SONICA INSTRUMENTS / SHAKUHACHI
- 2017/11/13
- 製品レビュー
- Sonica Instruments, ソフトウェア音源
国産メーカーとして、これまで和太鼓や三味線などの和楽器ライブラリーを手がけてきたSONICA INSTRUMENTS。その最新ライブラリーが「SHAKUHACHI」です。その名の通り、日本を象徴する楽器の1つである尺八に焦点を当てた製品として、今大きな注目を集めています。SHAKUHACHIの魅力に迫ると共に、プロの作曲家や演奏家からも評価の高いライブラリーがどのようにして作られているのか、あまり語られることのないライブラリー制作の裏側を紹介します。
キー・トリガー・コネクション
実際に演奏できる人は多くないと思いますが、日本人なら尺八のサウンドを知らない人はいないでしょう。日本の木管楽器として、7世紀末から8世紀初頭にかけて使われていた…という非常に歴史の長い楽器です。尺八の音自体はGM(General MIDI)にも割り当てられているほどメジャーで、総合(マルチ)音源やエスニック音源でもよく見かけると思いますが、音色的にはイマイチ生っぽさに欠けて使いにくい…そんな印象を持っている人も多いと思います。
その大きな理由が、「息」を使う楽器特有の時間による音色変化。例えば、しゃくり上げで入って、徐々にビブラート(ユリ)をかけていき、玉音(たまね=フラッターのこと)を入れていく…といった具合に、刻々と音色が変化していくのが”管楽器らしさ”と言えます。
現在の音源は、キー・スイッチを使うことで、様々な奏法を切り替えながら演奏することができますが、キー・スイッチはあくまで「次に発音するアーティキュレーションを指定する」というもの。ロング・ノートの中で複数の奏法をシームレスにつなげるということはできません。
そこで開発されたのが、キー・トリガー・コネクションという独自の機能です。これは演奏中に特定のキーを押すことで、そのキーに割り当てられた奏法へと滑らかにつなげてくれる機能ですが、実際に使ってみて驚いたのが「つながりの自然さ」。普通に考えると、サンプルをつなぐタイミングによって、音量差や音色変化などに違和感を感じてしまいそうなものですが、意識して聴いてもサンプルが切り替わるタイミングがわからないほど、極めて自然な音色変化を楽しむことができます 。
もちろんベーシックなアーティキュレーションはキー・スイッチで切り替えることができるので、キー・トリガー・コネクションと組み合わせることで、尺八の魅力を最大限まで引き出すことができるのです。
リアルに打ち込める
特有の奏法が多い楽器なので、音色やキー・スイッチなどが多いと何となく打ち込みが難しそう、面倒臭そう…なんて印象を持たれるかもしれません。しかし、実際に使ってみると、簡単なデータでも想像以上に生っぽい演奏が再現できたのには驚きです。
アーティキュレーションの多くは、奏法の名前は知らなくても、音を聴けば「あぁ、このフレーズね!」とピンとくるようなものが多く、選択されているアーティキュレーション名は常に画面上部に表示されるので、尺八の知識がなくても、触っていくうちに自然とわかってきます。
中でも、音を引っかけて演奏するGrace Noteや、アクセントやこぶしを付ける”Uchi&Oshi”は、わかりやすく尺八らしさを味わえるのでオススメ。また、打ち込み時はブロウ・コントロールを調整することで、さらに生々しさが増してきます。これは吹き込む息の量のコントロールで、モジュレーション(CC.0)を小さくすると実音よりも息が大きく、数値を上げていくにしたがって実音がはっきりと鳴ります。この調整具合によって音の擦れ具合に動きを付けることができます。こちらもロング・ノート発音中に自由にコントロールできるので、簡単に表情を付けることができます。
もちろん完璧に尺八を再現したデータを作ろうと思うと微妙な調整が必要ですが「楽曲に和のエッセンスを加えたい」という場合は、キーボードでリアルタイム入力できる範囲でも十分にリアルなデータを打ち込めることでしょう。なお、ショート・フレーズのサンプルも収録されているので、そこからフレーズを膨らませていくという使い方もアリです。
Sonica Instruments代表の原田智弘氏が語るライブラリ制作の裏側、SHAKUHACHIを活用するコツのインタビューを公開中!! ぜひ、併せてご覧下さい。