絶対わかるストリングス音源 – ストリングスの基礎知識編 –

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音楽を作る上で最低限知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説していく「絶対わかるシリーズ」。今回のテーマは華やかなサウンドで楽曲を彩る「ストリングス」です。ポップスやロック、EDMまであらゆるジャンルで多用されるお馴染みのパートですが、どんな風に入れたらかっこ良いのか、アレンジやフレーズの組み立てに悩みを持っている方も少なくないのではないでしょうか。ストリングス・パートをかっこ良く聴かせるための基礎知識と、歌モノにも使えるオススメのストリングス音源6モデルを徹底紹介していきます。

本記事は「基礎知識編(本記事)」と「アレンジ編(2月12日公開)」の2部構成です。

4つの弦楽器

まずは、ストリングスという楽器に関する基礎知識から見ていきましょう。楽器のことを知らなくてもフレーズを作ることは不可能ではありませんが、やはり楽器の仕組みや音域といった基礎を知っているに越したことはありません。

マルチ音源でもお馴染みのストリングス音色。何となくひとまとめに考えてしまいがちですが、そもそも「ストリングス」という楽器はありません。バイオリン(Violin)、ビオラ(Viola)、チェロ(Cello)、コントラバス/ダブル・ベース(Contrabass/Double Bass)という4つの弦楽器(バイオリン属)を総称して、ストリングスと呼んでいます。コントラバスは、ジャンルによってアコースティック・ベースやアップライト・ベースなどと呼ばれる場合もあります。

細かいことかもしれませんが、これは非常に重要なポイントです。というのも、それぞれの楽器ごとに音色や音域が違うので、必然的に曲の中での役割が変わってくるのです。これを考慮しないで鳴らしてしまっては、リアルに聴こえないのは当然です。

どの楽器も、基本的にボディーに貼られた4本の弦を弓で擦ることで音を出しています。下図を見ればわかる通り、各楽器の大きさはこれだけ違い、大きくなるほど音が低くなっていきます。

また、参考として各楽器の音域も紹介します。音域に関しては奏者のスキルによっても若干変わってくるので、あくまで一例として考えてください。いわゆる「ストリングス音色」は、すべての音域で音が鳴るものが多いですが、リアル志向の音源では、楽器に準じた音域でしか音が鳴らないのが一般的。いずれにしても細かく暗記する必要はありませんが、何となくの音域感は把握しておいてください。

バイオリン属の4つの楽器のサイズと音域。ボディーが大きくなるにつれて、音域も低くなっていきます。ストリングスという範囲で見ると、かなり広い音域をカバーしているのがわかります

覚えておきたい基本奏法

弦を弓で擦って音を出すストリングス楽器は、ギターやベースと同じように様々な奏法が存在しています。ストリングス音源の場合、これらの奏法を「アーティキュレーション」として収録し、キー・スイッチ(※)で切り替えながら打ち込んでいきます。あまり馴染みのない奏法が多いと思いますので、主要なものを見ていきましょう。なお、各奏法ごとのサウンドは、動画で紹介していますので、記事と合わせてチェックしてください。

弓による奏法

まずは、弓使いによる奏法です。ちなみに弓の動きを「ボウイング」と呼び、弓の根元から先端に向かって弾くことを「ダウン・ボウ」、反対に上げて弾くことを「アップ・ボウ」と呼びます。アップ/ダウン・ボウの鳴らし分けができる音源も存在しています。

サスティーン(SUSTAIN)

厳密に言うと奏法ではありませんが、ストリングス音源の最もベーシックなロング・ノートのサウンドです。

レガート(Legato)

音と音を滑らかにつなげて演奏するロング・ノートの基本奏法で、スラー(Slur)とも呼ばれます。ストリングスの場合は、レガートで指定した音をひと弓で演奏するということ。もしフレーズが長くてひと弓では足りずに弓を返す場合にも、できるだけ滑らかにつなげて演奏します。音源によっては、弾くフレーズに応じて部分的にポルタメントが入る場合もあります。

デタシェ(Detache)

1音ごとにアップ・ボウ/ダウン・ボウを交互に演奏していく奏法で、ギターで言うところのオルタネイト・ピッキングに相当します。アタックのハッキリとしたサウンドが欲しい場合に使用します。

スタッカート(Staccato)

バンド系の楽器でもお馴染みの、1音1音を歯切れ良く弾く奏法。ストリングスの場合は、弓を持つ右手の手首の動きを利用して、弓を浮かさないように半分の音価の長さで演奏します。

スピッカート(Spiccato)

弓は、木の棒に毛が張られているため、“しなり”が生じます。そのしなりを活かし、弦の上で弓を跳ねさせるように弾くのがスピッカートです。結果的に、スタッカートのように余韻の短い音を出すことができます。

記譜はスタッカートと同じですが、弓を跳ねさせるスピッカートは、弓を弦に付けたまま演奏するスタッカートに比べて弦の余韻を残すことができるのが特長です。軽快なサウンドは、速いフレーズとの相性抜群です。

トレモロ(Tremolo)

速い速度で、音を小刻みに演奏するお馴染みの奏法がトレモロ。ストリングスでは、指でトレモロさせる「フィンガード・トレモロ」と、弓を使った「ボウド・トレモロ」の2種類が存

在しています。一般的にトレモロと言われたらボウド・トレモロと考えても良いでしょう。どの位細かく刻むかは、音符に書かれた斜線の数で表現します。

指による奏法

続いて、指の使い方に関する奏法を見ていきましょう。

ピチカート(Pizzicato)

指の奏法と言えば、多くの方がまずはコレを思い浮かべるでしょう。弦を弓ではなく、指で弾いて音を出すのがピチカートです。楽譜では音符の上にPizz.と表記し、Arco.と書かれたら再び弓弾きに戻します。

多くの方にお馴染みのピチカート。右手の指で弦を弾くのが一般的ですが、左手で弾く場合もあります。また弦を指板に弾き付ける、バチッというアタックのハッキリとしたバルトーク・ピチカートというバリエーションもあります。これは余談ですが、名前を見てわかる通り、ハンガリーの作曲家、バルトークが多用したことが、その由来になっています。

グリッサンド(Glissando)

指板の上を滑らせることで、2つの音を滑らかにつなぐのがグリッサンドです。ギターやベースの場合は、どの音まで滑らせるかが決まっていないケースが多いのですが、ストリングス楽器の場合は2つの音間にあるすべての音を均等に鳴らしながらスライドさせるのが基本です。

ポルタメント(Portamento)

グリッサンドが2音間の音を滑らかにつなぐのに対し、表現したいニュアンスによって指の滑らせ方を比較的自由に決められるのがポルタメントです。どちらかというと、着地点となる音にどのようにつなげるか…という感覚で使われることが多いと言えます。

トリル(Trill)

2つの音を交互に鳴らして演奏するのがトリルです。基準となる音に対して二度上の音を鳴らしますが、その時に長二度を使う場合と短二度を使う場合の2つのバリエーションが存在しています。

ハーモニクス(Harmonics)

ギターなどと同じく、弦の上に軽く触れて演奏することで、基音ではなく倍音を鳴らすのがハーモニクス。開放弦上で鳴らす「自然ハーモニクス」と、基音を鳴らした後で、他の指で弦に触れて倍音を作る「人工ハーモニクス」の2種類が存在しています。楽譜上は、音符の上に○を表記します。

このほかにも、ボウイングの位置を変えて音色のバリエーションを変えるスル・タスト(Sul Tast)やスル・ポンティチェロ(Sul Ponticello)。弓をひっくり返して木の部分で弦を弾くコル・レーニョ(Col Legno)や、弱音器を付けるコン・ソルディーノ(Con Sordino)という変わった奏法も存在しています。

こだわった音源には、これ以外にもエフェクティブな特殊奏法を収録しているものもありますが、まずはこのあたりを覚えて使い分けることができれば、十分です。実際に音源でアーティキュレーションを切り替えながら、サウンドの変化を確認してみてください。

実は重要な楽器編成

ストリングスはバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスという4つで構成されますが、バイオリンのパートは第1(1st)バイオリン、第2(2nd)バイオリンの2つのパートに分けて使うケースがほとんどです。

この5つのパートを、それぞれ何人のプレイヤーが演奏するかによって、サウンドの印象が大きく変わってきます。編成に「コレ」という決まりはありませんが、例えば、オーケストラでは、20・18・16・12・10(※それぞれのパートの人数)といった巨大な編成が組まれることもあります。

ポピュラーの場合では、音域がベースと被るという理由でコントラバスを省略するケースがほとんどです。包み込むような豪華なサウンドが求められるシーンでは6・6・4・4。シーンとして一番多いのは4・4・2・2といった編成でしょうか。ストリングスらしい広がり感がありながらも、キレのあるシャープなサウンドはバランスが良く使い勝手が良いでしょう。この応用として4・2・2・1なんて編成もオススメです。また、各楽器1人ずつの編成である「弦楽四重奏(カルテット)」という言葉も、聞き覚えがあると思います。場合によっては、バイオリンだけソロで入っている…なんて楽曲もあるかもしれませんね。

編成が重要である理由は、欲しいサウンドによって選ぶべきストリングス音源が変わってくるからです。オーケストラ系の製品であれば大編成が中心になるので、小規模編成の質感を再現するのは難しく、また逆もしかり。生楽器であれば、同じフレーズを複数回演奏する…というテクニックも使えますが、音源(打ち込み)の場合は、同じ音を重ねても広がりを演出することは難しいので、素直に欲しい編成のライブラリーを購入するのが良いでしょう。

音源によってはスペックで示されている編成と、聴感上の人数感が必ずしもイコールになるわけでもないので、サウンドを聴いて判断することが大切です。

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