この曲を弾きたい! と思った時に、コード進行の耳コピで苦労した…そんな経験が誰にでもあるはずです。耳コピにはある程度の慣れとコードの知識が必要不可欠ですから、楽譜がない曲だと結構面倒ですよね。そんな方に朗報! ヤマハが無料配信する音楽再生アプリ「mysoundプレーヤー」が先日、大幅にバージョンアップ。なんとコードと歌詞を1画面で表示する機能が追加されたのです。実際の使用感と共に、コード解析の仕組みや開発ストーリーについて担当者の方にお話を伺ってきました。

mysoundプレーヤー とは?

mysound(http://mysound.jp) は、ヤマハが運営している音楽配信サービスです。スマートフォンでサイトにアクセスすることで、ハイレゾ音源を含む200万曲以上の中から好きな楽曲を1曲単位でダウンロードできます。楽曲はポイントを購入し、そのポイントを使って好きな楽曲を購入する月額コース(324 円〜/月)の他、1 曲単位で購入することも可能。そして、mysoundと連動して利用できる音楽再生アプリ「mysoundプレーヤー」(iOS / Andorid対応)を提供しており、再生した楽曲と連動して歌詞を表示したり、再生回数に応じてアプリが新たな楽曲を次々と紹介する機能を提供しておりました。

コードと歌詞を表示できる

これだけなら、よくある音楽配信サービスですが、先日、アプリが大幅なバージョンアップを果たし、楽器ユーザー必須とも言える便利な機能を搭載したのです。それが、コード表示機能です。

楽曲を読み込んでプレーヤー画面右下の「コード」アイコンをタップすれば、自動的に楽曲を解析してコードを表示してくれます。解析にかかる時間はわずか数十秒程度と非常に高速で、解析結果は保存されるので、2 回目以降は待ち時間も不要です。気になる解析精度も十分実用レベルです。

「コード」アイコンをタップすると、自動的にコード解析がスタート!

また同じ画面上に歌詞を表示することも可能です。曲を再生すると、曲の進行に合わせて自動的にスクロール表示されるほか、歌詞をダブルタップして任意の箇所から再生することができます。

購入した曲以外でもOK

そして驚くべきことに、これらの機能はすべて「無料」。mysoundプレーヤーは、App Store(iOS)もしくはGoogle Play(Android) から無料でダウンロードが可能。しかも、コード解析や歌詞表示はmysound で購入した曲でなくてもOK(コード解析はFLAC非対応)。つまりCD から取り込んだ曲や、別の配信サービスで購入した曲でもmysoundプレーヤーで開くだけで利用することができるのです。

弾き語り、曲作りにも活かせる

コード表示について、もう少し詳しく紹介します。画面下部には、対応するコードの押さえ方も表示可能。表示項目は「ギター」「ピアノ」「五線譜」の3種類で、ギターの場合はカポタストも設定することができます。もちろんコードチェンジのタイミングで自動的に表示が切り替わります。

また、曲のセクションも解析し、色分け表示ができるようになっているので、A メロ、B メロといった曲のセクションの構成を視覚的に判別することもできます。指定した範囲を繰り返し再生できるABリピート機能を組み合わせれば、サビの部分だけ集中的に練習したい…なんて時もバッチリです。

耳コピーに必須のABループ機能も搭載。特定の範囲を繰り返し再生しながら練習することができます

このような仕様はギターやピアノの弾き語り用途にピッタリですが、ヒット曲のコードをひたすら解析し、コード進行のパターンを参考にすれば、コードの勉強や曲作りにも活かせるはずです。

ギターやピアノのコードの押さえ方もリアルタイムに教えてくれますので、コードの勉強にもピッタリ。歌詞も同期して表示されます

純粋な音楽再生アプリとしても使いやすく、音楽をやっている人ならば持っていて絶対に損はない機能ですので、ぜひインストールしてみてください。


mysoundについて、技術的な背景を含めて教えていただいた、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、音楽配信部 配信システムグループ主任の兼松祐治氏

− 音楽配信サービスに、コード表示機能などをつけることになったいきさつを教えてください。

兼松:ヤマハの音楽配信サービスですから、楽器演奏を楽しんでいる方に喜んでいただけるようなサービスを展開できないか…という思いがありました。その中で「好きな曲のコードが表示できたら嬉しいよね!」というアイデアから、今回の新機能の開発がスタートしました。アプリ自体に解析機能が組み込まれているので、mysound で購入した曲はもちろん、CD から取り込んだ曲などお使いのスマートフォンのライブラリに入っている曲でも解析が可能です。

− アプリの中ではどのような解析が行われているのでしょうか?

兼松「拍や小節」、「コード」、「セクション」の3つの要素で分析/解析しています。

楽曲を読み込むと、まずは拍や小節を解析します。音楽というのは次々と音が鳴ってビートが生まれますが、音が鳴る箇所は音が大きくなりますので、波形の振幅変化を見ていくことで拍を取ることができます。さらに独自の検出技術を使うことで、ビートがはっきりしない箇所でも拍や小節を検出することができるのです。

次はコードの判定です。ここはかなり複雑な検出を行っていますので、わかりやすくご説明します。コード判定には、大きく「検出」と「比較」という2 つのプロセスが行われています。

まず検出ですが、曲の波形を周波数解析すると、どのようなピッチの要素が含まれているのかを知ることができます。例えばC メジャーなら、「構成音であるド、ミ、ソの要素が多く含まれている」なんて具合に、どんなピッチがどのような音量バランスで含まれているかを知ることができるわけです。

次に比較です。アプリの中には、コードを鳴らした時にどのようなパラメーター(ピッチ構成)になるのかがデータとして登録されています。これを検出したデータと比較し、構成が一番近いものを見つけることでコードを判定することができます。

最後にセクションの解析です。アプリでは、A メロ、B メロ、サビ…など各セクションをひと目で見分けがつくように色分けして表示することができます。この判定は、コード解析の情報を活用しています。

例えば1 コーラス目のAメロと2 コーラス目のA メロは、多くの場合コード進行が同じか、似た構成になっていますので、コードの共通部分や、音量が途切れるタイミングなどを総合的に判断してセクションを検出しています。

− コードの検出精度はどの程度なのでしょうか?

兼松弾き語りやシンプルな構成の楽曲であれば、かなりの精度が期待できますが、反対に倍音の多い…例えばハードロックのような歪んだサウンドが主体のジャンルでは、どうしても精度が下がってしまうのが現実です。とはいえ、8割がたは正しいコードが表示されると思っていただいて問題ないと思います。

私たちとしては決してコード検出の精度が完璧です、というつもりはないんです。完璧ではなくても、耳コピの際にガイドラインがあるとないのでは、コピーの難易度がまったく変わってきます。ゼロベースでコードを探っていくのは非常に大変な作業ですから、そんなときにmysoundプレーヤーのコード検出機能を参考にして欲しいです。

− 検出できるコードの種類を教えてください。

兼松:各ルートごとにセブンス・コードまでの各コードと、aug やdim、オン・コードも判定可能です。テンション・コードのような複雑な音の場合は、オン・コードとして表示してしまう場合もあります。

  歌詞が表示される仕組みを教えてください。

兼松:曲名やアーティスト名、曲の長さといった要素からマッチする歌詞をサーバーから表示させる仕組みです。そのため、コード解析と同じく自分のスマートフォンに入っている曲なら何でも歌詞を表示することができます。歌詞のデータベースもかなり充実していますので、いわゆる市販CD であれば、ほぼカバーできていると思います。

ちなみに、コード情報はスマホ内に記録されますが、歌詞に関しては毎回サーバー経由で表示していますので、表示するためにはネット環境が必須です。

− アプリ開発で苦労された点はありましたか?

兼松:コード検出のエンジン自体は、既に公開されているヤマハの「Chord Tracker」や「Mobile Music Sequencer」アプリなどで使われている技術です。しかし、それを単にアプリに入れるだけではマトモに動かず、アプリに応じた「つなぎ込み」という作業が必要になります。これが非常に難しかったです。ちゃんと動かなかったり、解析がうまくいかなかったり…など、開発には半年以上かかりました。この背景には、iOS とAndroid の両方で動かしたかったということもあります。元はiOS 用に作られたアプリでしたので、iOS は割とスムーズに進んだのですが、Android で動かすための調整には相当苦労させられました。

 iOS とAndroid では、計算速度がOS レベルで違うという問題もありました。当初は曲全体を一度で解析させるつもりだったのですが、Android だと解析するのに1 分弱かかってしまい、さすがにこんな時間は待ってられないよね、と。そのため、1曲を何セクションかに分けて逐次表示させる仕様になっています。また、解析精度も3 段階で切り替えられるようにしました。

− どんな方に使って欲しいと考えていますか?

兼松:すべての音楽を楽しまれている方ですね。曲を読み込めばすぐにコードが表示され、ギターやピアノでの押さえ方もわかりますので、スマートフォン1 台あれば弾き語りが楽しめます。これから楽器を始めたいという方にも、ぜひ挑戦して欲しいと思っています。音楽を「聴く」から「演奏する」きっかけになったら嬉しいです。

− 今後のバージョンアップの予定はありますか?

兼松:現段階では詳しくお話することはできませんが、やはり検出したコードの修正機能やテンポ・チェンジ/ピッチ・シフト機能などは必要だと思っています。また、コード表示に関しても現状のピアノ、ギター、五線譜だけでなくウクレレを追加したりと、できることはいろいろあると思っていますので、今後にも期待していただければと思います。


■mysoundプレーヤー

・スマートフォン用音楽再生アプリ
・iOS / Android対応
・価格:無料
・再生できるファイル形式: mp3、mp4、WAV、 AIFF、FLAC
※FLACについてはコード表示機能非対応です。

■お問い合わせ先

ヤマハミュージックエンタテインメントホールディング
mysound

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