Tracktion / Waveform Vol.1

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DAWソフトに求めるものって何でしょうか。ユーザーが多くて定番とされていること。機能が多いこと。プラグインがたくさん付いていること。もちろん正解でも間違いでもありませんが、どれも本質とは違うのでは…と思ってしまうのは私だけでしょうか。DAWソフトを使う一番の目的は「曲を作ったりレコーディングする」ことのはず。その本質を追究し、既成観念に囚われることなくストレスのない音楽制作をサポートする新感覚DAWソフトが、TracktionのWaveformです。

クリエイティブDAWが登場

DAWソフトの本質は曲作りやレコーディングのためのツールです。確かに、多機能であることは多くのユーザーに対応するために必要かも知れません。しかし、有名DAW(あえて、こう呼びます)に搭載されている機能の内、普段使っているものは数パーセントにも満たないのではないでしょうか。一度も使ったことのない機能…もっと言えば、存在すら知らない機能もあるはずです。曲作りに本当に必要な機能だけに絞ることで、操作をシンプルにし、音楽に集中する。ここに主眼をおいているのがTracktionのWaveformというソフトなのです。

その名前を聞いて、既視感を感じた人がいるかもしれませんが、実はまったく新しいソフトというわけではありません。元々はMackieがTracktionという名前で取り扱っていたソフトで、2000年代には国内外で多くのファンを持っていました。その後、ブランド名がTracktionに変わって復活。今年のNAMM Showではソフト名を「Waveform」と変えて、この度日本にも上陸したというわけです。

どうしてこのような話をしたかと言うと、Tracktion時代から一般的なDAWソフトの「常識」に囚われることなく、使いやすさを追求したユーザー・インターフェイスが高い評価を得ていたからです。それはWaveformになっても引き継がれています。DAWソフトが多機能化し、複雑化した今だからこそ、ある意味、新鮮で魅力的に感じることでしょう。

▲画面切り替えや複雑なメニュー構造を排し、感覚的に使えるのがWaveformの魅力

とにかくわかりやすい

実際のソフトは触ってみてまず感じるのが、わかりやすさです。今でさえ当たり前になったシングル・ウィンドウはもちろん、DAWに限らずパソコンのソフトで当たり前のメニュー構造はなく、選択した項目に応じた編集メニューや機能がページ下部に表示されるというもの。トラックやクリップを選んだ段階で、できることが画面に表示されるので、メニューのリストから項目を探して…という作業は一切不要です。

驚いたのがオーディオ・トラックやMIDIトラックという概念がないこと。従来のDAWソフトのユーザーには意味がわからないと思いますが、そのトラックにオーディオ入力を設定すればオーディオ・トラックに、MIDI入力ポートを設定すればMIDIトラックとして動作します。

各部分の詳しい操作方法などは、次回以降で詳しく紹介していきますが、目に見えているまま。合理的というか、とにかく感覚で使えるのです。

3つのグレード

Waveformには、3つのグレードが用意されています。ほかのソフトでよくあるような機能が限定されることはなく、基本機能は共通。違いは収録されるプラグインのみとなっています。

もっともシンプルな「Waveform」でもMelodyne Essentialがバンドルされるという豪華っぷりですが、ミドル・グレードの「Waveform Plus」では16のプラグイン・エフェクトが、最上位の「Waveform Ultimate」ではBioTekというユニークなシンセがバンドルされます。

一通り揃うWaveform Plus以上がオススメですが、すでに他のソフトやプラグインを持っているという人はWaveformでも十分。右ページで紹介しますが、作曲支援機能が充実しているので、併用するというのもOKです。

▲マウスを当てれば、ポップアップでヘルプが表示されるのも便利。初めて触る人にも親切です

MTRのような操作感

DAWソフトに〜の人向け…というのは難しい部分もありますが、あえてバンドマン視点からWaveformを見ると、やはり一番のポイントはわかりやすさです。

例えば、音の流れる方向に注目してみると、音の入口を設定し(左側)、タイムライン上に録音(中央)。そして、録った音にエフェクトをかけたり、音量を調整する(右側)。まるでペダルボードと同じように考えることができます。音の流れはDAWソフトを使う上で非常にわかりにくい部分だと思いますが、ミキサーを意識せずに使えるのは大きいでしょう。

また、左ページでも触れましたが、画面やツールの切り替えもほぼ不要。録音した波形の編集も、ツールを持ち替えることなくマウス操作だけで行え、打ち込みをしたい場合も、MIDIトラックを大きくすればピアノロール画面が表示されます。操作が簡単という以上に、ギタリストやベーシスト的にはピックを置かずに各種編集が行えるというのが、ポイントになるでしょう。誤解を恐れずに言うと、機能の豊富さとわかりやすさと使いやすさを融合させた、まるでDAWソフトとレコーダー・アプリの中間のような、使い勝手です。

▲トラックにオーディオ入力を設定すればオーディオ・トラックに。MIDI入力を設定すればMIDIトラックに。オーディオやMIDIを意識する必要はありません

指一本でコードを演奏できる

曲を作る上で課題になるのが、自分が担当する以外のパートのアレンジや打ち込みではないでしょうか。Waveformの便利なプラグインの1つ、「MIDIコード・プレイヤー」を使うと、指1本でコード演奏が可能。キーボード・パートの打ち込みに便利です。使い方は簡単で、ルート音と、メジャーやマイナー、ディミニッシュといったコード・タイプを指定するだけ。コードの構成音や仕組みを知らなくても、響きが合うものを選んでいくだけでバッキングが打ち込めます。

その他にも、打ち込んだ単音をルート音に、自動でコードを生成することもできるので、メロディーとルート音だけ作れれば、後はWaveformに任せる。そんな使い方もOKです。

▲ルート音とコードの種類を指定するだけで、簡単にバッキングを作ることができる

コード進行やフレーズを提案してくれる

次に、キーボーディストやクリエイターにオススメの機能も見ていきましょう。

Waveformの大きな特徴が、作曲支援機能の「パターン・ジェネレーター」です。この機能を使うことで、自分では思いつかないような楽曲を作ることも可能です。MIDIのクリップを選んだ状態で画面下部からパターン・ジェネレーターのタブを開き「パターン・スタイル」の項目で、アルペジオ、コード、ベースライン、メロディーの4種類から作成したいフレーズの種類を選びます。中でも便利なのが、コードの項目。良く使われる定番のコード進行がプリセットされており、使いたいものを選ぶだけで、その進行に応じたデータが入力されるというもの。入力されたデータはMIDIデータですので、それをベースにカスタマイズするのも自由自在です。

▲コード進行のプリセットでアイディアを練ったり、次の進行を「提案」してくれる等、支援機能が充実しているのも特徴

パターンを自動生成するだけでなく、次はどんなコードが合うかを提案してくれたり、選んだコードが一発で打ち込めるので純粋にコードを打ち込むツールとして使うなど、コード知識の有無に関わらず活用できるようになっています。ここで作成したデータを書き出して使い、慣れたDAWで取り込んで…といった使い方も良いでしょう。

ラックで複雑な音作り

少しマニアックですが、Waveformを使う上でぜひ活用したいのが、インストゥルメントやプラグインを自由に組み合わせて使用可能な「ラック」機能です。

通常、プラグイン・インストゥルメントとエフェクトは直列に接続していきますが、ラックを使うことでエフェクトを並列につないだり、複数のインストゥルメントを組み合わせて1つのサウンドを作る、左右で違うエフェクトをかける…といった複雑なルーティングを簡単に作れる機能です。かなり面白いサウンドが作れます。

▲複数のインストゥルメントやエフェクトを自由にルーティング。複雑なサウンドを生み出すラック機能


■販売価格

1万2,800円〜(税込)

■お問い合わせ先

メディア・インテグレーション MI事業部
メーカーの製品紹介ページ

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