世の中には膨大な数のインストゥルメントやエフェクト、サウンド素材が存在しています。しかし、自分だけのサウンドを作ろうと思うと大変。ツールよりも知識と経験が求められるカテゴリーでした。そんな中、映画やゲーム業界で注目を集めているのがKrotos社のツールです。Dehumaniser 2とSimple Monstersという2つのユニークなツールを紹介します。
サウンド・デザインに革命を
新しいサウンドを作り出したい…という欲求は、楽曲制作の現場だけのものではありません。特に斬新な表現が求められるのが映画やゲームのサウンド・チーム。楽曲制作の世界では考えられないようなユニークなアイデアでサウンドが作り出されており、昨今ではその独特の制作ノウハウが注目されてきています。
そんな新しいサウンドを求めるクリエイターたちから注目を集めているのが、スコットランドのエジンバラに本拠を持つKrotosというブランドの製品です。昨年11月に行われたInter BEEでも展示され、これまでのサウンド・デザインを根本的に変えてしまうような画期的な技術で、大きな話題になっていました。
モンスターの声を簡単に
Krotosの名を世界に轟かせたのが「Dehumaniser 2」というプラグイン。ひと言で説明すると、人間の声からモンスター・ボイスを作り出すことができる音声処理ツールです。「Avengers:Age of Ultron(2015年公開の映画)」、「The Jungle Book(2016年公開の映画)」、「Far Cry 4(ゲーム)」、「Doom(ゲーム)」といった、いずれも注目を集めた作品で、モンスター・ボイスを耳にしたことがある人も多いと思います。このサウンドを作っていたのがDehumaniser 2なのです!
インターフェイスは、一見複雑そうに見えるかもしれませんが、実は非常にシンプル。リング・モジュレーター、ピッチ・シフター、ノイズ・ジェネレーター、グラニュラー、サンプル・トリガー、フランジャー/コーラス、ディレイ・ピッチ・シフター、スクラビング・コンボリューション、スペクトラル・シフト、ボコーダーという10種類のエフェクトが用意されており、それらを組み合わせて使う「モジュラー」構成のツール。シンセを触ったことがある人であれば、違和感なく使えると思います。
各エフェクトは、同時に2種類まで使用できるので、最大で20エフェクトが組み合わせOK。さらに各エフェクト・モジュールのルーティングは自由に行えるので、例えば、グラニュラーを通った音と素の音をミックスして、ピッチ・シフターに送る…という設定も自由に行えます。
各エフェクトのパラメーターも当然エディット可能。画面下部に選択したエフェクトのパラメーターが表示される仕組みで、合計100を超えるパラメーターで複雑な音作りを行うことができます。
プリセットが秀逸
プリセットを試してみると、これが秀逸! モンスターやアニマル、エイリアンといったカテゴリーごとに100以上のプリセットが用意されており、どれを開いても「あ、聴いたことがある!」という音(声)。クリエイティブ系エフェクトだと、「これ、何に使うのかな?」というものが大部分を占めるケースも多いですが、Dehumaniser 2のプリセットは、そのままテレビから聴こえてきてもおかしくないクオリティー。ついつい全種類を試してしまいました。
そして、同時に「これは、自分では作れないな…」と思わせてくれるものばかりです。例えば、モンスター・ボイスは、映画やゲームで日常的に耳にする…そういう意味では「定番」のサウンドですが、実際に作ろうと思ったことがある人は多くないと思います。Dehumaniser 2で生み出される音は、よくあるボコーダーやボイス・チェンジャーとは一線を画すツールであることは、間違いありません。
中にはラジオ・ボイスやテレフォン・ボイスといったお馴染みのプリセットも用意されていますが、単にEQやフィルターで作った音よりもリアルに感じました。
モンスターを身近に
このDehumaniser 2の技術とユニークな点をギュッと凝縮したのが「Dehumaniser Simple Monsters」です。製品名の通り、モンスター・サウンドをシンプルに生み出すことに特化したDehumaniserです。
Dehumaniser Simple Monstersは、基本となる波形を選び5つのスライダーを操作するだけで音作りが行えます。各スライダーのサウンド変化は、どれも言葉で表現するのが難しいのですが、Size、Fury、Age、Windness、Characterというパラメーターのイメージ通りの効果。例えば、Sizeを上げていくと体が大きくなっていくかのごとく、音程が低く/太くなっていき、Ageではフォルマントが変化していく…といった具合です。
また、各パラメーターをXYパッドに割り当ててリアルタイム・コントロールできるというのも面白い部分。パッドは2つまで同時使用可能で、好きなパラメーターをX軸、Y軸に割り当てれば複合的な音作りが行えます。なお、iPad用のTouchOSCからのリモート・コントロールが行えるので(要TouchOSCライセンス)、指先でグリグリできるのも面白いでしょう。
インターネット配信にも
Dehumaniser 2とSimple Monstersは、決して映画のサウンド・トラックやゲームの効果音が欲しいサウンド・デザイナーのためだけのツールではありません。Dehumaniser 2は、各エフェクトの組み合わせやかけ具合によっては、楽曲のボーカルやコーラス・パートのサウンド・メイク…例えば、男性声で女性コーラスを作ることもできます。一人で多重コーラスを入れる場合にも声質を変化させることで音に厚みや奥行きを付ける…といったアプローチで通常のエフェクトとは違った結果を得られます。
また、ほとんどレイテンシーなくリアルタイム処理できるので、インターネット配信用のエフェクトとしてもオススメです。オーディオ・インターフェイスのループバック機能と組み合わせて使うなど、アイデア次第でいろいろと面白い使い方ができそうです。特にDehumaniser Simple Monstersであれば、1万円強で手に入るので、手軽に遊べるでしょう。
■販売価格
Krotos / Dehumaniser 2:4万7,520円(税込)
Krotos / Dehumaniser Simple Monsters:1万1,880円(税込)
■お問い合わせ先
お問い合わせ:メディア・インテグレーション MI事業部
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