毎月のように新作プラグインを発表しているWaves。近年はElementsのようなシンセから、Grand Rhapsody PianoやClavinetのようなサンプル・ベースのアコースティック楽器まで、インストゥルメントのラインアップも増えてきました。そんなWavesの新作インストゥルメントは、まさかの(!?)スラップ・ベース音源。早速チェックしていきましょう。
スラップ・ベース音源
エレクトリック・ベースの基本奏法であるフィンガー、ピック、スラップの中で、打ち込みで表現する時に最も気を使うのがスラップです。1音だけならリアルに聴こえても、フレーズにすると、何かしっくりこない…と感じている人も多いと思います。サムピング、プリング、ハンマリング・オン/オフ、オープン・ストリング、レガート、デッド・ノート…など様々なテクニックを織り交ぜて演奏するスラップ奏法。これらがすべて解決できないと「嘘くさい」サウンドになってしまうわけです。
高品位なサウンドとシンプルな操作でお馴染みの、Wavesから登場した「Bass Slapper」は、そういった悩みを解決してくれるスラップ・ベース音源です。スラップは音色の1つとしてベース音源に収録されることはあっても、専用の音源としてはレア。イメージ通りのスラップ・フレーズを簡単なデータで再現できるようになっています。
幅広いサウンド・メイク
まずは、基本となるサウンドを生み出すトーン・セクションから見ていきましょう。Bass Slapperには、音色(パッチ)という概念はなく、画面内のパラメーターを調整することで音色バリエーションを作っていきます。プラグイン画面内のベース・グラフィックには4つのつまみが付いていますが、基本となるトーンを作るのが「VINTAGE / MODERN」つまみ。VINTAGE側にすると、温かみのあるビンテージ・パッシブ・サウンドが、反対にMODERN側にセットすると、アクティブ・ベースのような元気でパキッとしたサウンドを作ることができます。
「LOW BOOST」ではプリアンプのBassを上げた時のような効果です。「SUB BASS」は1オクターブ下の音を重ねることができます。また、リアルな演奏再現のコツは「RELEASE」の調整。シンセ的なリリース・タイムではなく、離弦時…つまりノート・オフ時にリリース・ノイズを加えるというパラメーター。速いフレーズの場合は、少し大げさにリリース・ノイズを足すことでソレっぽくなるので、曲調によって微調整するのがオススメです。
ベースのレコーディングでは、ベース・アンプとDIのサウンドをミックスして音作りするのが王道です。Bass Slapperでも「DIRECT」と「AMP」の音量調整が可能です。全体に通してかかる4バンドEQも効きが良いので、70年代のディスコ・サウンドからゴリゴリのメタル・サウンドまで網羅します。
ストンプ・ボックスはプリFXとして、コンプレッサー、オーバードライブ、ワウ、フェイザー、コーラス。ポストFXにディレイとリバーブを搭載。各エフェクターのパラメーターもコントロール可能で、オーソドックスなサウンドから、飛び道具系サウンドまで網羅しています。ペダルのON/OFFをオートメーション・データとして書き込むこともできます。
サムとプルを自由にコントロール
Bass Slapperの真価はここから。まず、従来のスラップ音色で大きな課題だったサムピングとプリングの鳴らし分けが簡単に再現できます。スラップは、親指で弦を叩くように演奏する「サムピング」と、人差し指や中指を弦の下に潜り込ませ、引っ張ることで弦を指板に当てる「プリング」という2つの動作を組み合わせて演奏します。つまり、同じ音でもフレーズや出したいサウンドによって、サムピングで弾く場合とプリングで弾く場合があるということです。これを考慮しなければ、演奏ニュアンスが出ないのは当然です。
Bass Slapperでは、グラフィック内のピックアップ間にあるスライダーを使うことで、どの範囲の弦をサム/プルで鳴らすのかを調整できる仕組みです。スライダーは右クリックすると、任意のMIDI.CCに割り当てることもできるので、フレーズによってリアルタイムに変化させる…という演奏の再現ができます。
弦ポジションも自由自在
また、これに関係してくるのが弦指定。「その音をどの弦で弾くか…」というプレイ・ポジションに関する設定です。例えば、同じ「A1(ラ)」の音でも、4弦5フレットのラと、3弦開放のラの音は別モノ。サムピングとプリングが絡むことの多い2-3弦の場合、「何弦で弾くのか」が極めて重要になってきます。
何フレットを基準にするかで11ポジションが用意されており、弾くフレーズによって適切な演奏ポジションが自動で選択されます。
1ポジションは、人間が無理なく演奏できる範囲である5フレットに分かれており、弾いたフレーズは自動的に適切な弦に割り当てて発音されます。同一弦の範囲の音をスラーで弾くと、ハンマリングやプリングが再現可能。非常にリアルなレガート・サウンドを手間なく再現できるようになっています。
ちなみに、演奏ポジションの選択は「ARTICULATION CONTROL」画面の中にある「POSITION」を「Manual」に設定することで、マニュアル操作もOK。この場合、どのポジションを選択するかはキー・スイッチやMIDI.CCで細かく設定することもできます。
キー・スイッチを活用する
最後に、Bass Slapperでリアルでかっこ良いスラップ・フレーズを打ち込むためのヒントをいくつか紹介していきます。
スラップのキモは、何と言っても歯切れの良いパーカッシブなサウンドです。そのためにベーシストは様々なミュートを行っているのですが、フレーズの各所に左手で弦をミュートして生み出すゴースト・ノートを加えるだけで、一気にかっこ良さが増します。
これを再現するのがデッド・ノートという機能です。発音中にこのキーをONにすることで、発音が止まってバシッというノイズが発生してキレの良いフレーズを作ることができます。頻繁に使うキーだと思うので、MIDIコントローラーや空いているキー・スイッチに割り当てておきましょう。デュレーションの短いノートで代用するよりも、簡単にスラップの雰囲気を出すことができます。
続いて、キー・スイッチの活用です。C0〜A#0の各鍵盤には、これまで紹介してきたような機能や、様々な演奏表現を割り当てることができるようになっています。例えば、特定の弦だけサムにしたり、演奏ポジションを切り替えたり、スライドもスピードやバリエーションが充実。フレーズと組み合わせることで、生っぽさを演出できることでしょう。
面倒な打ち込みやプログラミングの手間なく、リアルなスラップ・ベースを再現したい! そんなバンドマンにもピッタリなベース音源です。価格も手頃ですので、ぜひ、チェックしてみてください。
■動作環境
●Mac OS X 10.10.5-10.13.2●Windows 7SP1 /8.1 /10 各64bit●プラグインフォーマット: AU、VST2.4/3(32/64bit)、AAX Native64bit、スタンドアロン●CPU: Mac – i5 /i7/Xeon/、Windows – Core i3 /i5 /i7/Xeon/AMD Quad-Core●メモリ: 8GB以上●ディスプレイ解像度: 1024×768以上 (推奨1280×1024 / 1600×1024)●高速なインターネット環境(ダウンロード、オーサライズ時)
*Wavesソフトウェアはすべてダウンロード版となります。ディスクなどのメディアはございません。
■販売価格
8,964円(税別)
■お問い合わせ先
メディア・インテグレーション
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