのまま転送し、スタンドアロンのギター・アンプとしてステージに持ち出すことができるのです。なお、BIAS Headにつまみとして用意されているパラメーターはBIAS AMPから大幅に厳選されていますが、つまみがないだけでパラメーター自体は存在しており、プラグインのサウンドを完全に再現できます。
▲iOSデバイス、パソコン、アンプでまったく同じサウンドを共有できる!BIASのクロス・プラットフォーム・ギター・システムは「いつでも同じ音で演奏したい!」というギタリストの希望を叶えてくれます
アンプ・シミュレーターじゃない!
このようにiOS、パソコン、ハードウェア(BIAS Head)とプラット・フォームが変わっても完全に互換性が保たれ、どこでも同じ音色でプレイできるのが、BIAS Headの魅力と言えます。例えば、練習の時にiOSのBIAS AMPで作ったサウンドを、パソコン上のBIAS AMPで作り込んでレコーディング。そのサウンドをBIAS Headに転送してライブで演奏する、といった夢のような環境を作ることができるのです。
もちろん既存のハードウェア・アンプ・シミュレーターでも同じことは可能です。しかし、BIAS Headはあくまでもアンプ。アンプ・シミュレーターのようにレンタルしたアンプの特性を気にすることも、音色を再現するためにラインで出すことも一切不要なのです。いつも通りスピーカー・キャビネットにケーブルをつなぐだけで、いつでもどこでも同じサウンドを再現することができます。
アンプをデザインする
BIAS Headの基本となるコンセプトは理解していただけたと思いますので、ここではBIASシリーズ最大の魅力であるアンプ・カスタマイズの部分を見ていきましょう。先述の通り、BIAS HeadにはBIAS AMPの膨大なパラメーターの中から特に音の変化が大きいものや使用頻度の高いものが厳選してつまみに割り当てられています。基本的な音作りはBIAS Head本体だけでも行えますが、BIASシリーズならではのカスタマイズ性を追求するのであれば、iOSアプリかプラグインのBIAS AMPと組み合わせて使うことになります。ここでは、パソコン上のBIAS AMPを例に代表的なセクションを紹介していきますが、iOS版でも同じように扱うことができます。
まずは基本となる「アンプ・タイプ」です。BIAS Headにはあらかじめ5カテゴリー x 5バリエーションの計25種類のアンプ・タイプがプリセットされていますが、BIAS AMPにはギターだけでなく、ベース・モデルを含む計36種類のプリセット・モデルが収録。そのまま入れ替えるのも良いほか、パラメーターをカスタマイズしたオリジナル・アンプとして転送することも可能です。
プラグインを起動して、まずはじめに表示される「custom panel」は一般的なギター・アンプに配置されているコントロール類が並ぶベーシックな画面です。まずはこのパラメーターを調節して、基本となるトーンを作っていきます。ちなみに、サウンドには影響しませんが、アンプ部に書かれている名前やパネルの色、つまみのデザインなどもカスタマイズ可能で、視覚的にも遊ぶことができます。
▲まずはモデル・プリセットをベースにカスタマイズしてみましょう
「preamp」ではプリアンプ・セクションのカスタマイズを行い、使用する真空管のタイプやBIASといったサウンドに大きな影響を与える部分を調整します。例えば、ゲインを下げて、その分、チューブ・ステージや真空管のDISTORTIONで歪みを足す…など、どこで歪ませるのかによって、サウンド・キャラクターはまったく異なるので、操作がとても楽しいセクションです。
▲プリアンプ・セクションで基本となるサウンド・キャラクターを決定します
「power amp」セクションでは、パワーアンプで使う真空管や歪みの量などを調節することができます。preampが基本となるサウンドをコントロールするとしたら、power ampでは真空管らしい粘り気や弾き心地を調節するようなイメージです。また、「cab」セクションでは、アンプに組み合わせて使うキャビネットやマイク・モデル、マイキングなどを指定することができます。
▲パワーアンプ・セクションでサウンドのコシや弾き心地を調節します
このように、非常にマニアックなパラメーターまで調節できるのですが、反対に最初からこの膨大なパラメーターを見てしまうと、訳がわからなくなってしまいがちと言えます。そこでオススメしたいのが、まずはBIAS Headで基本となる音を作ってから、BIAS AMPの画面で微調整する方法です。BIAS Head本体のつまみを操作すれば、その変更がリアルタイムでパソコンの画面に反映されるので、画面をマウスで操作するよりもパラメーターの意味を考えることなく、直感的に音作りが行えます。
▲カスタマイズしたオリジナル・アンプはBIAS Headに転送可能
カスタマイズが終わったら、作った音をプリセットとして保存しましょう。この時にメニューから「Save to Head」を選択すれば、BIAS Headのアンプ・モデルとして保存することができます。
アンプのサウンドを取り込める
BIASシリーズはそれぞれのパラメーターを調節することで、無限とも言えるサウンドを生み出すことができますが、既に実際のアンプでお気に入りの設定がある場合、そのアンプへ完全に似せた音を作るのは非常に大変なものがあります。そこで便利なのが、BIAS AMP Professionalのみに搭載されている「アンプ・マッチ」機能です。これはアンプにマイクを立てた音をBIAS AMPに取り込んで、解析。その特性を自分が作った音に反映させる、というアンプのクローンを作る機能で、これが非常に優秀。アンプ・マッチを行う前に、ある程度、似た音にする必要はありますが、パラメーターだけでは追い込めない細かなトーンまでしっかりと似せることができます。
アンプ・マッチを作成するためにはBIAS AMP Professionalが必要になりますが、キャプチャーしたサウンドはBIAS Headにそのまま取り込むことができます。なお、アンプ・マッチを行うためにはキャプチャーしたいアンプの他にオーディオ・インターフェイスやマイクを用意しますが、作業自体は非常に簡単なので、ぜひリハーサル・スタジオなどで挑戦してみてください。
▲実際のアンプのトーンを取り込むことで、お気に入りのアンプ・サウンドを再現するトーン・マッチは、ぜひ活用したい機能です
BIAS AMPではオリジナルの音色を公開したり、世界中のユーザーや著名ギタリストが作った音色を無償でダウンロードできる「Tone Cloud」というサービスを展開中。これは、いわば何百、何千という数のギター・アンプを手に入れたというのと同義と言えます。まさに「次世代アンプ」と呼ぶのに相応しいギター・アンプではないでしょうか。
■主な仕様
●パワーアンプ:600Watts RMS@8 Ohms、300Watts@16 Ohms●入力端子:標準フォーン(Hi-Z)●エフェクト・ループ:1系統(標準TRS)●ヘッドフォン:1系統(標準TRS)●ダイレクト・アウトプット:XLR(バランス)、標準フォーン(アンバランス)●フット・スイッチ:2●MIDI:IN/OUT/THRU●USB:1●Bluetooth:BIAS iPad、BIAS iPhone接続●外形寸法(W x H x D):190 × 314 × 153mm●重量:7.7kg
■販売価格
オープン(実勢価格:17万8,000円/税込)
■お問い合わせ先
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