FATAR ファクトリー潜入レポート! 第7回:FATARの新たなる挑戦。SL Mixfaceの実力とは

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これまでのレポートで、FATARがStudiologic製品やキーベッドにどのような想いを込めているのかは十分知って頂けたと想います。そしてその理想を現実にしているのは、FATARが長年に渡って培ってきた技術やノウハウ。そして新しいことへの挑戦です。

本レポートの第1回目でも触れた通り、アコーディオン鍵盤スタートし、パソコンの黎明期に他社に先駆けて本格的なMIDIキーボードを生み出し、遂には音源まで自社開発しオリジナル・ブランドを立ち上げるまでになったFATAR。CEOのMarco氏が「まったく新しい挑戦」と語るのが、MIDIコントローラー「SL Mixfaxe」です。

【これまでのレポート】

第1回:世界の鍵盤業界を支えるFATARとは
第2回:Studiologicの誕生
第3回:FATARの頭脳、技術開発部門に迫る!
第4回:ボディーや鍵盤パーツが出来るまで
第5回:職人技が光る、製品組み上げセクション
第6回:FATARの最深部、熟練技術者による徹底した品質コントロールに迫る!

本レポートは、毎週月曜の12時に更新いたします。


FATARが次に目指したもの

Studiologicの技術力とアイディアが凝縮された「SL Mixface」。パッと見はシンプルなMIDIコントローラーですが「そうそう、こんな製品が欲しかったんだよ!」という機能が詰まったモンスター・マシンです。

Marco:Studiologicの最も新しい製品であり、FATARの新しいチャレンジが詰め込まれているのが「SL Mixface」というモデルです。一見すると、よくあるフェーダー・スタイルのMIDIコントローラーのように見えるでしょう。もちろんそのように使って頂くこともできるのですが、最大の特徴がMIDIキーボードなど他の機材と組み合わせて使うことで、製品の可能性を広げてくれる「エクスパンション・コントローラー」として使うことができる点です。

またパソコンや各種DAWソフトウェアとの連携も可能です。よくあるコントローラーは、1つの操作子に単一の機能…例えば音源やプラグインかDAWのコントローラーかのどちらかしか割り当てることができないケースが多いと思いますが、これは少し不便ですよね?そこで、SL Mixfaceには「モード」という概念を持たせ、モード切替によってボタン操作を一瞬で切り替えることができるようにしています。

例えば「DAW MODE」ではシーケンサーのトランスポート(再生や停止、録音等の操作)やミキサーのフェーダー、パンをコントロールしつつ「CTRL MODE」では一般的なMIDIコントローラ−としてソフトウェア・シンセサイザーのパラメーターを割り当てる…なんて具合です。

また、SL Mixfaceの大きな特徴がBluetoothを内蔵している点でしょう。この図を見て下さい。

USB-MIDI、USB-HOST、そしてBluetoothの3つの接続縫合に対応。しかも、USB(有線)とBluetoothは同時に使用できるんです!!!

Marco:少し複雑な話になるのですが、SL Mixfaceには「Bluetooth」、「USB MIDI」、「USB HOST」という3つのCORE(心臓部)を持っており、それぞれDAWモードとCTRLモードの2つを操作するという仕組みになっています。

各COREとモードは自由にルーティングが可能ですので、USB HOST COREはSL Mixfaceの外部に接続したUSB-MIDIキーボードからのMIDI情報を受けてCTRLモードを動かす…といったことができます。この信号は、USB-MIDI COREやBluetooth COREを介して、他のDAWなどをコントロールすることも可能です。つまり、SL MixfaceがMIDIやコントロール情報をまとめ、各機器に送り出すための「ハブ」として動作するのです。ここでは仕組みを見て頂くためにこのような説明をしましたが、実際に使う際にはこういった小難しいことは知らなくても使えますのでご安心ください(笑)。

SL Mixfaceのどこが新しい挑戦かって? MIDIコントローラーとして画期的な機能を備えたモデルですし、同時にFATARとしては初めてキーボーディスト以外のミュージシャンにも使って頂ける製品なんです!


DAW環境での使用例

Marco:少し具体的なお話をしましょう。DAWモードでは、SL Mixfaceの9本のボリューム・スライダーと8個のノブ、8個のボタンを使い、ミキサーのフェーダーやパン、ソロ/ミュートといったお馴染みの機能をコントロールすることができます。また、トランスポートも当然可能です。

主要DAWソフトウェア(※)に対応し、対応ソフトはファームウェア・アップデートで随時追加しています。各ソフトへの設定方法は、ホームページ(クリックでページを表示します)上で動画を公開していますので、簡単に使うことができるでしょう。

<現在の対応ソフト>2019年8月現在

  • Ableton / Live
  • Apple / Logic Pro、GarageBand
  • AVID / Pro Tools
  • Cockos / Reaper
  • MOTU / Digital Performer
  • Presonus / Studio One
  • Propellerhead / Reason
  • Steinberg / Cubase、Nuendo

先ほど紹介した通り、DAWソフトで使っている場合でもボタン1つで「CTRL MODE」に切り替え、汎用のMIDIコントローラーとしてプラグイン等を操作することができます。CTRLモードには4つのレイヤー/ゾーンが用意されているので、それぞれで別の…つまり最大で同時に4つの異なるプラグインをコントロールすることができます。

CTRLモードで出力しているのは通常のMIDI CCですから、各スライダーとつまみに割り当てるパラメーターの組み合わせを4バリエーションまで持てるといった方が正確でしょうか。


プラグインと外部MIDI機器をまとめてコントロール

SLシリーズと組み合わせれば、SLシリーズにMIDIコントローラー機能を追加することができます。なお、セットアップはUSBケーブルで接続するだけ。面倒な設定は不要です。

Marco:もっと複雑なシステムを組むこともできます。各COREは同時使用が可能ですので、例えばパソコンとSL Mixfaceを接続し、同時にSL MixfaceとSL88 Grandを。またSL88 GrandのMIDI端子から、さらに他のシンセサイザー等を接続したとします。複雑に見えるかもしれませんが、これまでのセットアップ(SL88 Grand+外部MIDI+パソコン)の間に、SL Mixfaceを追加しただけです。

SL Mixfaceの4つのレイヤー/ゾーンは、それぞれコントロール先を変更することもできるので、例えばレイヤー1ではDAWソフト上の音源を。レイヤー2で外部音源を、そしてレイヤー3ではBluetooth接続のデバイスをコントロールする…といった使い方ができてくるのです。

SL88 Grandは最高のキー・タッチを搭載したモデルですが、逆に操作子は省略されています。そこに不満を感じるユーザーはSL Mixfaceを追加することで、最高のタッチとコントロール性を兼ね備えた理想的なシステムを作ることができるのです。この「必要に応じて機能を拡張していく」というモジュラー・システム的な考え方は、特にアメリカ圏で支持を頂いています。


汎用MIDIキーボードでも、もちろん使用可能!

Studiologic以外のUSB-MIDIキーボードでも、SL Mixfaceを追加することで4レイヤーのマスター・キーボード機能を拡張することができます!

Marco:もちろんSLシリーズ以外のMIDIキーボードを使われている方も多いでしょう。そんな方にもSL Mixfaceは便利にお使い頂けます。MIDIコントローラー機能のないMIDIキーボードとパソコンの間にSL Mixfaceを挟むことで、シンプルなUSB-MIDIキーボードが4レイヤーを持った本格MIDIマスター・キーボードに生まれ変わります。

Bluetoothも同時利用可能ですから、例えばiOS上のシンセ・アプリも包括的にコントロールすることができます。これはアプリを積極的に使われる方にとって、かなり魅力的なシステムと言えるでしょう。

他の例も見てみましょう。例えばキーター(ショルダー・キーボード)を使う場合。どうしてもケーブルが煩わしいですよね? そんなときにはBluetooth MIDIドングルを組み合わせ、キーターからのMIDI情報をBluetoothでSL Mixfaceに飛ばせば、スマートなワイヤレス環境が出来上がります。

Bluetooth MIDIドングルと組み合わせもOK。MIDI機器をワイヤレス化するデバイスとしても魅力的ですね!

Marco:このお話をすると皆さんレイテンシーを懸念されるのですが(笑)、生じるレイテンシーは10msec以下なので、ほとんど遅れを気にすることなく演奏できるでしょう。

SL Mixfaceはモバイル・バッテリーでも駆動するので、モバイル環境でiPadにBluetoothに情報を飛ばして…など、アイディア次第で色々な使い方ができますし、様々な制作環境の中枢を担ってくれるでしょう。もしかしたら、私達が思いも依らないような使い方もあるでしょう。それだけの可能性を秘めた製品だと自身を持っています。


終わりに…

できることが多くて自由度が高い製品というのは、どうしても「パッと見て何が凄いのか分かりにくい」という難点(!?)を秘めているのですが、SL Mixfaceがまさにソレではないでしょうか…。DAWと組み合わせてのフィジカル・コントローラーであり、シンプルなMIDIキーボードに4レイヤーのマスター・キーボード機能を拡張するエクスパンション・ユニットであり、さらにはBluetooth MIDIハブでもある…。

文字で見ると複雑そうに感じるかもしれませんが、実際に製品に触れると優れたUIもあってスッと理解できると想いますので、既存のMIDIコントローラーに不満を持っている方には、ぜひ一度触ってみて欲しい。そんな製品です。

これまで7回に渡ってお送りしてきたFATARファクトリー・レポートも、遂に次回で最終回! 現在のStudiologicのラインナップをまとめて紹介しますので、お楽しみに!

SL Mixface

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